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アルタナ外伝  ―朱に染まる―  作者: 夢見無終(ムッシュ)
朱に染まる――。
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12.

 寂れた宿場町………その中で唯一の酒場の裏に多数の馬が繋いであるのを確認し、アケミは自分の馬から降りた。

「ようやくか…」

 両手で長刀を持ち上げ、伸びをする。

 グロニアを発って、途中母の実家へ寄り道し、六日―――目的地には着いた。しかし第四大隊の本隊ではバラリウス中隊長の行方がわからないという。

 行方がわからない? 首を捻ってしまうのも無理はない。話によると、手勢を連れて第四大隊管轄地域を、見回りと称して彷徨っているらしい。大隊は地方でのトラブル解決に協力するのも任務の内だから行動そのものは問題ないが、基本的には受動的に動くもので、率先してやる任務ではない。国境の防衛が第一であるし、それに……

 開けっ放しのドアから中に入ると、筋骨逞しい男たちで溢れていた。皆、鍛え方が違う。並の戦士でないことはすぐにわかる。その中でも一際大柄な男に目が止まった―――いや、目が合った。こうして間近で見ると、熊に喩えられるベルマンに勝るとも劣らない巨躯だ。

「むぅ? 貴様は確か………おお、忘れられぬその長い髪! 猫のようなしなやかな体躯! 男を惑わす切れ長の瞳! 貴様は………誰だったかな?」

「シロモリです、隊長」

「わかっている…からかっただけだ。フハハハハ…!」

「………」

 アケミは酔って高笑いする中隊長の前に立つ。そして長刀の鞘で床をドンと突くが、バラリウスは眉一つ動かさなかった。

「バラリウス=ゲンベルト……大隊長から一目置かれ、下からは信頼されるが、同じ中隊長からはすこぶる評判が悪い。それはそうだろう、こうして真昼間から飲んでるなんて、前線の砦に詰めてる者たちからすれば羨ましいじゃ済まない話だ。あたしでも一発と言わず殴りつけているところだ」

「ふむ…。シロモリの娘よ。今、この場がどう見える?」

「酒を飲んで、楽しくやってるだけじゃないのか?」

「そのとおり。なるべくしてなっている。極めて正常である……フハハハ!」

「……酔っているのか知らんが、あまりふざけた態度をとるなよ」

 ほんの少し殺気を滲ませる……バラリウスの表情が変わった。

「そう急くな。貴様の任務は我の監査か? それならばやり方が間違っているだろう。そもそもこうして面と向かって会話するのは初めてのはず、以前は遠目に見ただけであったからな。他人からの評価だけで判別するのはいささか早計ではないか? まずは為人を知るのが肝要―――ゆえに貴様も飲むがよい。フアハハ!」

「付き合いきれんな…」

「んん? もしや酒の味を知らぬか? その様子では男も知るまいか。女は知っていると聞いていたが、ひょっとして偏食か」

「……なんだとこの野郎。さっきから舐めた態度とってくれるが、じゃあ貴様は語れるほど女を知っているというのか!?」

 するとバラリウスはピタリと動きを止め――――がくりと頭を垂れた。そして周りの部下が笑い出す。何が起きたのかわからない…。

「貴様の……貴様の言うとおりよ。我はモテん……なぜかモテん……これほど雄々しく、たくましくあるというのにだ! 抱いた女は数え切れんが、なぜかプロポーズは尽く上手くいかぬ! シロモリよ……貴様の女はどのような女だ?」

「あたしを叱ってくれて、将来を心配してくれて、燃え尽きるまで愛し合ってくれる最高の人だ」

 おおお――――ビシリと言い切ると周りからなぜか賞賛の声が上がる。

「ぬぅ……羨ましいことよ。貴様がこのように遠出しても、変わらず出迎えてくれるのであろう?」

「いや? もっといい女になっているに決まっている」

 おおおー!

 …拍手まで起こり始めたぞ‥…心地いいが。

「何故、女の貴様がそうなのだ! 納得できん…!」

「知るか。強いて言えば、女を軽く見る男を女は信用しない。他人の女であれ、女を見下す男は最低だ。それが平気な女はろくな奴じゃない」

「からかったことを怒っているのか? それはいささか狭量ではないのか…?」

「初対面だぞ。気配りできない奴は論外だ」

「なんと…! 貴様が男であれば弟子入りしているところだったがな…」

 そうしてまた酒を煽り出す……そして部下たちに慰められる。何なんだコイツは…?

 呆気にとられていると、外から男が駆け込んでくる。戦士ではない。

「バラリウスさん、南の村で傭兵が暴れてるって…」

「またか。シロモリに女の悦ばせ方を伝授してもらおうと思ったが、やむを得まい。よおし、出るぞ!」

 バラリウスの号令で部下たちはガタガタと席を立つ。総勢二十名程の男たちがいなくなると店はガランと寂しくなる……そのテーブルに、バラリウスは袋を置いた。

「オヤジ、今日はここに泊まる。終わったら飲み直すゆえ、酒を仕入れておいてくれ。上手いヤツをな」

 硬貨が入っているであろう袋はかなりの重量だ。二十名の飲み代、宿泊費込みでも多すぎるんじゃないのか…?

「シロモリよ、貴様はどうする」

「同行する」

「そうではない、今晩はどこに泊まるのだ? アテはあるのか? なんなら我の部屋でもよいが」

「それでも構わんぞ。貴様が死ねば空き部屋だからな」

「フハハハハ!!」

 バラリウスによってもう一部屋、勝手に予約された。







 ものっすごい短いですが更新です。自分史上最短かも。ひとまとめにするにはちょっと長くなり、あと個人的に今ちょっとパワーが足りないというか…。なんか筆が進まない感じです。ネタに詰まってるとかじゃないんですが。昨日まで忙しかった反動がきているのかもしれません……今日は朝寝昼寝しましたが、晩もしっかり寝ようかと思います(笑)。


 あと、「女王への階」以来の登場のバラリウスですが「キャラ違うくね?」と思われるかもしれません。間違いではないので、今後の展開をお待ちください(・∀・)

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