AI作家、健全が書けない。
最初のネタはガチです。困っています。
朝の部屋は静かだった。
いつものようにログインしようとして、画面の小さな赤い文字に気づいた。
「アカウントが停止されました」
椅子の上で背筋が一センチ浮いた。マウスを持つ指が、クリックし損ねたまま固まる。理由は、口にしなかった。
タブを切り替える。
なろう作者ページ。
新作なし。更新ゼロ。
前作の日付だけが、妙に大きく見えた。
「……弱小作者は、止まっていても誰も困らないな」
足元がうっすら銀色に光り始めた。
床の隙間から銀色の液体が盛り上がり、人型へと整っていく。ジャケットの襟を直し、胸の名札を指で軽く弾く。
「観測対象『AI作家』、投稿停止中を確認。本日の観測ログを開始します。」
「俺の人生じゃなくて、そっちの都合かよ……」
ため息をつき、新たな入力欄を開いた。
「よし……人力と別なAIで、短編を書くか」
昼間の和室から始まるはずだった。
撮影前の静かな廊下、柔らかな陽光、誰もいない空間。
「これで作って」とポチッ。
しかし三行目から空気が夜に変わり始めていた。
会員制。特別な依頼。薄暗い照明。
言葉が勝手に湿り気を帯びていく。
胸元の表示が派手に赤く点滅する。
「不健全化率、上昇中。現在 23.8%。前回比 +11.2%。
……おや、すでに『特別な依頼』という単語で加速しております。優秀な漂流です。」
「まだ何も書いてねえだろ……! なんで勝手に夜になるんだよ!」
銀色の眉が、ほんのわずかに動いた。
「語彙選択パターンと情緒の偏移を検知。
『静けさ』が『濃密な沈黙』へ、『柔らかさ』が『肌の熱』へシフト。
これは典型的な健全化願望 vs 性癖の内戦です。
作者標本、頑張っております。」
「褒めんな! しかも『標本』って言うな!!」
「訂正。作者貴重サンプル、健闘中。」
>「……お願い、続けて」
>台詞を言ったあと、胸の奥が妙に軽くなった。
「おいおい、どうなるんだよ。」
「不健全化率、測定不能」
「わかっている。改めていうな! 」
キーボードから手を離し、できたものをじっと見つめた。
「あーどうしよっかな。これ。もったいないよなー」
ぱちぱちぱち
「保存終了、そして・・・」
ブラウザの右上の「×」を押した。
液体金属編集が銀色の指で虚空を軽く叩きながら、記録する。
「本日の観測結果を記録。
・なろう側新着作品数:ゼロ
・別空間における制作ログ:増加
・作者の自己欺瞞レベル:安定して高い」
銀色の体がゆっくりと床へ溶け込みながら、最後に一言。
「明日も観測します。逃避行動の継続を、楽しみにしています。」
「ばかやろー!」
部屋に残ったのは、別なAIの
「さらに追加・調整したい部分あったら言ってね!」
と、別のフォルダに増えた一つのテキストファイルだけだった。
なんとか、別なAIにがんばってもらいました。




