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MTBで旅する異世界  作者: 只の鯨
1章 MTBと転移する異世界
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7話 ケモミミ地獄耳

 川近くの家はただの住宅密集地。村の奥には広場があってそこに期間限定で商団が店を構えているのだとか。

 凄い賑わいなのかと考えていたら人は出店にちらほらと居るばかりだし、商団は特に呼びかけをしていない。

「なんだよ活気無いなぁ」

「小さい村だからねー。これでも賑わってるほうだよ」

 なる程、一個の商団なのだろう。だから販売競争自体が成立してないのね。

「どうする? 僕は特に買い物はしないけど。お金あるの?」

「ないぞ」

「ないの!? どうやって生活してくの!?」

「それは俺も疑問だ」

「対抗策もないんだね!」

「んで、唯一なんか使えそうなのがこれ」

 そう言って、リュックから角を取り出す。

 それを見てサニカは目を丸くした。

「え……何これどうしたの」

「いやさっきそこの草原で角が生えてる奴と軽く死闘を演じた結果殺すに至ったからそのついでに角捕ってきた」

「軽く死闘を演じた、とか殺すに至ったとかいろいろ聞きたいことはあるけど。とりあえずそれの重み分かってる?」

 重み?

「あぁ確かにこれ重いよな。ズシッと来るというか……」

「そっちじゃないよ!」

 強めに突っ込まれた。

「えーっと。これさ、ドルスカンブルっていう強い竜、剛竜(ごうりゅう)の一種なんだけど。要は角ってすんごい希少部位だから、売れば高い」

「よし売ろう」

「決断が速いッ! それ収集してる人もいるから持ってるだけで交渉が有利っていう使い方も!」

「うるさい! 干からびる人明日は我が身だ! 生き残るのだ!」

「う、うん。分かった……」

「で、買取はどこよ」

「あそこだよ」

 サニカが指さしたのは一際人の少ない取引所。

 あぁ、あそこはどこよりも人が少ないと思ったら買取か。道理で人気が無いわけだ。

 とりあえず買取カウンターに向かい、暇そうにしていた受付の人の前に角をゴトリと置く。

「じゃ、これ買い取ってください」

 受付は飛び上がった……というか飛び起きたに近い。ボーっとしてたらしい。しかしすぐに平静を取り戻して偉そうにセリフを口にした。

「……おう。悪いが粗悪品とか価値のない中古品は受け取らないからな」

 と言いながら虫眼鏡っぽいものを取り出して、手が止まった。

「小童」

「……小童とはまた結構なご挨拶だな」

「……どうやってこれを」

「企業秘密だよ企業秘密。そう簡単に教えらんねぇな」

「チッ。とりあえず団長だ」

 そう言って受付人は席を外す。それと同時、サニカがすり寄ってくる。

「えへへ~、団長さんまで呼びに言っちゃうような上物っぽいじゃんハヤト~」

 コイツ、耳が良すぎる! 地獄耳なのかはたまた……。

 そうかケモミミかッ! ケモミミの性なのかッ!

 とりあえず軽口には軽口。

「上物だと分かった瞬間すり寄るようなサニカの姉御には叶わないっすよ~」

「あっはっは。じゃあその姉御にちょいーとお裾分けを……」

「上げません」

「ケチー!」

 サニカは頬を膨らませながら言った。

「ちなみにこれ、相場は分かるか?」

「そうだね……。大きい都とかなら鋼貨5枚はくだらないよ。この骨だけで1人2ヶ月は過ごせるかな。この竜の肋骨は2本で1枚位、背骨とかだともっとかな?」

「ふぅん」

「じゃあ情報料として……」

「昼飯代だな。しかも小鉢」

「もの凄いケチーッ!」

 お裾分けもなしと分かれば最後、素早くサニカは元の位置に帰って行った。利がないなら高みの見物、なんて奴だ。

 そして団長とやらがやってくる。受付に負けず劣らず態度がでかい。

「君かね、剛竜の角を持ってきた男というのは」

「あぁそうだ」

 でかい態度には態度で対抗が持論。

「ふむ……分かった。買い取らせて貰う。希望額は?」

 言ったな?

「希望額は大鋼貨2枚、売らないって選択肢も眼中だぜ?」

「大鋼貨2枚ッッ!? そんな大金がこれにあるとでも」

「まぁ、角だけならないな」

「……ということは?」

「これを取った竜の居場所の情報をやるよ」

 2人の目の色が、変わった。

「今回の角はお前等の商団に初めて見せた、つまり初物。そしてどこから取ってきたかの情報もお前等が初だ」

 団長の目が細まる。

「なら俺等にそれを買う利点を見せろ」

「そうだなセールスポイントは、これを取ったのが約二時間前。恐らく他の奴に肉は喰われてるだろうが、逆に骨は取りやすいだろうな」

「ふん」

「そして、さっきも言った通り、お前等に流す情報が初だってことだ。骨も皮も全部残ってるだろう」

「……分かった、買おう」

 観念したように言い、部下に大鋼貨を持ってこさせる。

「情報を言え」

「なら先に払えよ」

「……チッ」

 あぶね。隙も外分もねぇな。一回切りだと思ってんだろ。

 大鋼貨をもらい、ポケットにしまう。

「場所か? 場所は川の向こうの原、下流に40キロ奥に進みながら下がればあるはずだ。巨体だから分かるはずだ。ふぅ、言ったからな。嘘だと思うなら行って見ろよ」

 ……あ、やべえ、キロというかメートルって通じない?

「今40キロと言ったか?」

「おう」

 俺のMTBにはスピードメーターがついており、悪路でも基本20キロ位で動いている表示だったから2時間でこんくらいだろう。

「おいお前、2時間で40キロ動ける馬を持ってるなら出せ」

 あ、なんだ40キロは通じてんのね。

「それは無理だ、それは俺の移動手段だからな」

「だから、そんな移動手段は無いと言っているんだ! 嘘を抜かすな!」

「あるだろ。2時間で40キロ走る馬くらい」

「ぬけぬけと……ッ!」

「しゃあねぇな、お前等が見つけて発見して証拠を出すまで待ってやるよ」

「チッ」

 舌打ちが多い奴。

 なんだかんだで馬は出したようだがな。

異世界が無骨な感じって私の偏見なんでしょうか……。いやない世界の偏見をしても意味はないのですが。

私としてはこう「村人、優しい」「商人、無愛想」「ギルド、真面目」みたいな発想をしたりしますけどもしかしたら今の流行じゃなかったり……?

勉強足らずですね(そうやって本を読む口実作りする作者)

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