13.
部隊の随行を皮切りに、アケミは軍事への参加と挨拶回りを繰り返した。父・ガンジョウと繋がりのあった人物や王侯貴族を始めとする有力者たちを洩らさず、徹底的に回る。その間に何らかのポイントを稼ぎ、名声を上げていく。やや急過ぎる行動にいい顔をしない者も多いだろうが、しかし今でなければできない。今なら「所詮小娘のやること」の一言で済ませられる。それを計算づくでやっていると思われれば、なお結構――――。
「…上手く立ち回っているようだな」
夜、道場で正座して向かい合った親父殿は、嘆息を漏らした。
「お褒めいただき、ありがとうございます」
目を合わさず、しれっと答えて頭を下げる。声のトーンで親父殿が渋い顔をしているのはわかる。
「剣の才能は認める。人の上に立つ資質も認める。しかしここまで無理を押し通せる娘とは夢にも思わなんだ」
「無理、とは思っていません。若い女だから悪目立ちしているだけでしょう」
「その『女』を武器にしているとか」
「………」
…今度は目を逸らした。
「全く、どこで覚えたのだ。さすがに看過できん」
「誤解だ親父殿…! その……なんかそんな目で見られたときに、ちょっと便乗して無理を通してもらったりしてるだけで、もちろん肌を曝したり触らせたりなんてことは―――」
「無理を通しているではないか、このバカ娘が」
「う……」
そこは申し開きできない…。
「…だけど、あたしはそういうのも込みでいいと思ってる。男であれば強さを求められるだろう。女が美しさを求められるのも然りだ。バレーナを支えるなら……隣に立つのなら、必要だ」
そう答えると、親父殿は小さく唸った。
「…何とも言えん。そういうのは、ワシからは上手く助言できん。ただ、心配させるな。親からすれば……奔放な貴様でも、自慢の娘だ」
「……は?」
「何でもない。二度は言わん」
珍しく狼狽している親父殿。まさか、「娘」として褒められるとは思わなかった…。
しばらくお互いに無言の時間が流れ……思い切って切り出した。
「なあ、親父殿」
「なんだ」
「あたしが深いスリットの入ったドレス着たら似合うかな」
「なっ…ばかものが」
わざとらしく咳き込む親父殿。意外と悪くない…。
かなり短いですが、キリが悪いのでこれで上げます。
代わりと言ってはなんですが、試しに別の作品を上げてみます。定期的に続きを出すものではありませんが、感想などありましたら…。