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アルタナ外伝  ―朱に染まる―  作者: 夢見無終(ムッシュ)
シロモリ、継承
26/124

26.


 第二大隊の担当する防衛地点、その砦にミリムは辿りついた。一人出遅れたが、道中は他の隊から出向してきた輸送部隊と同行した。ミリムの初任務の時と同じだ。

 任地は東側のエリア……依然緊張状態が続くジャファルスと最も接する地点である。すでに交戦経験のあるミリムは他の新人以上に怖れと自信がある。とは言っても、怖れ8、自信2というところだが……。東側エリア最大の砦であるダラサダン砦に赴任することが救いでもある。場所によっては山中で、総勢百人に満たない砦もある。そういう所では大抵2~3人で哨戒任務に当たると言うから、野党相手でも襲われればひとたまりもない。囮任務の時に女四人だったが、今思えば相当怖いことをしていた…。他の三人が強かったからこそ無事で済んだ。

 砦に到着すると、その三人の内の一人―――クリスチーナの姿が見えた。

「あれ…?」

 隣には馬を引くジラーがいる…。ジラーは第三大隊の所属であり、今も別のエリアで防衛任務中のはずだ。

 クリスチーナがミリムの姿に気付き、二人は近づいてくる。

「来たのね。傷は良くなったのかしら。無理をしないでね」

「ども、ご心配をおかけしました…」

「久しぶりだなガキ。ビビって気絶したくせに、まだ兵士続けられんのかぁ?」

「………大丈夫ッス」

 さすがにムカっとしたミリムだが、対照的にジラーはえらく上機嫌だ。

「さっさと戻りなさい。任務中でしょ」

「へいへい。じゃあまたな」

 クリスチーナに追い立てられるようにしてジラーは馬を走らせる。さすがに速い……。

「あの……どうしてあの人がここにいるんスか?」

「伝令よ。馬に乗るのだけは上手いから。本人してみればサボる口実にちょうどいいのよ」

「はあ…」



 

 バーで微妙な空気のまま別れたものの、バレーナの行動は早かった。ロナと話したことも大きかったのかもしれない。バレーナ親衛隊(仮)の主な務めが直接の護衛というから、おそらくバレーナはゴリゴリの武闘派を用意していると思っていただろう。しかしロナは剣ではなくペンを使う、いわば文官タイプだ。ロジカルと大胆さを併せ持つ同世代の女商人はたちまちバレーナの興味を引いたらしく、すぐさま2人で相談し、部隊を持つための根拠となる法律の作成に取り掛かったという。こっちは評議院の許可さえ下りればいいと考えていたから、二人の動きには度肝を抜かれた。

 ともあれ、ようやく計画は本格的に動き出した。あとは予めロナがマークしていた者たちをスカウトしていけばいい。初めは貴族出身の候補者たちだったため、側仕えの誘いはかなり乗り気で聞いてくれた。通常なら貴族の子女のすることではないが、将来の女王と近づけるチャンスであるし、経歴にも箔がつく―――つまりウェルバーと似たような考え方の人間が大方だった。ただ、これは花嫁修業ではない。必要なのはバレーナとともに戦える人間……つまり、いざというときは剣を取り、バレーナの盾になることも辞さない覚悟が必要になる―――そのように告げると、自ずと志願者は絞られていった。その上で特技と剣の腕を見定めていく。

 正直なところ……剣に関してはまあ並、軍属の女性兵士と比べて平均以下の実力の者がほとんどだったが、今後鍛えていけばいいだろう。ロナとも話したが、活動の場はほとんど城中になる。まずは城で貴族や宦官と対応できる振る舞いと教養が必要になる。その場合、ある程度上等の家柄であれば、少女でも全く相手にされないということはないだろうし、バレーナとしても一定の勢力を取り込んだことになるという。政治的には正論だろうが、それは二の次でなければならない。アケミが求めるのは、バレーナにとって気の置けない仲となる存在である。利害の一致という観点で繋がっていてはバレーナが気を遣うだけだ。だからこそ慎重に、厳しく選定した。

 幸い……というか、やはりロナの目がよかったのだろう。二カ月足らずで有望な人材が一定数確保できた。さらに戦闘に特化した人間が5~6人欲しいが、それはシロモリの任務の中で見つければよい。それよりも部隊としての体を成す方が先である。肝心の法案の方はどうやら上手くいきそうであり、制定されるのも時間の問題かと思われた時――――突然、黒い影が忍び寄っていることに、まだ気付いていなかった。


 そう―――悪夢が、始まろうとしていることに。







 変な時間にめっさ短いですが更新します。

 前回の終わりに繋げるべきでしたね。切るとこ間違えました…。


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