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家政婦は見た〜実際見てないけど〜






がたん、地面に買って来たポカリとサイダー、なっちゃん、ビールが袋に入っていたチーかまと一緒に落ちた。





「好きです。付き合ってください。」





ドア越しからでも聞こえるほど大きな声が聞こえてきた。





判りきっていた。でも改めて聞くと心が焼かれるみたいに痛い。





本当は僕、分かってたんだ。自分が小野さんを見たときから好きだったって。





もちろん、和にぃのことは好きだった。でも前の学校で告白したら付き合わないって言われた。





当たり前だ、僕は男で和にぃだって男だから。






少女漫画みたいに出会って、好きになって、困難を乗り越えて、お互いに報われる、そんなことはありえない。






あったとしても僕には当てはまらない。






好きだと告白したのは四人。その中には和にぃだってもちろん入っている。残りの二人は大人だった。






でももう一人は少女だった。






言っても優しい言葉をかけてくれるわけでもなかった。




驚いた顔をしていたし、ありえない、そんな顔だった。





でも普通に接してくれていた。それが嬉しかった。





だから、黙って、想いを殺して、助けていこうと思った。





なのに、一言で一年一ヶ月と半年の我慢なんて吹き飛んでしまった。






これで僕にもチャンスがある。





そう思った、思ってしまった。





でも乾いた音が僕を現実に戻した。





急いでオートキーをスライドさせて鍵が開く赤から緑のランプに変わるのを遅く感じた。






花梨!!





スリッパも脱がずに引き戸を引くと花梨が倒れていた。





そこにはもちろん和にぃもいてるんだけどそんなの目に入らなかった。






涙を流しながら放心状態の花梨を抱きしめた。






大丈夫と言うと小刻みに震えながら嗚咽を漏らしていく。






何かを言おうと口を必死に動かしても聞こえるのは嗚咽だけなのにそれも分からないみたいでただ口は何も伝えていなかった。






力限り抱きしめて、震えが止まったのを感じてから立っている和にぃを睨んだ。






罵声の一つでも浴びせてやろうと思った。殴り殺してやろうと思った。でも見据えた和にぃを見て何もいえなかった。






だって死んでるような顔をしているのに一筋だけ涙を溢しながら花梨のことを見ていたから。






でもそれも一瞬で次のうちには僕は思いっきりタンスに投げつけられて鋭い痛みに唸っていた。





朦朧とする頭を無理矢理動かして落ちていた和にぃの携帯から電話をかけた。





握り締め続ける握力は残っていなかったから携帯は落ちてしまった。





それでも電話は呼び出し音を鳴らし続け通話中の画面に変わった。





藍沢せんせい。出るかも分からない声を出しながら世界が赤く染まっていくのが見えた。





最後に頭の中に浮かんだのは一年前のことだった。









KRIN SIDE






聞こえるのはエンジン音だけ。






愛しかった人はいつもの柔らかな笑みはなくて無表情にただ運転している。






返事はNOと分かってた。






そのことが哀しくて口にしてしまった『死んでしまいたい』の一言。






困って悩んでいた顔は一瞬にして変わって私の頬をはたいた。






痛みより驚きが大きくてしりもちをついたあともただ座り込んでいた。






それに気付いたサヤが入ってきた。






殴りかかってきたサヤは返り討ちにあった。






私を痛いくらいに抱きしめてくれた身体は一瞬にしてタンスにぶつかり、血を流していた。






それに手を貸すこともできず、ただ連れてこられるがままに車に乗せられた。






そして今車でどこにいくかも分からずにただ隣に乗っている。






夢にまで見た助手席。







いつも、席から教卓までのたった数メートルにあった端整で無邪気な笑顔の男性ひと






でも数十センチ先にある顔は今まで見てきた中で残忍だった。






車内にはエンジン音しか聞こえない。






澄んだ瞳も今は機械的にしか見えない。






お酒のせいか、温泉のせいかとにかくほんのりと桜色に染まっている頬を見て、先生が生きているんだとわかる。






でもそれ以外なら生きているなんて断言できない。






「ここって、駐車場?」






停まった車があるのは30分100円と看板に描かれた無人の駐車場。






ドアの開く音がしたから運転席を見ても先生は居なかった。






「せ、んせい?」






自然と語尾が高くなりながら呼んでも返事なんてなかった。






「おい、とっとと降りろ。」








先生が開けたドアから外の空気が中に満ちていく。





言われるがまま降りると先生の顔が見えた。






見えた先生の顔はさっきまでの無機質な顔でも、いつものイタズラめいた笑顔でもなくて、普段の授業中の顔でもなくて、イタズラっぽくて、大人から逆戻りした少年みたいな笑顔だった。






