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エデン  作者: あみゆ
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2

 

 "ピピピピピピ"


 何時もの目覚まし時計の音で目を覚ます。


 6:40


 平日は毎日この時間に目覚まし時計が鳴る。


(もう朝かー… 眠い…)


 "ピピピピピピ" "ピピピピピピ"


 一行に鳴り止まない時計を何とか手を伸ばし、"ポン"と叩く。


(やっと止まったー)


 重い体を起こし、制服に着替え、カバンを持って階段を降りる。

 用意されている朝食をまだ半分寝ている状態でパクパク食べる。

 朝食はガッツリ派だ。

 食べ終えた頃やっと目が覚め始める。

 食べ終えた食器をキッチンへ運び、そのまま洗面所で歯を磨き、顔を洗い、寝癖のついた髪をかるく整える。


 7:47


 何時もの時間だ。

 リビングに置いてあるカバンをサッと持って玄関へ直行。

 ローファーを履き、「いってきまーす」

 リビングのドアからピョコッと顔を出したままが、「いってらー」と返してくれる。

 玄関を出て携帯で時間を確認。


 7:49


(やばっ)


 私はバス通なのでバス停までダッシュ。

 が、私の毎朝の日課だ。


(間に合ったー。)


 バスに乗り、やっと一息。


 揺られながら窓の外を眺める。

 ふっと今朝の事を思い出した。


(あれは夢だったのかなー。)


 もう現実だったのかさえ疑わしい…。






 16:29


 バスを降り、家路を朝とは裏腹にのんびりと歩いて帰る。

 他愛もない平々凡々な日常を終え、あの不思議体験の事など忘れかけていた。


 ピタリ


 私の足が止まった。


 "視線"


 今日一日、平々凡々…なんかじゃ無かった。

 他愛もない友人達とのお喋り中も、授業中も、昼休みお弁当を食べてる時も、ずっとずっと"視線"を感じていた。


 私は意識を集中して、視線の主を探した。


 前後左右、あらゆる方向に目を向けた。


 キョロキョロ


 側から見たら挙動不振の不審者だ。

 でも、そんな事は御構い無しで更に探索に集中する。


 ‼︎


 視界の端っこに真っ黒いものが。

 直ぐ様視線をそこまで戻す。


(いたっ!)


 約100m前方、歩道橋の手摺の上。

 隠れている訳でもなく、"百獣の王"の異名に相応しい堂々とした佇まいで、彼はこちらを凝視してた。


 まだ夕刻という時間帯であって、周囲にはじゃれ合いながら歩いている小学生達、下校中であろうセーラー服を着た女子中学生、可愛いチワワの散歩中のおばちゃん。


 かなりの人通りがあるにも関わらず、あんなに堂々としているライオンに、誰一人として気づいた様子は無い。


(どうしてみんな驚かないの? どーなってんの?)


 などと考え混乱していると、ライオンは歩道橋の手摺を蹴って宙を舞った。

 とても優雅に空中を駆け抜けて、みるみる近づいて来て、私の目の前にフワリと降り立った。


 私が反応出来ずに立ち尽くしていると、嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らしながら、大きな頭を擦り付けてくる。

 ネコ科⁉︎


(か、かわいい。)


 私とゴロゴロ喉を鳴らしているライオンの横を散歩中のチワワとおばちゃんが何の反応も示す事なく素通りして行く。


(見えてないんだ…。)


 どおりで白昼堂々としている訳だ…。

 とりあえず、ここは人通りが多過ぎる。

 ライオンは他の人には見えない設定らしいから、このままだと私は一人で喋る変人決定だ。

 出来れば御近所で、それは避けたい…。

 という訳で、私はライオンに小さく耳打ちをした。


「とりあえず私の家まで行くよ。」


 ライオンはコクリと頷き、私にぴったりと寄り添う感じで、家路を少し急ぎながら歩き出した。




 家に着くなり、カラのお弁当箱をキッチンに置き、直ぐさま2階の自室に移動する。

 幸いにも、家族はみんな外出中のようだ。


 ドサッ


 カバンを置いたと同時に振り返るとやっぱりそこにはライオンが…。

 今だに信じ難く、あらゆる方向から彼の存在を確認してみる。

 何処からどう見てもライオンだ。


 手を伸ばしてさわってみる。

 フワッ

 サラサラで柔らかい感触。


(やっぱり、ちゃんと居るよね。)


 幻覚でも錯覚でも無さそうだ。

 でも、他の人には見えてないんだよなー。

 だとすると、益々分からなくなる… 彼という存在がどういった物なのか…。

 ライオンは、考え込んで黙り込んでいる私のほっぺたをペロリ。


 ‼︎


(舐められた⁉︎)



 吃驚してライオンの方に向き直ると、何やらニコニコしている様子。

 次の瞬間、更に最大級の吃驚が待ち構えていた。




「こんにちは 沙羅。」


 ‼︎‼︎


「喋ったーーー⁉︎」

 

 驚き過ぎて叫んでしまった。

 家中に私の声が響き渡った。

 今、家族がみんな外出中で良かったと心から思う沙羅なのであった…。


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