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34 『力の鍵』

「――間に合ってくれよ」

城につくまで方針を魔女と話し合う。

一番良さそうな戦術を脳内のヨアヒムさんも交えて会議した。

心が読めるって素敵。


色々と腹をくくった。

勝たなければ未来がないのなら全力を尽くす。

霧の魔女の霧は戦闘中は味方を阻害しないように薄く見えるという。

敵には濃く、情報を遮断する。立ち回りはそれを踏まえて行うことにした。


豆知識先生が両手にポンポンを持ってチアガール的な踊りを始めた。

緊張がほぐれる。



城についた頃には既に城内での戦闘になっていた。

予定通りに王の間の前で降ろされる。


「胸ぐらい揉んでも良かったのだけどね」

「――しまった!」


それを聞いて少女は小悪魔的笑いれっさーであぼりっくすまいるをした。

「アハハハ。またの機会に取っておくよ。

 それじゃ僕は監視者の役割に戻るから頑張ってね」



『狐の』ネリカはまた石臼で飛び去っていった。



水取は王の間へ急ぐ。

黒い通路を走りぬけ霧の障壁を前、左、後ろ、左のコマンド魔法を描いて結界を解く。


眠る秋の君、千の秋の王の待つ元へと入った。


外の喧騒から一転して静寂の空間に変わった。

教会のごとき中で光を浴びて擱坐かくざしている白い鎧の王だ。

6mほどの巨人。四本の手足を持つ。


阿修羅王。


今は眠っている。

黒の切り札、阿修羅ゴーレムの鍵を使う。

腕が熱くなる。


鎧が動く。

自らサーコートをめくり胸の鎧を前に開いた。

コクピットがあらわになる。


扉から風が吹いた。

広間へ霧がドライアイスのように流れこむ。


足元を白い霧で出来たウサギと狐が駈ける。

ゴーレムの足の間へウサギが飛び込み白い影がそれを憤然と抱きかかえて狐から守る。


白い影と瞬間、目が合う。

口を真一文字に結んだ、赤い強い瞳の少女。呪いの王。

それで全ての幻影が消えた。


風が鎮まった。

霧が消えて元通り静寂の中で光だけがキラキラと舞う。

今の幻影はなんだったのだろう。だがそれを深く考える猶予はない。


手のひらを巨人が差し出す。それに乗った。

胸前まで手が登る。中へ乗り込む。

一人乗りという感じの広さだ。外観から予想されるよりは広い。

魔法具ということだろう。


ハッチが閉じる。

計器の光が浮かび上がる。

ディスプレイが一面に広がる。


操縦方法はまさかのコントローラーだった。

左手に方向キーが二つあって右手にも方向キーとボタンが大量についてる

ゲーム的なコントローラーである。

というかそのままである。

判りやすい操縦方法がプレイヤーにあわせて用意される、という事らしい。


脳内でヨアヒムさんが心配そうに見てる。

「できますかな?」


頑張ってみる。

お。思ったより簡単に動かせた。

立ち上がる。

視点が高くなる。これはなかなかたぎるものがある。


――武器はどこだろう。


ヨアヒムさんが中庭の大剣です、と言った。

あのオブジェにそんな伏線が!


移動を開始する。早い。

四本の足のおかげかどうか判らないけども振動も感じられない。

滑るように走っていく。

視界が揺れないのがありがたい。揺れたら多分酔う。


王の間を出て一気に剣のところまで跳躍した。

刺さっている剣をその勢いのまま抜き取る。

着地。アクロバティックな操縦がいきなり出来た。

思った以上に融通が効きそうな機動だ。


剣の重さが何故か感じられる。

手に張り付いた、不吉な重さだ。


敵味方の視線が一気に集まった。

敵の視界は阻害されているので特に味方の視線が集まる。


「――くろい、くろい、闇の狭間から王が戻ってきた」

誰の声だろう。

刃物がぶつかり合う喧騒の中で妙にはっきりと耳に届いた。


続いてささやくような幾多ものの声が響く。

魔法陣が発動して剣が禍々しい黒いオーラに包まれた。

黒い蛇がぐるぐると回って剣へ吸い込まれていく。

蛇が歌う歌は黒い夢の歌。


――これは、死者をいたむ祈りの歌だ。


知らない外国の祈りの歌だけどもその不吉で痛ましい調子は伝わる。

俺の為の棺を用意しているかのようだ。


「――闇の狭間の王とは誰か?」

誰かが耳元で怒りの混じった呟きを吐いた。

呼吸を感じる。


振り返ったらあかん奴だと思う。

後ろに、そいつが・・・・いる。

視界の端に女の白い腕がちらりと見える。

席の後ろに立っているのだ。


――最初は耳。次は目を。


そいつが耳を噛む。

千切れそうな程の痛みが走る。

ダメージゲージ無効で血が滴る。



――預言を潰せ。お前を縛る事は許さない。

耳元の気配が消える。

消えてから耳を抑える。血がべっとりついている。

その血が幻影だったかのように消えて耳の痛みだけが残った。


そして冷たい、いや熱湯のような力が脊髄に流し込まれた。


何もかもを破壊した衝動に駆られる。

敵も味方もなく、全ての生きとし生きる者を。

何をしようが愛してくれないこの世の中を。

もどかしさが腹のうちに溜まる。


――死人だけがお前を愛する。

 ――生きる者には死を。死を。死を。

いやだ。嫌だ。いやだ。

悲鳴が聞こえる。死人の産声、断末魔。

助けてください、助けてください、許さない許さない許さない。

みじめに死ね!


「あああああああああああああ――――――――――!!!!!」


もどかしさを覚え、耐え切れないとばかりに

ゴーレム、――いや己かもしれない、が天に向かって叫んだ。


長く、長く糸のように長い叫びだった。


魔法陣の帯が周囲を何回転かして消えた。

剣を強く握る。重みが心地よい・・・・・・・



「――勇者殿、勇者殿。お気を確かに」

脳内でヨアヒムさんと豆知識先生が心配そうに声を掛けていた。

我に返る。

コントローラを強く握っていた。力を抜く。


「敵が来ますぞ。ここは戦の場。油断めされるな」



ヘドロも霧も消えていた。

先のゴーレムの叫びで消えた旨のメッセージログを発見する。



霧が消えた事で全ての敵の目線が一斉にこちらを向いたのだ。

7/31 で一章終わりです。



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