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MTBで旅する異世界  作者: 只の鯨
1章 MTBと転移する異世界
3/103

3話 ただしここが何処だか分かる人はいない

 宛もなく漕ぐこと2時間。

「……これこっち方向であってんの?」

『私もこの世界に見識があるわけではないし、なんとも言えんな』

 俺達は早速心が折れ始めていた。

 霧は晴れたが相変わらずの曇天。見渡す限り草原、足場の悪い道のり。いくら足場の悪いところでもいい機動力を持つMTBといえども俺も流石に疲れてきた。

「オッサンが漕ぐことは出来ない?」

『無理だな。喋れど物は物だ』

「え、じゃあ俺があの時ドラゴンに向かったのは?」

『あれか? あれは思考のジャミングだ』

「何それ怖ぇ!」

 このオッサン突然ヤベェこと言い出したぞ!

『気が動転してる人に耳元で囁くことで自己思想と混同させる短期催眠術だ。主人はまさにそうだったからな、出来るのではと思った』

「……驚く程頭のいいな俺の持ち物。……待て、その知識はどこから来た」

『インターネットだ』

「ネットしてんのかよ!」

 物がインターネットしてんぞ! お前は検索AIか!

『カミングアウトすると、元の世界から私の意識はあった』

「え? なにそれ」

『つまり元の世界では意識だけがあり、それが今回ここに来て何らかの所以で来て話せるようになってしまったってことだ。行動自体は今だ制御権が主人にあって状態変化以外は出来ないがな』

「地球も知らないだけで実はファンタジーかよ……。俺帰ってきたらどんな顔して物に触ればいいんだ?」

『いや、意識があるのはかなり使われた、または愛用された物だけだぞ』

「あ、そう。まぁ6年間も使ってるからなお前」

『感謝している』

 まぁそういうのって日本にも伝承があるよな、付喪神と言われる類の話。

「……で話を戻すけどお前どうやってインターネットしてんの?」

『ああ、私はあの当時の最新型だから漕ぐことで携帯を充電する機能があるだろう?』

「あるな」

 このMTBの前輪からハンドルにかけた骨組みには充電用のUSBポートがある。普段は蓋をしてあるが充電も可能だ。

「……もしかして」

『そこから意識を侵入させた。インターネットはスマートフォンのポートを借りた』

「……自由か。物品の世界は自由なのか。」

 何回かその機能使ったし知識があるのもビッグデータからってんなら納得だぞ。

「ん? もしかしてあの時パケット代が高かったのって」

『あぁそれは一回目で勝手が分からなかった時だ』

「犯人お前か!」

 クソ! この持ち物め! あれすんごい怒られたんだぞ!

 話して気を紛らわしながらも自転車をこぎ続け、未だ草原は続く。

「ん? 水の音が聞こえないか?」

『そうだな』

「……町が近いぞ」

『そうなのか?』

「ネットを遊覧してたのに人が川の近くに町を作ることも知らないのか……」

『見ていたのは主に雑学だからな』

「こいつも暇になるとネットでしょうもないまとめサイトを覗くタイプか!」

 想像以上にネットの沼にハマってやがる。

 川は少し右側か? 方向転換でそっちに向かってみる。水の音はどんどん大きくなり……

「……川だな」

『あぁ、大河だな』

 かなり広い幅の川が広がっていた。向こう岸がギリギリ見えるレベルだろうか。

 よく考えれば、いくら人気がなく静かな場所だからって川も見えてないのに水の音がするのはおかしい。その場合だったら超大きな河川が通ってると考えてしかるべきだった。

 しかも奔流。こんだけ荒れてれば音も響くだろう。

「何にしろ、越えなきゃ町はない」

『こちらの川沿いにはないのか?』

「あったらとっくに見えてるだろ……。おいあれ」

『あぁ、柵だな』

 柵というより塀だ。侵入を拒んでるようですらある。

「ある意味人工物……ではあるから、あそこに集落があるのは間違いないな」

『ふむ。だが主人。どうする』

 どうする、と言われてもねぇ?

「……なぁお前って」

『船にはならんぞ』

「だよなぁ」

 MTBからの日本刀でメタモルフォーゼしたから船も行けると思ったんだがな……。

「……どうしよう」

 ……しばらく思案してると川から何かが浮かんできた、しかもこちらに寄ってくる。

「ワニ……だよな」

『どこからどう見ても、正真正銘疑いなくワニだな』

「……こっち来てるな」

『そうだな』

「しかも列を組んでるな」

『そうだな。……なぁ主人これ』

「無ー理無理無理無理。絶対無理、不可能であると断言しますッ!」

 瞬時に理解した。こいつが言いたいのはあれだ。ワニの背中の上を歩いていけば向こう岸に辿り着く的な童話の話だ。

 あれをリアルでやったらまず足から飲み込まれるオチだ。却下だ却下。ド却下だ。

 というより、

「……逃げるぞ」

『承知』

 逃げないと死ぬよこれ。

 身近に死を感じるのが最近の流行ですか?


 俺達は今全力で上流へ向かっている。

 何故かというと水生生物は上流に登るのを苦手とするからだ。それはそうだ。水の中と陸の上、逆流するのにかかる負荷の係り具合は桁違いに水中が上だ。だから上流に逃げる。

 例の地点から全力で漕いだからある程度は来ただろうか。

「巻いた……?」

『あぁ。そうみたいだな』

 割と簡単に巻くことが出来たな。

「ふぅ」

 いつも通りタオルで汗を拭こうとして、気づく。

 俺のリュックの中身。

 自転車の鍵のスペア。

 持って帰り忘れたから終業式の日に持って帰った英和辞書。

 タオル。

 角。

 ……少なッ!

 おい英和辞書何に使うんだよ! 撲殺? 撲殺なのか?

 ……日本刀で斬っちゃえばいいからいらねえな。

 てかこの世界の人達は何語を喋ってるんだ?

「おい、おんまら!」

 声がした。

 声の先には人影、……え? 川の上に乗ってる…?

 違った。川に橋が架かってるんだ。渡る方法発見。

「おんまらそげなところで何してるんべよ?」

「オッサン」

『主人。分かってる言いたいことは分かる。私も同じだ』

「……じゃあ、せーので」

『あぁ』

「せーの!」

「『異世界の人、日本語喋れるんかいッッッ!』」

 初めて物と人の声が綺麗にハモった。

外国と日本のカルチャーギャップっていろいろ辛いですよね。アニメなのにヒロインかわいくないとか(失礼)

同じ地球という「世界」の人間でも千差万別なわけですがそれを世界規模でやるとどうなっちゃうんでしょうね。

意外と進化の過程をたどる方法は一緒だったりするのかも?

なんだか結論は出しにくいですが異世界でも日本語、喋っちゃうみたいです。

次回、ヒロイン現る(ただし活躍する時間はない)

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