30 『童貞の帰宅』
数日が過ぎた。
星乙女の護符を貰った。天秤と剣をあしらったストラップだ。
「そのフォブを財布にでもつけとけ」
フォブは根付の事らしい。懐中時計なんぞにつけるとオシャレらしい。
そんな骨董品持ってないわ。
この護符を持ったまま外つ国へ戻れば阿修羅ゴーレムの呪いは抑えられるという。
一度も実際に乗っていない今が勝負どころだとか。
あらゆる手段で誘惑をするから早くと。
来た時の持ち物を壊れた携帯も含めて持ち帰還する。
服は残念ながら破れて使い物にならなくなってた。いつのまに。
仕方なくいつもの服で帰る事にする。清潔でシンプルな着心地の良い服だ。
「水取くん、帰っても勉強頑張ってね」
エイプリルはそういう事を言う。
素直に頷く。前よりは頑張れる気がする。
思うに今までの俺に足りなかったものは勉強を教えてくれる可愛い同級生だったんじゃなかろうか。
このエロ可愛い服を着たエイプリルともお別れか。目に焼き付けよう。
「……最後ぐらいかっこつけて欲しい。水取くんのスケベ人」
好感度がまた下がった。
食事やらメイドさんやら色々と名残惜しい。
「ミムが見送りしたいそうだから連れて行って。私は霧を作って襲われないように支援する」
エイプリルと小人とは城でお別れ。
「帰り道はトンネルだべ。そこ入ったら振り返ったり息をしたらあかんで」
小人が逆立ちしてみせた。謎のポーズだった。
「これもやり収めかー」
バク宙をする。強化された体力があったからこその実現である。
「外つ国に帰っても練習すれば出来るべ? もしかしたら感覚は残ってるかもしれんし」
「だと良いなあ」
運動も続けようと思う。
脳内に住んでいるヨアヒムさんと豆知識先生はそのまま付いてくるらしい。
ただし今みたいにはっきりと会話できるかは判らないそうだ。
「時々思い出せば良いべ。ついでおいどん達もな!」
「そうするよ」
いっぱい世話になった。
「それではお元気で」「水取くんもね」「毎日爪切って身だしなみに気をつけるべ。あとパン屋も良いのを探せ」「らじゃー」
名残惜しいが馬車に押し込まれた。
馬車に腕の立つ衛兵が7人とミムさんが乗って旅立つ。
霧の中を走る。なだらかな丘を登る。白い花々のけぶる道。
落ち着く良い国だった。
馬車が止まる。ここから先は歩いてくださいと。ミムさんが手を取って引っ張る。
一本道だ。白百合の街道。二人とも黙って歩く。何を言ったものやら。
気まずさに足早になった。ミムさんが袖を引っ張る。
「ゆっくり。急がないで」「はい」
とりとめのない会話を色々した。
外の国の事を色々聞きたがっていたのでそれを会話の柱にした。
ミムさんは仮面の下は骨の人なんだけども、かつて幻影でみた姿が生前だろうと思う。
エイプリルにも引けをとらない美少女だった。
それになんといっても話しやすい落ち着く人だ。
チーレムの夢は叶わなかったけどまあ、最後の見送りがこの人で良かったと思う。
「それでは私はここでお別れです」
花の街道が途切れた。馬車を待たせている。城に帰らないといけない。
このまま真っ直ぐ道を行けばいずれトンネルに着くから迷いようがないという。
ミムさんに取っておいた物を渡す。
「……これは。大切にします!」
桜色に輝く魔法の真珠。洞窟で見つけたレアの逸品だ。
火器管制システムの為の魔法石で使うかどうか悩んだのだけど、こうした方がずっと良いと思った。
「私が骨じゃなかったら水取くんに色々できるのにね」
「ミムさんはもう既に一杯良いことをしてくれたよ。感謝してる」
笑って別れた。
見えなくなるまでミムさんは手を振っていた。
歩く。
途中で脇の森から霧を固めたようなおぼろげなウサギが一羽飛び出した。
それをおぼろな霧の狐が追いかける。
ウサギが巣穴へ飛び込み両者の幻影が消える。
最後まで魔法の国ならではの光景が見れた、としみじみ思う。
そして丘の頂上に差しかかった頃呼び止められた。
「その足待った」
と。
感想や評価ブクマがあると喜びますどす。
しれっと告白回でしたな。
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誤字修正。
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誤字は気付いたら修正したいけどブクマの更新情報に編集でも出て来るのだろうか気になる所よ。
とりあえず午前四時なら気付かれるまいと済ませたり。




