22 『赤真珠の昔話』 ・『ぶれいくたむ』
準備は整った。
キーサ貝を潮干狩りするでごわす。
兵士ヨアヒムのおっちゃんというか爺さん、黒髪ツインテールメイドのミムさんと一緒に行く。
入り口までは馬車で送って貰った。
俺以外はスケルトンである。コワイ!
ヨアヒムさんは目隠しをした老剣士風スケルトン。
ミムさんはお面をつけたロボ娘風スケルトンだ。
お化け屋敷に妖怪と一緒に入って怖がる漫画があったけども、
まさか似たような事を体験できるとは人生何があるかわからないものだ。
霧の中に佇む石造りの祠の中に地下への階段があった。
昔、狭間が狭間で無かった頃はこの迷宮近くに番人の小屋や発掘品を買い付けに来る商人が泊まる宿場町などがあったらしい。
迷宮が街を作る訳だ。不思議なもんだなあ。
迷宮が赤真珠を産出し、さらに他の魔法の品やら宝石を作るからこそだと思う。
かつてここで住んでいた人達はゾンビになって今も彷徨っているのだろうか。
狭間の呪われた一族の話を聞きたいような、重そうで興味本位で聞けないような。
今は考えないことにした。
「さて入りますよ。水取さんはランタン持っててください。私が先頭で歩きます」
ミムさんが先頭で松明を持って歩いて行く。
灯りは松明とランタンの両方で結構明るい。
迷宮の中は入り口付近は霧っぽいのがあったけども中はそうでもなく暗い。
霧は走ると水滴が付くのでありがたい。
松明とランタンの炎は趣がある。2つの光源に照らされた影が迷宮の壁を走る。
「魔法で灯りとかあれば楽そうだけど」
素朴な疑問を出す。
「光の魔法は魔法使いの技ですね。杖がぱーって光るんですよ。
星の光が地上に現れたみたいになるんです。
そして魔女は鬼火を呼びますね。鬼火は悪戯が好きで困り者ですけども」
雑談しながら下っていく。
要するに光の魔法は魔法使いや魔女の技なので使えないという事らしい。
「鬼火って見たことないなー」
「沼とかで浮いてるのを見たことないのですか?
青白くて走る時にひゅーって声出すんですよ」
ひゅーの部分はTVとかの幽霊の音じゃなくて軽快なロケット花火みたいな調子でミムさんが言う。
実際の音がそういう感じなのだろう。
「そうだ、忘れてた。例のおはじきやっとこう」
光るおはじきで道に迷わないように目印をつけていく。
「良い心がけです。水取さんはいつかゲヘナまで潜れるぐらいの英雄になれるかも知れませんね」
ゲヘナはなんかゲームで聞いた事あるような単語だ。
多分すごい場所なんだろう。
ひんやりした地下道は石造りで歩きやすい。
時折虫が居て松明の光に怯えて逃げていく。コウモリは居なかった。
「そこ踏まないで。ちょっとおはじき良いですか?」
ミムさんはおはじきを受け取ってトラップ前に!印を独立して付けた。
「簡単な記号なら念じて作れますよ」
と。便利な小技だ。
トラップが多かった。
それを予め知っているミムさんが先導してるので楽だ。
地下三階の湖まですいすいと行けた。
一度通路の奥から唸り声が聞こえて焦ったけども
コマンド魔法の炎の呼び鈴であっさり消し炭にできた。
消し炭にした初狩りの経緯はこんな感じだ。
まず暗闇にターゲットサークルが表示された。
それで輝く呪文リボンを下、右前、前と指で引いてロックオンした正体不明の敵に放つ。
若干FCS(火器管制システム)が働いて軌道を修正。30cmぐらいの炎が矢のように走って命中した。
ぼん! じゅー! と命中と燃える音。
そのまま視界のロックオン枠からターゲット表示が消えた。死んだらしい。
潜在能力を使って実装したこれ便利やな、と死体を確かめに行く。
すげーでかいトカゲの黒焦げ死体があった。
シングルのベッドサイズぐらいの大きさのトカゲだ。
胴回りとか抱えきれない程太くてごつい。
初のモンスターキルである。
火の魔法は予想以上に強い。
人に向けて撃ってはいけません、という奴だ。
今まで命中にしか気を取られてなかったけど威力の調整の練習もしたほうが良さそうだ。
――実績『モンスターハンター初級』を解除しました。
ウィンドウが出た。効果なにもなさそう。
「流石ですね、水取さん。
これは毒持ってるモンスターで手強く、おまけに逃げ足が早いので厄介なんですよ」
「追いかけるとトラップに誘導するトカゲですなあ。昔は手を焼いたものです」
しみじみとヨアヒムさんが言う。
「オオトカゲの目玉は薬の材料になるので持って帰りましょう」
と黒焦げの目玉をミムさんがほじくり返して小袋に包んだ。
それを改めてリュックに入れる。
珍味なのでお酒には合いますが、水取さんはまだお酒は駄目ですね、とミムさんは笑って言った。
そうして三階に下りて目的の扉を開いた。
世界が一気に広がった。
「すげえ。なに、この綺麗なとこ」
感嘆して目の前の光景を見る。
ミムさんは誇らしげ。ヨアヒムさんもどこか嬉しそうだ。
舗装された地下道からおおきく開けた大鍾乳洞に出た。
ランタンの光が一気に広がる。
灯りの届かない暗い岩壁がキラキラと青や赤に輝いていた。
20m程先から一面に黒い静かな湖が広がる。湖の黒に壁の光が映って星空みたい。
湖のほとりは白い砂浜が広がっている。
しばらくの間見ていた。写真が撮れないのが惜しい。
「では掘りましょうか。注意としては、ここから、――ここまで」
とおはじきを持って光の線を作って示す。
「――の範囲でお願いします。
熱中していると暗がりにいつの間にか影が来て喰われるかも知れませんよ」
「こわっ!」
「それさえなければ立派な観光地でやっていけたのですけどね」
「では私は少し離れて周囲を見張っている事にしましょう」
とヨアヒムさん。
えー? 一緒に掘らないの? っと思ったらミムさんが袖を引っ張って、そうさせて頂きます、と言った。
潮干狩りのデートは本気だった……!
