かおなし?
むかしむかし、あるところに・・・・じゃなくて。
朝起きて、布団の中から出たくないなーと思いつつも、出ないと会社行けねーよなーと嫌々ながらに目を開ける。
ただ、まだ布団で包まっていたいので、布団を体に巻き付けたままベットより転げ落ちる。周りは柔らかいので、そんな痛くない。最初はふんわりとした感触。以後は気持ちよくも悪くもなく。
今度は気を取り直し、ゆっくりとのろく、その場に起き上がる。なんで落ちるような真似をしたんだと、少しだけ後悔。案外、重いんだよ。布団を持ち上げるの。
”グワッ?” 持ち上げるときの擬態語はこんな感じか。とことん重ければ”グググ”と重力がのしかかるんだろうが。とりあえずきれいに整えておく。
・・・さあて、歯でも磨くか。朝の置きたての口の中。ネパネパしている。あーーやだ。
速攻で磨く。早く動かす。決して時間がないわけではないが、めんどくさいし。
次に青い洗面器を取り出し、お湯を入れる。最初は水がジャーとでる。後から温かいのが出始め、ずんずんと熱くなる。最初の冷たいのと最後の熱いの。丁度良く混ざって、いい頃合いに蛇口を閉める。右手でちょっとだけまわし、温度はOK。
タオル。ちょっと高いところにかけてあるのを取って、湯の中に入れた。十分に湿らせる。
そして私は、勢いよく顔にあてた。
ここで初めてはっきりと、気持ちいいと思う。布団も気持ちはいいけど、はっきりとじゃない。それは”ほんわかと”だ。私は次第に力を込めて、ごしごしと顔を洗う。
すると・・・目がない。鼻がない。口がない。鏡を見ても顔がない。
慌てて顔のあちらこちらを触れる。なーんにもない。
下を見ると、排水溝へ顔の部品が流れていっていた。おいおいと慌てて水の渦を止めようとするけど、問答無用に流れ去る。あわわあわわと、口に手を当てた。ん?口はないんだ。
そのうち、あくびがでた。周りが見えているから、目もある。高々とした鼻もある。
なんだ。まだ布団の中かと、また眠る。
おしまい。