或る買い物の一生
あるLINE人気キャラクターのぬいぐるみを買いに、市内へと躍り出た。
クリスマスシーズンが近付いているのか、赤と緑を合わせた混合色の飾り物に煌びやかなライトアップ、駅前ではマラソン大会など今年に終わらせねばの勢いで行事が滞りなく開催される。
大型ロフトに開店前から並び、早く買いたい気持ちを抑えて、平然とエスカレーターを登る。昨日問合せした時点でぬいぐるみはあったが、本日はあるのだろうか?
きちんと整列された店員さんを横目に目的地へと着いた。そこには‥‥
「Sサイズはあるが……Mサイズはない」
ぬいぐるみがあった事は嬉しいが、何か拭いきれない感情が残る。何故か懐かしい元ちとせの「ワダツミの木」が頭へよぎった。店員さんに
「Mサイズはないんですか?」と聞くと
「瞬殺でした」と瞬殺で返答された。
私は歯に歯石が残った嫌な感じを覚えながら、別店舗のロフトへ問い合わせをし、現地へと急行した。
「Mサイズは残り二点ですよー」
電話で言われた言葉を反芻しながら人混みの中を駆け走る。
人、人、どこへ行っても人だらけ。
途中肩にぶつかりながら、旅行バックのキャスターに足を引っかけながら、一心不乱に目的地へと急ぐ。
果たしてその店にはMサイズのぬいぐるみが並べられていた。
太陽の光を一身に浴び、成長する花のように輝いていた。
私はぬいぐるみをしっかりと品定めし、レジへと向かう。真冬なのに汗はびっしょりで、額の汗は光っていた。
「ぜぇ‥‥これ‥‥お願いします!!」
汗がひかない私と変な顔で引く店員さん。
心の不一致のまま、私の買い物は終了し、店を出ようとすると、もう一人のMサイズのぬいぐるみを購入した若者を発見した。
「ふふ、それは胴体の下の方がおしりのように割れているから選ばなかったんだ」
勝者のように振る舞いながら改めて自分の買ったぬいぐるみに目をやると、左耳が変な折れ方をしていた。
人生どっこいどっこいだね。