20 『遠足の準備。いとをかし』
朝が始まった。
「にんじーん」
「にんじーん」
人参を両手に体操を皆で行う。
スケルトンの衛兵たちも混じって異様な空間である。
新鮮で冷涼な空気を吸いながら行う体操は小学校の頃のラジオ体操を思い出す。
小人なんかは幼稚園児に見えなくもない。
体操が終わって軽い朝食。
そしてヨアヒムさんと剣の稽古。
昨日と同じ流れで流していく。疲れない体を使って動きを覚える訓練は楽しい。
ミムさんは出発の準備で今日は稽古を見てくれなかった。
代わりにエイプリルがベンチに座って読書の合間合間に見ていた。
「遠くを見てるだけ」
目の運動だからと言う。素直に認めてもらいたい。
■
そうこうして昼になった。
ダンジョンの事を飯を食べながら聞く。
ヨアヒムさんも待機して荷物のチェックをしている。
エイプリルは本を読んで我関せずの構え。
そんでリュックを一つ貰う事になった。
小学生的なリュックをおすすめされた。
ちゃっきーのアップリケが付いてる。
「迷っても見つけやすいどすからな」
「水取さん、可愛いからこれにしましょう!」
「もっとカッコ良いので頼む!」
兵隊が使ってるのと同じリュックに落ち着いた。
地味である。チャームポイントはつけようぜ! と小人の絵がある缶パッチを付けられた。
……もう好きにしてくれとそのままにした。
ミムさんが説明する。
「この城の領地には3箇所の迷宮があります。
今日は湖の近くのレイア迷宮へ潜ります。
地下5階までありますが3階まで下りてそこでキーサ貝を採取します」
「へえ。貝か。モンスター?」
「ちょっと大きな普通の貝ですよ。地下湖があって、その砂浜に潜ってます」
手のひらぐらいの大きさだと言う。
貝殻の中に魔法の赤真珠が入っている事があるそうだ。それ狙い。
「お前様の国だと潮干狩りっていう行為どすな」
「ダンジョン潜りかと思ったら潮干狩りかー」
やれやれだぜ。
「キーサ貝は餌じゃけん。それ目当ての人間を喰う生態系できてるべ」
「大丈夫ですよ。欲かいた人間を誘い込む為の見せ餌の場所です。
最近だれも入ってないはずなので50は確保できるでしょう」
「MMOの狩場みたいだな」
迷宮の奥に行くほど質が良くなるそうだ。
そうやって冒険者を誘い込み迷宮が喰うのだ。よく出来てる。
「ミム。水取くんは素人。無理しないで。ヨアヒム、必ず二人を護りなさい」
「応」
エイプリルが本を閉じて警告した。
「お嬢様は心配性ですね。それじゃ万全を期していきますか」
やれやれ、という感じのミムさん。
「そうして」
とエイプリル。
「まあ大丈夫どすよ。水取どんは殺しても死なない奴だべ。
ダンジョン潜りのガチ道具の使い方も教えておくべ」
と小袋を取り出した。
大量の光るおはじきが入っている。
「これは『そこで光れ』と命じた場所で光る石だべさ。
道すがら置いて目印にするどす」
「ほう。ヘンゼルとグレーテルみたいな」
「えらい懐かしいのを聞いたどすな……」
石を試しに落として実演してくれる。
一つ落として光る。
二つ落として光る。そしてすっと光の線が結ばれた。
間にリュックを落とす。リュックの上を光が通った。地形に邪魔されない仕様である。
「すげえ!」
「すげえじゃろう? 大体20mぐらいまで伸びるべ。こいつで迷わないようにする便利アイテム」
「でもこれ使うとモンスターとか寄ってこない?」
「特定の人間にしか見えないようにできるべ。
……ま、たまに見えちゃうモンスターには諦めてもらおう」
そういう相手はどのみち手のつけようがないだろうから。と。
「あとはベースキャンプとかやな。お前様、登山とかしたことある?」
「ないよ!」
「迷宮潜りは冬山登山に割と似てるのじゃがのう。油断すると上級者でも死ぬところとか」
「物騒すぎた!!」
「今回行く所はルートが決まっているので、そんなに心配しなくても」
「脅しすぎたべ。てへ」
ベースキャンプは迷宮攻略の拠点にする場所だ。
アイテムや食料の備蓄、ぐっすり眠れる寝床を作ってより下層の攻略に挑めるようにするという。
寝る時はマントがあれば便利だ。特に魔法のマントは軽くて寝る時は寝心地の良い毛布になる。
魔法の品は自分で見つけて、と言われた。
魔法の品は主人を選ぶそうだから今手元にないのは時期ではないからだろうと。
今回のダンジョンは日帰り予定です、とミムさん。
小人は若人に世界の未知をあれこれ話して冒険に誘うのは先達の役目じゃからと言うのだった。
魔法の品はお前様を待って今も眠っている、というのが妙に印象的だった。
ミムさんは若人を迷宮の奥地に誘ってるトークですよ、と小人をたしなめていた。
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あとがき
しばらくダンジョンの説明と初級ダンジョン踏破の回どす。
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ブックマークと評価ありがとうございますやで!
4人目のヒロインは18日登場予定だから絵を準備したい所どす。




