823/1037
第十八話 わいの悲劇 一
ここは小田原の宿屋、日も暮れてる頃
「こら! 早く出て来い! おまえはすでに取り囲まれてるぞ!」
盗みに失敗した一人の男が、宿屋に閉じこもっているのだ。
そして、その男が二階の戸を開け
「そこをどけ! さもないとこの女の命はないぞ!」
見ると、一人のおなごを脇に抱え、その首筋に小刀を突きつけている。
それを見た一人の役人が
「如何いたします?」
部下にそう言われた同心だったが
「どうもこうも……手が出せないではないか!」
*エラリー・クイーン「Yの悲劇」への、ほんの1%のオマージュ