「よしっ、行くか!!」






思わず頷いてしまった。





でも、たまには先生に振り回されるのもいいっか。






そして私と先生は夜の札幌の町に踏み出していった。






ところでこれからどこに行くの?








「もうムリだ〜〜〜」





「だからやめましょうって言ったんですよ、ラーメンの大食い競争なんて・・・」






私たちはさっき見つけた『興福寺』という奈良・京都にありそうなラーメン屋さんに入った。






そこで先生が『10人前巨大ラーメン、30分で食べつくしたら1万円!!』と書かれていたチラシを見て






『これは店から俺に対しての宣戦布告だ!!これを受けずしてなぜ長岡の姓を受けたものか!!!』






と店内に響く大声で宣言したために問答無用で競争開始。






結局玉のような汗を流しまくって、24.57分と店内の記録を塗り替えつつ食べ過ぎによって倒れそうな先生を敗者専用の休憩室をお借りして先生が復活するのをただただ待っているだけ。







先生に触発されて勝負に挑んでいる大男三人の同時対戦を観戦しつつ、このお店のお母さん的存在、通称お母さんからの差し入れ昆布おにぎりをありがたくいただきながらオトコとかいてバカとよむの真剣勝負を見ているのです。







「それにしてもいつ見ても本当に男って言うのはバカな生き物だね。」






隣に座っているお母さんが盛り上がっている群れを見ながら呟いた。






「本当にそうですよね、みんなで楽しくお食事すれば良いのに・・・」






本当に理解できないな、先生も。





私の膝で、安らかに眠りについている先生をみながらそう思う。






はぁ、男の子ってバカばっかり・・・






「ところであんたたち大丈夫なのかい?」






「何がですか?」






本当に先生子供みたいだな〜〜







「あんた今修学旅行に来てる学生さんでしょ?それにそっちは先生さんで。もう、日付が変わろうとしてるのに、危ないんじゃないの?」






「!!!???」





驚いて、食べていた塩むすびを先生に向けて落としてしまった。





ボロボロと崩れ落ちて、お米の粒が先生の顔いっぱいに・・・・・・






「あ〜あ。可愛いお顔がお米まみれになっちゃって。これじゃあ彼女も出来ないよ。」






そう言いながらもお米を取ろうとはせずにケータイのカメラで写真を連射しまくるお母さん。






「あとで、その写真送ってください!」






「あいよ、だからとりあえずは取るの中止ね。」







「はい!!」







現金だなんておもわないでね。







「なぁ花梨、なんかさぁ頬っぺたが妙にカピカピなんだけどなにかした?」






「な、何もしてないですよ〜多分先生の涎なんじゃないですか?」






ごめんなさい、あの後ずっとお話してて先生の起きる数分前にようやく取り終えました。






「最期に行きたいところがあるけど言っても良いか?」






楽しそうに聞いてくる先生を見ながら私は頷いた。






初めは気恥ずかしかった腕組みもいまとなっては嬉しかった。







乙.






どうも作者です。

長い間更新が滞っていてすみませんでした。

インフルエンザやH.Hのボイコット等など多くの試練が待っておりまして

他作品もなかなか更新できませんでした。

なので多くなりすぎた作品の更新日を決めることにしました。

日曜日:薄幸教師と天災少女  月曜日:現在無し

火曜日:鬼神再生日記     水曜日:僕は彼女のボディーガード。///

木曜日:百物語        金曜日:一度きりのSEXで得られるもの

土曜日:現在無し

とさせていただきます。

また、それ以外の日にも更新することがありますが上記の予定に変更はございません。

新規小説に関してはその小説の注意書きに書かせていただきます。

これからもよろしくおねがいします。


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