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32 『思い通りの未来をプロマイズ』

水取ユニ・・・が思った通りの未来が待ち受けている、という事実。

思い描いた未来が実現するという言葉の重さ。

思わず顔を覆って身を伏せた。


「うん。まあそうなるよね。

 薄々わかっていたよね。

 未来を考えないというのも一つの長所とは言える。

 現在だけを生きる事ができるからね。


 君は高校を卒業するとバイクの免許を取らされます。

 それを使って親の連帯保証人にされます。

 君の名義で凄いことをします。


 大学は国公立なら良いと頑張りますが

 塾へ通える金もなく参考書も買えないので成績は低迷します。

 図書館で借りた本で頑張ろうとしますが

 途中で国公立に合格しても通わせる金が工面できない、

 それより働け、

 大学なんか出てもこのご時世では意味がないと

 圧力をかけられ勉強を止めます。


 バイトしながら浪人をしますが学費が貯まるどころか、

 いつの間にか借金300万円あって就職を余儀なくされます。

 その中には借りる時に100万借りて

 130万を返すような良心的・・・な闇金も含まれています。

 なぜなら真っ当な所から借りる事ができないからです。

 ちなみに君に覚えがある金は5万円のバイクだけです。


 田舎なので時給は650円です。

 仕事自体も募集がほとんどありません。

 借金は日々額が増えるのでもはや確認しません。

 高校までの友人とはすべて関係が破滅しました。

 全滅です。

 なんとか小金を隠し溜めて都会で一人暮らしを始めました。

 親から掛かってくる電話は全てお金がらみです。

 電話にでるのが怖くなりました。

 でも君は親を愛しているので縁を切れません。

 そうして当然の事だけど結婚は……」


「やめて……やめてくれ……」

魔女が屈んで水取を優しく抱きしめた。



「君の痛みは君のものだ」


ゆっくりと諭すように魔女は言う。


「確かに世界にはもっと悲惨な人はいる。

 僕が担当したプレイヤーの中には虐殺された村の生き残りも居たし、

 さらわれて片手足を切られて物乞いをさせられてた子も居たよ。

 君の国はたしかに全体で見れば幸せな方だろう。

 理屈ではね。

 だけども痛みは痛みなんだ。人間が痛みを感じる事は正常なんだよ。


 『お前は甘い』『自分の馬鹿さが招いた事だ』『親のせいにするな』

 『世界にはもっと悲惨な人がいる、お前なんか恵まれているほうだ』

 という戯言を呑み込んではいけない。

 事情を深く知らない、ただの知ったような台詞だ。

 言った人間が気持ち良くなるだけの台詞で切り刻まれてるだけさ。

 自分の人生に関わらない相手に行う無責任な説教や暴言は気持ち良いものだよ。

 付き合うだけ無駄さ。

 付き合った所で全く現状が改善しないからね」


魔女が手をそっと握って真摯しんしに語りかけた。


「いいかい。

 よく聞いてくれ。

 僕は君を愛する。

 君の弱さをありのまま、そのまま愛する事が出来る。

 前にも言ったけど駄目な男の方が支えがいがあるんだ。

 支えて一人前以上の男に仕立てるのが良い女さ。

 僕なら大抵の男を良い男に出来る自信がある。


 だけど好みは僕にもある。

 一目惚れさ。

 魔女は直観を大事にするから僕もそれを大事にする。

 力ある者は役割ロールを演じなければならない。

 直観に従う魔女のさがが僕の役割ロールだ。

 君が一目惚れでなんでここまで、

 と思っても僕が決めたことだから気にしなくて良い。

 気にするなら本気で惚れさせれば良い。


 駄目な男が僕のおかげで自慢できる男になるのは嬉しいものさ。

 ただ少しぐらいは駄目な部分は残しておいて欲しい。

 必要とされたいからね。


 どうかな? 

 僕と一緒にここに残って内海の島々を冒険しないかい? 

 魔法の帆を張って風で思いっきり大海原を走るんだ。

 イルカとともに夕日を見よう。

 椰子の実を食べよう。

 そうして愉快に笑って暮らせる楽しい日々を作ろう。

 子供は作れないけど養子を迎えれば良い。

 可愛い孤児や奴隷を養子に迎えよう。

 だって可哀想だからね。

 君はきっと良い父親になれる。

 誰よりもなるべき父親の姿を思い描いているから」


魔女の誘いは心を揺さぶる。


「かんがえ、させてくれ」

「良いよ。

 ……フェアじゃないから言うとさ。

 僕は幾らでも待てるし、待ったほうが有利になる。

 だけども1つめの真実でも言ったろう? 

 霧の魔女達には時間があまりない。

 君は選ぶなら考えを早くまとめなければならないよ」


「俺が、戻っても助けれるだろうか」

「それには答えきれない。

 一応はゲームの監視者だからね。

 まあ行けばゲームの勝敗がちょっと判らないようになるのは確実だよ。

 沼の魔女は問題視されるぐらいに強い。

 プレイヤーも吸血鬼の王だ。

 子供の喧嘩に大人のヤクザがきたようなものさ。

 剣聖技と千の秋の王をっても

 君は生死が判らない程度には大怪我するだろう」

「そう、か」


「じゃあ、行っておいで。

 尋ねた時点でもう君の答えは出てたんだよ。

 僕は良い女になりたいから君の背中を押すよ。

 ――本音としては危ない橋を渡らずに

 このまま僕と恋の逃避行に走って欲しいのだけどね。

 君が生き残る事を祈るよ」


「ネリカ、さん」

「ん?」

「良い女だな」

「そうだよ。よく言われる」

「よし行くか」

40kmまでは距離がないと思う。疲れない体だ。全力で走ろう。


「がんばるんだよ。さて僕も監視者として見届けに行かなきゃね」

石臼に乗ると魔女は少しスペースを作った。


「セクハラして良いよ。

 前回は邪魔が入ったからね。

 後ろから抱きしめるぐらいの事はして良い」

「――ありがてぇ!」

二人乗りを誘っているのだ。男前すぎる魔女だと思った。



そうして一気に霧の城まで石臼が飛んだ。



魔女は己の欲望の為に人をたぶらかす。

力の王パワーズの一人として真に忠実なロールだった。



※時給は当時。


1~4話の改行修正やら小人挿絵やらをこっそりやったり。


ブクマ、感想、評価があると喜びますどす。にんげんだもの ぽにを

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