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嬉しい出会いは当然に、怨めしい出会いも突然に

教師ネタはお初です。生温い眼で見守ってください。

初めて君を見たのはテレビの中だった。画面に映し出される幼い少女。




確か『天才少女』と出ていたような気がする。でもどうでも良かった。君を見ていることしか出来なかった。




絹のような肌。赤くて小さなくちびる。



きれいな淡いピンクのワンピース。



全てに興味がなさそうなその無機質な瞳。





当時中学生だった俺が小学生のような彼女に見惚れているなんておかしな話かもしれなかった。でもそんな常識なんてどうでも良かった。




ただ、君のすべてを、顔を、手先を、そして名前を刻み込もうとしていた。



巫女(みこ) 夜観(やみ)』という名前を。







「では長岡先生、2年C組の担任はよろしくおねがいしますね。分からないことがあるなら三井先生に聞いてくださいね。今日からがんばりましょう。」




ふぅ、教頭先生の長ったらしい話のおかげで疲れた。




「おっす、いきなり教頭に捕まるなんてお前も運が悪いね。」




「そうですね、でも気にかけてもらえている証拠ですからがんばります。」




「お前ってもしかしてヲタク君だったりした。」




若干、引き気味な笑顔の三井先生が聞いてくる。




そんなわけあるかよ。




「そんなことありませんよ、三井先生。大学生のときは明け方まで飲んだり、化学なんかは代弁が半分以上占めていましたから。」




これでも自慢じゃないけど単位習得できたのもギリギリだったし。




「変な奴だな。教師が代弁してること自慢するなんて絶対普通じゃないわ。じゃあお互いがんばろうや、かずっちゃん。」




かずっちゃん?




もういいや。話すのも疲れてきた。時間もないしとっとと教室いこっと。




職員室の扉を開ける。




「長岡先生、学級日誌忘れてますよ。」




後ろから声が聞こえてきた。




「今日から教師ですよ、学生気分じゃ生徒に足元救われちゃいますよ。ね、せんせい。」




「すみません、藍沢先生。」




俺よりも頭二つ分小さな人が立っていた。ヤバイな。うっかりしてた。でも




「先生、ボタン付け間違えてますよ。しかも全部。」




「ほんとだ、私も先生のこといえませんね。」




そう言って笑いながらボタンをかけなおす藍沢先生の姿は可愛いと思った。




でもなんか先輩って感じがしないな。




「じゃあ、行きましょうか。」




かけなおし終えた藍沢先生に言われたので歩き出した。







それから教室に行くまでにわかったことといえば藍沢先生は2年A組の担任で英語担当、年は俺と同じ24歳で教師歴二年ということ。




「私はここで、がんばってくださいね。」




手を振りながら教室に入っていく先生を見届けてから俺も歩き出した。




目の前にあるのは『2−C』と書かれたプレート。まだ少し手が震えている。




一息ついてからドアを開けた。





「和にぃ、新任教師おめでとう。」




一番初めに見たのは甥っ子の『長岡(ながおか) (さや)』。




明るくて俺のことを和にぃ、とよんで慕っているガキ。




「鞘、どうしてお前がここにいてるんだよ。前の学校はどうした。」




「そんなの転校したよ。和にぃが大好きだから追いかけてきたんだよ。」




そう、コイツは去年まで俺が教育実習していた学校で生徒としていたのだ。




「はぁ〜〜〜。頭可笑しいのじゃねえの。奈々子さんはなんて言ってるんだよ。もちろん反対してるだろ。」





「ん?母さんなら『転校するのはいいけど絶対に和ちゃんの写真と近辺調査しなさい。』だってさ。馬鹿みたいだよね。そんなこといわれなくてもするのに。」





なぜか親父の姉に当たる奈々子さん一家は俺のことが以上に気に入っているらしく、子供の頃には危うく養子組合の話が持ち上がったらしい。




親父が何とか説得して週に3日は奈々子さんの家に連れて行くことで話はまとまったらしいけど・・・。




そして鞘はなぜかソノ気がありなにかと俺のことを誘惑?してくる。



それさえなければとても自慢できる甥なのだが。




「わかった、わかった。とりあえず座ってくれ。これ以上泥沼にしたくないから。」




初めての印象がホモ&親戚同士の禁断なんてレッテルはご免だ。




「しかたないな。和にぃの願いなら聞かずにはいられないのだろうか、否聞くだろう。」




どうして反語法かはわからないけどまあ座ってくれるならいいや。




教室の外で深呼吸しているときにはまだ手が震えていたのに鞘のおかげでリラックスできた。




鞘を見てみると笑顔で手を振ってくる。やっぱりなんだかんだ言っても優しいんだな、と感じつつ教卓にあがった。




俺の生徒から視線を感じる。




机に伏せる奴は一人もいなくその目に何を映し出しているかはわからない。

でも精一杯教師をやろうと思う。




そして口を開いた。







「あぁああぁああ!!!一昨日の変態だぁあ。」










俺に平穏が来るのか不安になってきた。





はぁ。







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