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三十七

 その喜助の頭に残っているのは、女中が放ったこの言葉だ。


――旦那様ってスルメが好物で、いつも齧っておられました



「ここか」

 看板に目をやった喜助


「蕾、早速入ろう」



「わあ、磯の香りがしますう!」


 はたしてそこには様々な魚貝たちに混じって、海苔やらわかめやら――それと


「こいつの事だな。こりゃ、確かに旨そうだ」

 そう、噂のスルメである。


 この時


「いらっしゃいまし」


 現れたお光、確かに〝光り物〟のように、その顔が青い。


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