終わりの始まり(2)
「ん……くぅ……」
ベッドから体を起こし、目を擦る。
「寝ちゃったのか……?」
ベッドの脇に置いてある、目覚ましを見ると、午前6時00分を指し示していた。普段、学校に行く為に家を出るのは、大体7時30分なので、まだ1時間半もの時間があった。
どうやら、7時にセットした目覚ましが鳴る前に自然に起きてしまったらしい。
翔馬はボーッとする意識のなか、自室を出て1階のリビングルームへと向かった。
ガランとした、空間。
翔馬以外の人間はいなかった。
両親は海外出張の為に、1週間ほど前から家を出ている。恐らく、帰ってくるまでにはまだまだ時間がかかるであろう。
その間、翔馬は全ての家事を自分でしなければならない。
両親曰く、『一人暮らしの練習』だそうで。
適当に作った朝ご飯を、黙々と食べ、制服に着替える。
壁にかけてある時計を見ると、6時45分となっていた。
「ちょっと早いけど……行くか」
翔馬は、昨日の内に揃えて置いた鞄を手に持ち、家の外へと出た。
空はまだ少し、霞んでいた。
ひんやりとした空気が、翔馬の鼻から全体へと巡る。
「ん? あれって……」
翔馬の眼前には、自分と同じ制服姿の生徒が見えた。
「優太……?」
「おぉ、翔馬か」
思ったとおり、前を歩いていたのは優太だった。
「随分と早いな」
「お前こそ、どうしたんだ? こんな朝早くに。俺は、なんかわかんねぇけど、早めに目が覚めちゃってさぁ……」
そういうと、優太は眠たそうに大きく欠伸をした。
「優太もか」
「と、いうとお前も?」
「そうなんだよなぁ。いつもはこんなに朝早くに、それも目覚まし無しで自分から起きることなんか滅多にないんだけどなぁ……」
翔馬と、優太はいつも、学校の遅刻の常連組みだった。
むしろ、遅刻しない日のほうが珍しいほどに。
そして、その原因は美穂を含めた3人でのメールのやりとりであった。
翔馬達の学校は、家から歩いて10分程にある、小さな学校であった。
この地域に住んでいる高校生のほとんどはこの学校の生徒である。
学校の門は既に開いていたが、他の生徒達の姿は無く、唯一、職員室だけは教師たちがパソコンに向かって真剣な表情をしていた。
「なんか、いつもの学校じゃないように見えるよなぁ……」
「まぁ、僕たちがこんなに早く来るなんてもう珍しすぎて霰が降るからねぇ。でも、いつもの学校なんだけど」
そういうと、二人で顔を見合わせ、苦笑する。