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スリーウィークス  作者: 阿東サヤク
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第一話 卒業式は暇

 またあの夢だ。

 

 かなどめ瑞樹。15歳。朝起きてすぐ嫌な気分になった。最近はよく同じ夢を見る。というのもここ三日位、毎日同じ夢を見続けているのだ。その夢はあまりいい夢ではない。何人かの人達が殺害された、というニュースを見ている夢だ。俺は中学三年生で今日は卒業式だ。おそらくはこれからの生活への不安とか、主に志望校に受かっているのかどうかという不安が俺にこんな夢を見させているのだと思う。


 「瑞樹ー!朝ご飯出来たわよー!」

 

 母さんが俺のことを呼んでいる。俺は返事をすると階段を降り、朝食を食べ始めた。そこにはいつもと違って父さんも食卓の席に着いている。今日は息子の大事な卒業式のある日なのだ。いつもは仕事で朝早くから出勤するために俺が食べ始める頃には家を出ている父さんも、この日ばかりは仕事を休むようだ。


 「瑞樹、高校はどこに決まったんだ?」


 (・・・?)。父さんが訳の分からないことを言い出した。すぐに母さんが答える。


 「あなた、結果が分かるのは来週よ。なんでそれぐらい知らないのよ。」


 「ああそうだったか、悪いな仕事の方が忙しくてな。」


 もう少し子供に対して興味を持てよ。俺は言いそうになった言葉を静かに飲み込んだ。俺には分かっていた。この父親はいつもそうなんだ。行事ごとがある度に出しゃばってくる。それでいて他のことに関しては無関心なのだ。

 俺の事を大切に思っていないのか、とつい考えてしまう。俺が子供なだけなのかもしれないし、大人になれば分かる事なのかもしれない。そう思い、これ以上父親の質問に家族の雰囲気を悪くされるのも嫌なので、俺は朝食を素早く済ませた。

 

 俺はこれから向かう卒業式のため、制服に着替えようと思い自室に向かうことにした。まだ時間はあるので、リビングに行き録画が溜まっている深夜アニメでも見ようかとも思った。だがそんなことは出来ない。今日は両親が揃っているのだ。きっと今は父さんと母さんが息子について語り合っているに違いない。

 

 それにしても制服はいい。中学には小学校と違い制服がある。俺の小学校卒業式は最悪だった。小学校の卒業式では皆服装が違う。まあだいだいは同じような服を着ているのだが、何を思ったのかうちの両親は俺を私服で行かせた。一人ぐらい居るでしょ、と思っていたのだが、見事に皆しっかりキメてきていた。周りと俺とで違いすぎて、俺は視線を避けるように足早に入退場した。今思い出しても恥ずかしくなる。なぜ父さんはこういう時に役に立たないのだろうか。父さんは高性能カメラを買い俺の恥ずかしいところをしっかり撮っていた。

 

 俺が身支度を調えていると階段を上る足音が聞こえてくる。どうやら友達が俺を呼びに来たようだ。


 玄関を出るといつもの顔が揃っている。背の低い少しテンパーの山下巧と、背の高いスラッとした割とイケメンの江口安岐である。それに俺、京瑞樹を合わせるといつも一緒に居る三人組というわけだ。

 

 いつものように喋りながら学校へ向かっている。だが今日は何かがいつもと違う気がした。学校に着くとすぐに分かった。3年生の靴箱には1足も靴が入れられていなかったからだ。三人は周りを見回すと、周りに居る生徒が1・2年生だけだという事に気がついた。そう、卒業式の日は特別で、3年生はいつもより一時間ほど遅れて登校する。そんなことを三人とも忘れていたのだ。


 「どうする?」


 俺がそう言うと、


 「どうしようか。」


 安岐が悩ましげに考えている。だが安岐の口からわ何も言わない。安岐は分かっているのだろう。こういう時は巧の言った案にするということに。それがいつの間にか俺たちの暗黙のルールになっていた。暫く待っていると巧が口を開いた。


 「時間あるんだし、どうせなら思い出に残る事するのは?」

  

 俺は少し考えると、最近やっている月9のドラマを思い出した。

 

 「思い出か~、じゃあどこかに俺らのサイン書こうぜ!ほら、机の裏とか壁にするって聞いたことあるじゃん!」

 

 俺達の暗黙のルールについてだが、それには続きがあって、俺が巧の案を具体的にして提案するというのもその場の流れで出来ていた。


 「いいなー!それにしようぜ!問題はどこにするかだよなー。」


 という巧の言葉に安岐が


 「理科室は?あそこなら裏から入れるし・・。」


 グッドアイデアだ。その後俺らは理科室に裏から入り、机の裏に、理科室に置いてあったワニ口クリップを使ってじぶん達の名前を彫った。机は思っていたよりも硬く、時間が掛かった。窓からは校門を通る3年生が見えた。もう時間も無いので俺達は教室に行くことにした。


 教室に着くと既にクラスメイトほぼ全員が集まっていた。見てみるとやはり卒業式だけあって、女子も男子も髪型がいつもよりキマッている。俺達三人は普段と変わった様子はないのだが、安岐はやたら女子に話しかけられている。全くもって不愉快だ。少しは俺に話しかけてくれてもいいのに・・・。


 巧と誰が一番かわいいか話していると、担任が教室に入ってきた。先生も今日は着物を着ていた。先生は結婚していて、子供も一人居るらしい。


 「瑞樹、俺は人妻の方がいいかもしれない。」

 

 「ああ、俺も今同じ事を思ったよ。」


 巧がそう言うのも分かる。確かにうちの担任は美人だ。結婚しているが、人妻ということが逆にその姿を妖麗にさせている。

 

 暫くすると担任からの話があり、俺を含め殆どの男子が彼女にみとれていただろう。


 卒業式が始まった。色々なお決まりの挨拶があった後、名前を呼ばれた生徒が卒業証書を渡されている。この時間が一番退屈だ。長々と人の名前を聞いて居なければならない。時々かわいい子や珍しい名前が呼ばれた時にだけ目が覚める。あっ、次はヤカラの呼ばれる番だ。あーあ、つまらない事するな~、そう思っているとヤカラが返事をして卒業証書を受け取った。


「イエーーーイ!!」


 ヤカラがいきなりピースサインを誰かに向ける。おそらく彼女にだろう。


 その後俺の番が来たので、それとなく返事をした。どうやら巧と安岐はもう終わっていたらしい。体を90度回転させ、自分の席に向かおうとすると、遠くの方でフラッシュが見える。大体予想はついている。フラッシュが収まると俺はフラッシュのした方を見た。やっぱり居た。言わなくても分かると思うが、父さんである。悪いが俺はさっきのヤカラのようにポーズをとる何てことは出来ない。彼女何てものがいれば別の話なんだが。俺はそのまま席に向かった。


 あのヤカラがピースサインをするとき、俺はヤカラがする前からヤカラがすることを知っていた。


 俺はたまに、未来をみる事が出来る。


 

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