1 『始まりは白』 (挿絵有り)
『始まりは白』
コンビニから出るとそこは白い霧の国だった。
黒のパーカーについた水滴を手で払っていく。
水取逸角は濃霧の中、困惑しながらも歩いて行った。
霧は数mどころか数10cm先も見えないという濃厚な霧だ。
最初は「すげー」と驚きながらも面白がっていたが、やがて無表情になった。
道に迷ったからである。
一本道のはずだ。どこで道を踏み外したのだろう。
着くはずの場所に着かない。
霧でついた水滴を払う。
辺りは白く明るい。霧が街灯の光を反射しているからだろう。
携帯を取り出す。20時12分。圏外。
とりあえず写メする。真っ白だ。
思いついてコンビニ袋を持ったまま手を伸ばす。
手が白い霧で見えなくなる写メが撮れた。面白い。
霧が濃い所や薄い所があるので特に濃い場所が狙い目だ。
さくさくと撮っていく。
この時はまだ余裕があった。霧の中で迷ったとはいえ街中だ。
事態を舐めてた。
調子に乗って沢山撮ってたら心霊写真をゲットした。
事態を舐めてたよ!
具体的には眼球がぶら下がった白い死体っぽい横顔が撮れたのである。
風が吹いた。
霧が吹き飛び、ゾンビに囲まれている事に気付いたのだった。
へろーわーるど。