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第十四話 酒樽 一
相変わらずの真夏日の中、朝一より番屋に姿を現した人物。
破近、その顔を見るなり
「何しに来たんや? 自宅謹慎中やろが!」
これに相手が
「そ、そんな言いかたって酷すぎない?」
無論ここにいてはいけないはずの――菖蒲殿だ。
「木俣はんに、ちくるで!」
さすがに慌てる彼氏
「わ、私宛ての贈物があったって聞いたんで、受け取りに来ただけじゃない!」
「ん? あ、それかいな」
そう言う破近の視線の先には、一つの酒樽が置かれている。
*F・W・クロフツ「樽」への、ほんの1%のオマージュ




