一触即死(一環の終わり)
高校生です。暇なときに書いてます。
「僕は夜ノ森学園高校二年の蓬田 和都って言います。見た目こんなんだけど転生者の一人なんで…剣を向けるのやめてくれると有難いなあ、なんて。」
「嘘をつくのはよしたまえ。僕の勘が貴様を魔王だと言っているのだ。断罪する。」
「えぇー!!!!」
どうもこんにちは、蓬田和都です。どうなってるかって?魔王と間違えられて、縛られて、剣が首筋にあるっていうね。そして今勘を頼りに殺されそうな訳ですよ。転生して20分で死ぬっていう人も珍しいだろうね。
〔確かにこのままだと最短記録更新しそうね。〕
(ちなみに女神様、つかぬことをお訊ねしますが最短記録って…)
〔一年半よ〕
このままじゃ熔鉱炉の上にでも転生しない限り更新できない大記録が誕生しそうだ。
え?なんで女神と交信出来るかってスキルを全部取ったからだよ。スキル数ざっと10000。そんなにスキル取って何するの?この世界を楽しむの。
〔じゃあ自問自答って楽しいの?〕
(んな訳ないじゃないですか。)
〔それもそうよね。〕
(てか、なんで俺の職業あんなに中途半端なんですか?)
〔ホントはそっちとして転生させる予定だったんだけどここの人が五人ほどそれになっちゃったから、〕
(理由適当過ぎない!?)
〔急遽これ入れたんだけどそっち化が進んでたからそんな中途半端になったの。〕
(代名詞多くて何が何だかわかんねぇよ‼)
「さて、死ぬ覚悟はできたか?」
「普通できねぇよ‼」
「三分間だけ待ってやろう。」
どこの大佐だと叫びたい。
〔◯スカ大佐ですか。懐かしいですね。〕
(‼そうだ神様、何か転生者の証拠とかありませんか‼)
〔?確かアイテムボックスに入っている筈ですが…〕
(開け方は?)
〔覚えていません。〕
(嘘だろ!?)
〔あ、いえ、そうではなくて、〕
(そうではなくて?)
〔忘れました。〕
(どっちもどっちだよ‼)
〔目の前の人に訊いてみれば良いのでは?〕
目の前。
「…なんだよ。」
絶賛疑い中の転生者の冒険者がおりましたとさ。
「すまないが俺は転生者以外には倒せないのだ。転生者という証拠はあるのかね?」
魔王役とかもう死んでもやらん。いや、一度死んでるけどさ。
「ならば冥土の土産に見せてやろう。」
<我に道具をもたらさん、アイテムボックス>
おおっ、なんか次元の裂け目みたいなの出来た。後、まだ死ぬ予定はない。
「これでどうだ?未練はもう無いな?」
<我に道具をもたらさん、アイテムボックス>
やった出来た。
「これで俺も転生者だって認めてもらえ…」
「貴様‼よくも俺の仲間を‼」
倒してません。殺してません。
〔この方は話?何それ?美味しいの?系の方ですね。〕
(呑気にいってる場合じゃなくて‼転生者いきなり一人死ぬよ‼)
〔ならばスキル見せてください。〕
(どうやって!?)
〔気合いでガツンと〕
(出来るわけ無いだろ‼)
〔とりあえず適当になんか考えてください。〕
このクソ女神‼役に立たねぇ‼
〔考えろと言ったのはスキルを見ようとしなさいということです。あと、首を洗って待っていて下さいね。〕
無視、スキル、スキル、スキル見せろ。ついでに装備も。
スキル一覧
・暗器スキル
・鎌スキル
・狙撃銃スキル
・闇魔法スキル
・暗殺スキル
・跳躍スキル
・隠形スキル
・格闘スキル
・疾走スキル
・威圧スキル
武器
・魔鎌クレッセントムーン
・漆黒双刃ヤミヨノキバ
・破龍砲月穿ちセレーネ
防具
・白銀魔角(固定)
・白銀魔織装甲上衣(固定)
・白銀魔革装甲下衣(固定)
・白銀魔鋼装甲長靴(固定)
・白銀魔鱗装甲籠手(固定)
アクセサリー
・蒼緋の魔眼
・古老の魔翼
魔王に間違えられる理由しか見つからねぇ!どうなってんだこれ?