そんな訳でランタンと荷物を置いてせっせと貝を二人で掘る。
熊手を持って砂を5cmぐらい深く掘るとざくざくと現れた。
赤い貝が目当てのキーサ貝だ。
砂から出ると貝が赤く光ってるので目立つ。
ホタルの光みたいに強くなったり弱くなったりを繰り返してる。
手のひらサイズ以上を選別、それ以下は取らない事にした。
一つ開いてみるとなるほど、光る正体の赤真珠が見つかった。
真珠の核から強い光が出て透かしている感じだ。
明滅を繰り返すそれはライティングが柔らかくて幻想的で美しい。
全部の貝に入っているらしい。
すげえな。そりゃ往時に街ができたはずだ。
「むかしむかし真珠採りの若者が居て、貴族の娘に恋をしたそうな」
ミムさんがなにか語りだした。
毎回思うけどミムさんはなんというか声優じみた綺麗な発音なので語りに引き込まれる。
「――へえ」
ランタンを中心に回っているので影法師が洞窟の壁に大きく映る。
ミムさんが昔話を語りながら影法師がゆらゆらと動く。
洞窟の壁の宝石が点滅する。
一瞬情景に心を奪われた。
ミムさんが続ける。影法師が熊手を振る。
完全に語り口が昔話モードになってる。
「その頃はまだ真珠も普通の真珠だったそうじゃがのう。貴族の娘は若者の求婚に困り果てて
『週末パーティがあるの。
週末まで私のためにとびっきりの真珠を1000くださいな。
そうしたら求婚の話も考えなくもないわ』
と言ったそうな」
ザクザクと掘っていく。
「若者は頑張った。砂浜だけでなく湖の奥まで潜っていった。
朝から晩まで採り続け、3日もすると血の気は引き、体はロウのように白くなった。
そうして若者が真珠を集めているとな。
それを快く思わない連中がやってきて6日目の晩に若者に剣を突き立てたのじゃ」
「うわあ」
「それ以来ここの真珠は赤く光るようになったという。
今でも真珠は
『姫様、私は1000集めましたよ、姫様見てください』と訴えているそうじゃ」
「救われねえ昔話!」
「……という伝説が伝わっていますよ。
それで好きな人にここの真珠を使ったプレゼントを贈ると愛が伝わるそうです」
「怨念じみてる話からまさかのロマンテックな展開に変わった!」
「ま! 今回は水取さんが元の世界へ戻る為の結界の材料ですけどね」
良い感じで取った貝をまとめて一気に中の赤真珠を取っていく。
こじ開け用のナイフでこじ開けて中を切り開いて取る。
さすがに生臭い貝をリュックに詰めて持ち帰る気にはならない。
予定は50程でそれは問題なく取れそうだった。
「お?」
すごい綺麗な真珠が取れた。
光の加減も他よりも美しい。桜色に明滅する。
ウィンドウが出た。
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――レア魔石『桜真珠』を発見しました。[基本発見率 0.00003%]
FCSの構成魔石に追加が可能です。追加しますか? (現在のスロット 1/7)
距離: 30m → 30m
最大ターゲット数: 1 → 1001
角度:120度→270度
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これは良い物だな! どうしよう。
ターゲット数1000ってどういう感じなんだろう。試したい。
貰っていいのやら。消えちゃうからな。一声掛けるべきかな。
よし相談しよう!
「勇者殿、ミム殿。誰かがこちらへ向かって来ております。ご注意を」
悩んでいる間にヨアヒムさんが緊張した声で警告した。
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『ぶれいくたいむ』
四葉亭の平穏なある日。
小人のちゃっきーさんとハヴェルの会話録。
「壁ドンなる諸作法を学べばモテるといふ」
「そうなのかい」
「さて構え」
「構え……?」
「どすこーい」
「おおいに違う」
――俵がモテるようになりました。
すごい
投稿後に改行やらを付け足しました。
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ぶれいくたいむは文字数が規定数に足りなかったので
本編にくっつけました。
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鬼火は実際に見た事があるのでその時の経験にて。
交差点で信号待ちの時に見たので自分以外も驚いた。
と夏らしい話題を振っておく。
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洞窟でランタンの光を中心に二人の影がくるくる回る情景は個人的に好きな場面どす。
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週末という事で12時に追加で本編の更新が入ります。
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ブックマークや評価、感想はありがたいどす。
フィードバックがあると今後の参考になりますどす。




