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アンダーグラウンド  作者: お肉大好き
2/2

イム・チャックの災難

「・・・はあーーーーーーあ・・・・・・十三時か・・・思ったよりも早く起きたな・・・」


青年は大きな欠伸とともに目覚める。平日の十三時にだ。今日も平凡な一日が始まる。



寝室を出る。



階段を下りる。



リビングに入る。



テーブルの上に母が用意した朝食がある。トースト二枚、サラダ、目玉焼き。



冷蔵庫を開ける。



パックの牛乳を取り出す。



椅子に座る。



ラップを取る。



フォークを持ってきてないことに気づく。



面倒くさいから手でミニトマトを掴んで口に入れる。



パックの牛乳をそのまま口に含む。



「・・・うぇ」




トマトを飲み込んでから牛乳だったなと後悔する。




「・・・ふぅーー・・・」



青年は大きくため息をつく。



「・・・アイス食べたいな・・・」



青年は立ち上がりリビングを出る。




ジャケットを羽織る。



靴を履き家を出る。




思ったよりも日が出てる。眩しい。




歩道を歩く。スーパーまでは歩いて三分程度。




公園の前に着く。スーパーは公園の先だ。どうしようか、回っていくか、そのまま公園の中を突っ込むか。




「・・・子供いんなぁ・・・ま、いっか」



青年はそのまま公園の中に入って行く。




「・・・あ!すいませーーーーんとってくださーーーい」



あと少しで公園を通りきれる。そんな時に聞こえた声だった。



「ん?」



男は振り返る。



「すいませーーーんそこのボールとってもらってもいいですかーーーー?」




五歳くらいの小さな少年だ。キャップのツバを反対にしてかぶってる。左手には野球のグローブ。




「・・・ボール?・・・ん?・・・どこだ?」




「そこです!そこの・・・そこ!」



「・・・そこって言われても・・・」



分かるなら自分で取りに来い・・・ったく。




「あー、これね」



なんてことはない。草むらに隠れているだけで足元にあった。小さな野球ボール。




「ヘイ!パス」




「・・・パス?」




少年は両手を広げる。



「・・・そこに投げてこいってか・・・いくぞーー・・・ほい!」




「おい!ユーマ!まだかよーーー」



少年の友達だろう。



「待ってーー今・・・あっ・・・!」




「お、おい!」



ゴッ!鈍い音が聞こえた。少年の頭に青年の投げたボールがぶつかった。




「あっ・・・振り返るから・・・大丈夫か」



少年のもとに駆け寄る。



「・・・ごめん・・・大丈夫か?」



「ユーマ!」



友達も駆け寄ってくる。



「ユーマ!大丈夫?ユーマ!」




「ユーマ君ってゆうの?」



「うん!・・・ユーマ!・・・ユーマ!」




「ごめん・・・投げてっていうから・・・」



ユーマは倒れたまま動かない。




「ユ・・・ユーマ君・・・ごめんね・・・ユーマ君!」




面倒くさいことになった。何度呼びかけてもユーマは起きない。



「・・・もう・・・ユーマ君・・・ほら・・・起き・・・って!」



青年がユーマを無理やり起こした直後だった。




「うわぁぁぁぁぁぁぁああああん!!!いたーーーーーい!!!いたいよーーーーーー!」



公園中、いや、そこら一帯に広がる声でユーマが泣きだしたのだ。




「ちょ!・・・もう・・・嘘だろ・・・ごめんごめん・・・ごめんって・・・もうー・・・」





「いったーーーーーーーーい!!!!うわあああああああああん!!!!!」




通行人までがこちらに注目する。明らかに変な目で見られてる。最悪だ。




「あああああああん!!!!いたーーーーーーーい!!!」



「ごめん・・・ごめんって・・・」



「あっユーマのおでこ赤くなってる!」



ユーマの額の一部が赤く腫れあがっていた。




「うん?・・・どれ・・・ああ・・・なってはいるけど・・・こんぐらいで・・・」




「うわあああああああああん!!!!!」



ユーマは泣き止む気配がない。青年もユーマの友達も、何とかなだめようとはするが・・・




「・・・お兄ちゃん・・・もう・・・いいよ」




諦めたように友達が呟く。




「え?」



「もういいって」



「いや、でも・・・」




「ユーマこうなったら中々泣き止まない。だから大丈夫!」





「・・・いや・・・いいのか・・・・・・」




「うん!いいよ行って!どこかに行こうとしてたんでしょ?」




「・・・まあ・・・そうだけど・・・いいの?」




「うん!」




「・・・じゃあ・・・」




青年はその場から離れる。とてもアイスなんか買う気分じゃない。運が悪かった。今日は帰ろう。青年は急ぐようにして来た道を帰る。



「あれ?こっちじゃないの?」



「・・・う・・・うん!・・・こっちなの・・・」



たいした用でもない。ユーマの声は鳴りやまないが、そそくさと公園を出る。




「・・・はー・・・何なんだあいつ・・・」




そんなことをブツブツと言いながら家の前に着く。



「ん?」




家の前に見慣れない車が止まっている。母さんか?でもまだ仕事中だろ。青年が頭にはてなを浮かべながらその車の前に足を運ぼうとした時だった。車のドアがいきなり開く。中からスーツ姿の男が一人。かなりがたいがいい。男は満面の笑みでこちらを見る。



「お待ちしておりました!」



よくその場に立つと深々と頭を下げる。やけにハキハキと喋る男だ。



「え?」



「お待ちしておりました!!」




男は聞こえなかったと思ったのだろう。声量を更に上げる。



「あの・・・母は・・・今いませんけど・・・」




「いえ!あなたに!」




満面の笑みだ。




「・・・僕っすか?え?」




俺に何の用だ?俺を訪ねる人間なんているのか?




「どうも!ポイント監視委員会のものです!」




「は?」




「・・・イム・チャック様でよろしいですよね?」




「・・・はい」




「ポイントが規定をオーバーしました!残念ですが、本部までご同行願います!」





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