〔アハ、チート乙〕
(乙じゃないから‼)
〔とりあえず殺して認めさせましょう。〕
(殺さないであげて‼イメージダウンも甚だしいよ‼)
「何ぼさっと突っ立ってんだよ‼」
「お前が縛ってるからだよ‼てか、勇者名のんだったら正々堂々勝負しろ。」
「なら動くなよ。」
言うが早いか俺を縛っていた縄と奴の剣の先っぽが落ちた。
「なっ!?貴様ぁ‼」
〔やっぱり殺そうとしてましたね。〕
(女神様のお陰で助かったよ。)
女神様いわく、
〔白銀魔装甲シリーズはランクSSSのレア装備であり、転生前に行ったラッキールーレットの中でも1000万分の1の確率でしか手に入らない一等賞の白魔装甲にこれまた転生前に戦闘訓練と称して行った伝説生物の討伐で10分の1の確率で出てくる…〕
(つまり強い+運が良い人が持てる装備ってことだな。)
〔どうして要約しちゃうの~?〕
「消えろ‼死ね‼いなくなれ‼」
どうしてかって?目の前の冒険者らしき人物の剣閃が迫ってきてるからだよ。しかもさっき折れた両手剣じゃなくて両刃の片手剣だし、少なくとも秒間3回のペースで斬ってくるしね。
「ちっ‼葬る‼」
どこの暗殺集団の筆頭アサシンですか。
〔随分とアニメに詳しいですね。〕
(現世アニオタが異世界トリップして活躍しようと足掻いている貴重な姿ですね。)
〔なるほど写真に遺しておきたいですね。〕
(死ぬ訳じゃないからな。)
〔え?殺さないんですか?〕
(どこの殺人鬼だよ。)
「ボーッとしてんじゃねぇ‼」
全部避けられるから避けてるだけなんだけど。
「くそっ‼当たんねぇ‼どうなってんだよ‼」
「宝くじは買わないと当たりませんよ?」
「ふざけてんじゃ、ねぇ‼」
あら、場を和ませるの失敗。残念無念。
〔しかし、この程度で息切れしてるとは…人選間違えましたかね?〕
(初対面の人を勘で殺そうとする人を選んでしまう女神様のお花畑な頭の中を褒めたいですよ…)
〔まぁ!ありがとうございます。〕
ホントにお花畑だな。
「なんでだっ‼こいつは俺にしか倒せないのに‼」
「いや、だから、俺も転生者で…」
「嘘を吐くな‼俺の手で貴様にとどめをさす‼」
〔中二、自意識過剰、英雄気取り、三拍子揃った雑魚ですね。〕
(こっちも段々イラついてきたから反撃したいんだけど。)
〔鎌で両断、双剣で斬る、銃で撃つ、どれが良いですか?〕
(全部却下。相手がミンチになって可哀想になってるとこしか想像できない。)
〔そういえば闇魔法ありませんでした?〕
(どうやって魔法を使えばいいか分からないんだよ‼)
〔闇魔法は呪文がないので好き勝手に使える唯一の魔法で入手方法は…〕
(割愛で、とにかく闇魔法使うか。)
〔がづあいじないでぇぇぇぇっ‼〕
感情豊かな神様だこと。
〔あたしは女神だ~‼〕
(細けぇ‼そういや呪文無いって言ってましたけど自分で付けるのってありですか?)
