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はぴねす!

 抱腹絶倒。そんな言葉がある。要は、めちゃくちゃ笑いこけているという意味だ。


そんな出来事がつい先日私の元にもやってきた。あの馬鹿兄妹、元気にしてるかなあ。



 スーパーで買い物をしていると、やべー奴を見つけた。ソイツは商品棚の影に隠れたり出たりしている。触らぬ神に祟りなし、と普段なら私も黙認しているところだったのだが。

(お前どうにかしろよ……) 

 みたいな視線をまわりから一身に受けたので、渋々私はソイツの元へ向かった。


「なにしてるんですか? もし万引きしてるなら店員さん呼びますよ」

「あひょう! ち、違います。僕はただ言われたことをやってるだけで…」

「誰に、何を言われて?!」

「そんな剣幕で言わないでください。事情は話しますから」

 剣幕だといわれたのは人生で初めてだ。生きてると何かにつけて派手と言われるし、このどぎつい見た目も影響しているかもしれない。

「とにかく、ここじゃ居心地悪いから。事情は外で聞く」

「お姉さん、なんか警察みたいっすね」

「なに言っとるねんアホ!」

 衆人の前で怒りを暴発させてしまい、ますます恥ずかしくなる。しかし、もう取り繕うこともできないと割り切り、怪しいソイツをスーパーの外に引きずりだした。


「で、なにしてたの?」

「これ、見てもらえますか…」

 いきなりスマホの画面を見せてきた。そこには両足のない、幽霊みたいな女の子が映っている。

「誰この子?」

「死んだ妹です。実は、この前寝てるときに、出てきたんです。あの世はつまらないからって言って」

「ちょ、ちょお前何いってるの! これ合成じゃないよね? 本当に幽霊ちゃんなの?!」

 画面の向こうで手を振る女の子は、たしかに私の目を見ていた。何かのアプリか何かと思ったけど、どうやら違うらしい。

 女の子はわたしを見ていう。

「残念ですけど、本当に幽霊ちゃんです。ええと、なんていえばいいかな。私ひょんなことで死んじゃって、あの世で退屈してたんです。そしたらまたひょんなことが起きて、この世界に戻ってきてしまいました。長いので省きますが、兄は仕事人間でいつも疲れていました。だから、笑わせたいと思ったんです。いろんなことして、たくさんの人にも怒られました。もちろん、法律に触れることはしてませんよ。迷惑はかけちゃいましたけど。それでも兄は生きてて楽しいって言ってくれたんです」

「これからは人に迷惑をかけないような人間になります」

「そうしなよ。幽霊ちゃんも望んでると思うし」

 兄妹は怒ってくれたことに感謝して、たちまちに去っていった。スマホの画面に向かって、楽しそうに話しかけながら歩く兄は不審者以外の何物でもなかったけど、私にはとても微笑ましく思えた。


「あ、いけね。長ネギ買うの忘れた」

 閉店が迫っていたこともあり、私は全力で店の中に走っていった。ちょうど店から出てきた親子に変な顔されたけど、案外気にならなかった。

 笑っておけばいい。人生これからだ。


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