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MTBで旅する異世界  作者: 只の鯨
1章 MTBと転移する異世界
9/103

9話 実はこんなところに伏線が

 向かうは商団の最奥部。奥に向かうに連れ、人通りは少なくなっていく。

『オッサン。どう思うよこの店構えの仕方』

『……。そうだな、奥に人を寄せ付けない作りだ』

 そう、商団のいる広場は奥が行き止まり、つまり村の囲いにちょうど面している。そして村の住宅街から広場に入る方向は一つ。

 入り口には生活用品、生鮮食品、食品。奥に行くにつれ雑貨、武器。おおよそ日常には使わない商品を取り扱っている。

 ある意味合理的ではあるが、それを別の視点から見たなら?

 奥に客を寄せない、結界の完成だ。

『しかし主人、村の囲いに隣接ということは外部からの客に弱くないか?』

『だから、こんな過疎地域で商売してんだろ。寄り付く奴なんていないだろうからな。究極の地域密着だな』

『なる程』

 少しずつ解説しながら奥に向かう。バレないようにあくまで店散策を装うのだ。

 ……あ、このサバイバルセットいいかも。

『おい主人、散財の危機に面してるぞ』

『う、うるさい! よく考えろ、これから俺達は帰る情報を求め宛もなく旅をするんだぞ』

『……そうだな』

『だからこそこれなんだよ! 寝袋代わりの麻、多種多様な袋、ナイフ、火打ち石、ついでに国中の大まかな地図! これだろ、いつ買うの? 今でしょ!』

『……まぁ主人が言うなら私は何とも言わんが』

『よし勝った!』

 何にだ、と自分でも思ってしまった。

「よし、じゃあこれ買うわ」

「大銀貨5枚」

 ふてぶてしく答える店の主人……って、大銀貨5枚だとぉぉぉぉぉ!

 俺は日本円換算で現在200万円の大金を仮ながら手に入れている身、だが5万円は高くないっスか……という小市民思考。

『異世界のお約束、紙とインクと墨、ついでに武器が異常に高いって奴だな』

 ……だがこれは必要経費、買ってしまったらしょうがない。

 泣く泣く大銀貨を5枚取り出す。

 結局買った商品はリュックに入れて、再び奥に。

 今度は店と店の間にコンテナが現れる。

 なる程、奥行きを出して入りがたい雰囲気を醸し出してると。

 構わず無視して、最奥部。商団の本陣にたどり着く。

 買取から6時間。凄い腹減った、もう夕方だ。

 一応受付嬢っぽい人に声を掛けとく、……歩きながら。

『なる程、止めても時すでに遅しの作戦か』

『オッサン、それは言うな。割とそう言われると傷ついちゃうだろ!!』

『……面倒な主人だ』

 とりあえず突撃。

「あ、俺はサニカの友人なんで」

「え、あ、え? お、お客様ー!?」

 はい、侵入完了。


 扉は何個かあったが一番奥という予想は当たっていた。

「はいどーん。呼ばれてもないけど勇敢な小市民がジャジャジャジャーン」

『棒読みはやめとけ』

 だって全力で言っても虚しいだろ。

 周りはサニカとさっき見た団長だった。

 扉に近い下座にサニカ、奥には団長が座っておりその後ろに護衛。逃げ道はこの扉しかないと。部屋の作り方はコンテナ式なのか割としっかりしている。

「え、なんで? え、なんで分かったの?」

「……分かった。困惑してるのは理解したからちょっとだけ推理を聞こうか」

「うん」

「まずは現れて俺に説明を始めた時」

「うん」

「【skill】について触れて、自分の【skill】を公開したのにも関わらずサニカは自分の【skill】を発動しなかった。普通はああいう時って見せて解説するもんなんだけど、サニカはそうしなかった。そして次、通貨の説明の時。サニカはたまたまとは言え鋼貨を持っていた、しかも複数枚。普通に生きててそこまで大金を持ち歩くやつは珍しいと思うぜ。さーらーに、サニカは【御具】が【skill】に関係あるといった。【skill】はまだ分かるが【御具】についても一切触れない。流石に違和感がある、しかもサニカの御具は喋らない、なんて滅茶苦茶怪しいよな」

 商団の団長も何も言わない。

「……なる程。僕ってば凄い怪しいね」

 サニカが苦笑する。

「たしかに【御具】が近くにないと【skill】は発動しないよ」

「じゃあ、事情を説明してもらおうか。団長殿?」

 団長は軽く息を吐き、目をつり上げた。

「……この女が普通に、【御具】を手放しただけだ」

 そう言って手袋を取り出す。何らかの生物の皮を使った革製のグリップグローブ、つまりこれがサニカの【御具】っていうことか。

「手放すってのはは恥ずかしいって認識でいい?」

 団長はコクリと頷き、サニカが突然焦ったように弁明する。

「違うんだよ!? 僕はお金が欲しかった訳じゃないしまず手放して――」

 突然サニカの喋りを止めた。サニカの視線は一点、団長の後ろの護衛。あれは……拳銃か?

 流石は異世界、銃刀法なんて勿論ない。

 思わず、腰に掛けた刀を見る。

「サニカ、分かっている」

「え、やめてよ。そんな目をしないで」

 戸惑うサニカを気にせず話を進める。

「オッサン、それいくら?」

「買う気か? 数百万ナール、つまりは大鋼貨数枚といったところだな」

「【御具】、ついでに【skill】も手に入るからか」

 レア物で商売って事ね。

「ところで骨は見つかったか?」

「今し方部下が確認を終えた、大鋼貨2枚で買い取らせてもらおう」

 チッ、大鋼貨2枚以上の利益か下手こいた。

 まぁいいや。

「じゃあサニカはそれを買い戻そうと?」

「だから僕は……チッ」

 サニカの舌打ち、やっぱり拳銃か。

『やっぱりこのパターンだ。オッサン、俺の考え読めるなら分かるな?』

『あぁ主人、覚悟はいいな?』

『ああ、タイミングはカウントダウンで始める。カウントは頼んだ。ゼロでスタートだ』

『了解した』

 俺が腰に手を回してるのが見えたのか、団長は後ろにアイコンタクト。

 覚悟はもう決まっている。

 サニカは、震えていた。

 おそらく、あの時の買取で近くにいなかったのは商団に後ろめたいもの、つまりこれがあったからなんだろう。それだけ恥ずかしいことなんだろう。

 だからこそ、言う。

『オッサン、カウント』

 そして真っ直ぐにサニカを見つめる。震える瞳に俺は、応える。

「サニカ、実は俺はさ」

『3』

「言ってなかったけど」

『2』

「超スーパーウルトラ」

『1』

「美少女肯定派なんだ」

『0』

「……スタート」

 そして俺は手を振り上げた。

最後の方でちょっと主人公っぽいのが私の作品のよくある展開となってる気がします。

次回初戦闘(ただしちょっと戦うだけ)です。

商団が少しだけ闇っぽくなってるのは偏見ですがね。

辺境の地とかだと価格競争が行われなくてボッタクリとかありそうですよね、異世界でも現実でも。

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