〔もちのろんでございます。〕
(立ち直り早っ‼)
「追い詰めたぞ‼」
いや、お前に隙が有りすぎだぞ。下手すりゃ抜かれて逃げられるぞ。そうだな、まずは威嚇射撃として小さいボールを打ち出す感じで一発。名前は…
<ダークスプレッド>
「危ねっ‼抵抗してんじゃねぇ‼」
殺されかけて抵抗しないのはマゾの極みだぞ。んじゃ次は相手を縛るイメージで…
<ナイトメアバインド>
「その程度で俺を縛れると思ったか?」
「お、流石だ。腐っても冒険者だな。」
「俺は腐ってねぇぞ‼」
慣用句だバカ野郎。もっと勉強してこい。いや、高校生で死んで転生した俺が言える立場じゃないけどさ。
「今度はこっちから行くぜ。」
「バッチこーい。」
<千石徹し‼>
言うが早いか天高く跳び逆さ落としで落ちてきた。目測だけど200は軽く越えてるね。
「アギャベ‼」
でも追尾性能ないから避けられる。避けられたらただの自殺志願者にしか見えないんだよね。
「ほ、ほのひゃろー‼」
「あの高さから落ちて死なないとか、お前人間か?キモッ!?」
「ふるへ~‼はまひぇ‼」
やべぇ、何言ってるか全然わかんねぇ。アーユースピークジャパニーズ?
「くほっ、仲間を殺ひゃれて黙っひぇられるひゃ‼」
言ってることは格好いい筈なんだが鼻潰れてるからむしろ間抜けだ。
<ふひひひ>
急に笑いだしやがった。気色悪ぃ…なんだこ、あぶねぇ‼技名だったのか?とにかく斬撃が飛んできた。
「ほうだ‼ほへのふひひひはふごいはろ‼」
「日本語ですかそれ?デーブ・ス◯クターの方が流暢ですよ。」
それにライフゲージ見る限りあんたそろそろ死にまっせ。
<はいほひーひんふ>
なんということでしょう。はいほひーひんふ?によってひしゃげた鼻が元通りに。
「貴様黙ってりゃ言いたいこと言いやがって‼」
性格まで元通り。
「××××が‼××××取り出して××××××してやる‼」
放送禁止用語多いね。言葉使いは気を付けよう。
〔泉から水が湧き出るように罵詈雑言が出てきますね。〕
(ホントにどんな生活してたんだろ。)
〔こんなやつは引きニートと相場が決まっています。〕
(いつどこの相場の話ですか!?)
〔……小さいことは気にするなそれワ〕
(小さくないし気になるから‼)
<クロスラッシュ‼>
危なっ!
「話途中に横槍入れんな‼」
「これは槍じゃない‼片手剣だ‼」
だーかーらー慣用句だっつってんだろが‼
〔ひとつ思ったのですがアビリティ使わないのですか?〕
(あるなら隠さずに言ってくれ‼)
〔いえ、決して隠そうとしていたわけでは…〕
(んじゃ何?)
〔伝えようとしていたのですが忘れていて。テヘッ♪〕
(より悪いから‼テヘッ♪で済むか!?)
〔それより使えそうなものをピックアップしてみました。〕
(さすが、気が利く。)
・正当防衛…殺さんばかりの勢いで殴る。
・〆る…長いもので〆る。あわよくば…
・菜切り包丁さん召喚…植物を微塵切れ♪
(だと思ったよ‼あわよくばどうなるの!?)
〔即…〕
(もういい、結構です。)
<二連斬‼>
!?《正当防衛》
あ、使っちゃった。腹に顔に首にアソコに拳が直撃する。目は瞑っているのに感触でわかってしまう。くぐもった唸り声が聞こえる。そして多分フィニッシュ‼……顎に直撃したかもしれないな。やべぇ、フルコンボだドン。
「くそっ…ここまで……か…」
最後までそのノリなんだな。恥ずかしくないのか?俺だったら恥ずかしさのあまり身体に鎖を二重三重に巻き付けた上で日本海溝付近に逆さ飛び込みしそうだ。
〔こんな恥ずかしい人を転生者に選んでしまうなんて…〕
(女神様も大変ですね。)
<ソーンバインド‼>
「あだだだだっ!」
茨!?どうなってんだこれ!?
