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第五話 京の都からやってきたスパイ 一
朝っぱらから、相も変わらず橋のたもとで
「なな、姐さん。メッチャ旨い店見つけてな。ここのカツオのたたきが、もうホンマに絶品なんや! やっぱマグロよりカツオやね! そやから今宵は……」
「おやまあ、そら残念なことで。何たって、あたしゃマグロ女ですから……じゃね!」
そう言い残し、さっさと歩いていった冷奴姐さん。
「い、いや、実はマグロも大好物で……って、もうおらんがな」
この時、背後から
「ね、ちょっとだけいい?」
*ル・カレ「寒い国からやってきたスパイ」への、ほんの1%のオマージュ