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ニコニコ
ニコニコニコニコ
私が吃驚しすぎてフリーズしてる間中、ずっとニコニコ。
ニコニコするライオンの後ろにかわいいお花が見えるような気がする…。
「コホン」
我に返り、咳払いを一つ。
「で、君はどーいった方なのかな?」
聞きたい事は腐る程あるが、混乱しきった今の私の脳ミソは、働きが頗る悪い。
ライオンは、腰を下ろし、おすわりの体勢をとる。
そこから少しずつ、ポツリ、ポツリと話し始めた。
「んーーー、何から説明したらいいのかなー。」
「まず僕は、見ての通り只のライオン。」
「いやっ、只のライオンじゃないし‼︎」
即ツッコム。
「いやー、ちょっとだけ他の奴より黒いかもしれないけどー。」
(いやいや、ソコじゃないし…。)
コロコロ笑う。
(駄目だ。この子天然入っちゃってるよ…。)
いちいちツッコミ入れてると、何時まで経っても話が進みそうにないので多少の事はスルーする事にした。
そう心に決めた瞬間、一気に気が抜けて変に脱力…。
(はぁ…。)
この子の天然のおかげで、混乱して働きが鈍っていた私の脳ミソがやっと正常運転を始めた。
私もベッドの上に腰を下ろし、じっくり本題に入る事にした。
「で、まず何処から来たの?」
「エデン!」
「何それ?」
「んー、説明するのが難しいんだけど、ココとはまず時間軸がずれてるんだ。エデンは空想の世界なんだよ。」
「人の空想によって産み出された生き物達が暮らす世界なんだ。」
「例えば?」
「んー、メジャーなやつで言うと、ペガサスとかユニコーンとか…。あっ、ドラゴンなんかも有名なんじゃないかな?」
「おーーー!超有名だね!!」
段々感覚が麻痺してくる…。
「そのエデンの生き物達って簡単にコッチに来れるの?」
気が抜けて正常運転を始めた私の脳ミソは、次々と質問を投げかける。
「簡単ではないかなー。僕はたまたま…本当にたまたま偶然にホールをみつけられたから…。」
「ホール?」
「うん。エデンとコッチの世界を継なぐ穴の事だよ。」
「何かの拍子に偶然時間が継ながる穴が開くらしいんだ。」
「だから何処に有るのかも普通は分からないし、有ったとしても何処に継ながっているかも分からない。そして、ホールはとても不安定な代物だから、突然閉じたりもする危険な物らしいんだ。 」
「そんな物だから大抵の奴は近寄らない。」
「僕も本トのところ、よく分かんないんだけどね。」
悪戯っ子の様に笑う。
「それなのに何で君はココに居るの?」
「僕はどうしても沙羅に会いたかったから…。」
??
意味が分からず首を傾げる。
「僕たちは人の空想から産まれるって言ったろ? 僕を主に作ってくれたのは、沙羅なんだ。」
「ちょっと待って、そんなの何で分かるの?」
「会った瞬間すぐに分かったよ…。」
「「何で?」って言われてもうまく説明出来ないけど、強いて言うなら感覚?かな…。」
「自分を作ってくれた人に出会える確率なんて、殆ど無いに等しいのに…まさか本当に会えるなんて…。」
ちょっと目が潤んでいる様に見える。
「本ト奇跡ってあるんだねっ!!」
嬉しそうに透き通った真っ青の目を輝かせて、興奮し気味に語っているライオンを見ていると、とても愛おしく思った。
この子は見た目真っ黒でちょっと厳つい感じだけど、心はとてもピュアで超が付くほど純粋なんだなーと実感した沙羅なのであった。