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第十五話 西班牙(スペイン)島の謎 一
いつもの橋のたもとに、いつもの――お二人さんの姿がない。
それもそのはず――
「まま、姐さん。クイッと!」
「旦那。まだ陽が高いうちから、そんなに飲めませんって」
外海納涼船、その名も浦島丸の中で、差しつ差されつのお二人さん。
いつも陽気なのだが、それでもここまではしゃぐ破近など見た事がない。
「んもう、夢見たいやわ! なな、姐さん。ここんとこつねって!」
そう言いながら、頬を突き出す助平――これでも同心である。
*エラリー・クイーン「スペイン岬の謎」への、ほんの1%のオマージュ