「ギャハハハハハ‼騙されたか?復活したぜ‼」
〔あっ、それとこの人には転生特典として気力を使って復活する<最後の希望>を授けたので気を付けて…〕
(そういうことは先に言ってくれ‼)
「残念だったな、魔王。正義は必ず勝つんだよ。」
だから、俺は魔王じゃない‼
「これで終わりだ‼<長蔦鞭撃‼>」
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ‼どうする。目測直径10cm、長さは20m。先端は球体に沢山の棘…モーニングスターって言った方がいいな。かすっただけで肉と骨を抉りとられて死ぬ。
こりゃ死ぬしかないか?
大上段から降ってくる無数の鞭撃の嵐。避けること無く佇む姿が目に入った。数瞬後に目に入ってきたのはもうもうと立ち込める土煙。
「…やった、やったぞ‼魔王は俺が殺した‼」
「と、確かな手応えを感じていた。ってところかな?」
「!?なっ、お前、どうやって…」
「スキル《菜切り包丁さん召喚》だよ。」
「菜切り!?包丁!?さん?…う、嘘だ‼包丁程度で鋼より固い俺の長蔦鞭撃が…」
「普通は切れるはずもない。じゃあこのスキルのフレーバーテキスト見てみな。」
「…………植物を微塵切れ?でもなんで…」
「今自分で言っただろ?植物を微塵切れって。」
「!?まさか…」
「そういうことだ。」
つまり切るものを限定する代わりどんなに固いものでも切れるという菜切りであって菜切りでない不思議な包丁なのだ。
「……だ、…そだ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ‼俺が‼負けるはずない‼」
〔自意識過剰がリミットブレイクしてますね。〕
(冷静に言ってる場合じゃないと思うんだが。)
「糞がっ‼死ねぇ‼」
一度死んでるからね?あと、殺されたくないから動けないようにしたいよな。んじゃ、今度は縛るんじゃなくて地面に縫い付ける感じで一発。
<パレッシャンスィーナー>
「なんだこりゃ!?おいてめぇ、これ外しやがれ。」
「絶対嫌ですね。殺されたくないですし。」
「なんで倒せないんだよ‼あと少しだったのに‼」
あと少しっつっても俺の体力ゲージ0.001%しか減ってないんだがな。
「女神様、すいません。魔王を倒せませんでした。」
独り言か?あと、俺は違うから。
〔はひぇ!?えっ?あっ!はい?〕
(どうかしたんですか?)
〔いや、彼も《天啓》持ちだったようでして…〕
(だったら早く説明してくださいよ‼)
「女神様?誰と話しているのですか?」
目の前のいかにも悪そうな人間が仲間で、しかも女神様の話し相手だと知ったらどんな反応するのか気になるところではあるな。
〔あなたの目の前の転生冒険者とですが…〕
「はぁぁぁぁぁぁぁ!?………」
〔あれ?どうしたんでしょうか?〕
大胆告白のせいで口から蟹のように泡を吹き、白眼を剥きながら痙攣して目の前に転がってるって知ったら女神様驚くだろうな。
「にしても、近くに村とかないのか?」
「ありますよ。50km先ですが。」
「復活早っ‼一体何がどうなってんだよ‼あと何気に遠いな‼」
「スキルの《心機一転》のお陰です。それと、迷惑をおかけしてすいませんでした。僕、西園寺 春翔と言います。こっちではウェスター・スプリングを名乗っています。」
案外普通に行儀良かった。
「ちなみに職業は探求者です。よろしくお願いします。あと二重人格なのでご注意下さい。」
自覚症状ありなのね。
「さっき名乗ったと思うが蓬田和都だ。職業は魔王勇者だ。」
「やはり貴様が魔王か‼」
「やっぱりこうなるのかよ!めんどくさい!」
こりゃ先が思いやられる……………
バレンタインは~傷だらけ♪