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四十四
「拙者、朝太郎一家の猿公と申す、元忍びの者です。本来ならば、こうやって表に出てくる立場ではございませんが、一言だけ申し上げたく、あつかましくもこの場をお借りした次第です。一部の方が、どうやら拙者の名前を誤解されていますようで……〝猿公〟、このように書きまして〝えてこう〟と読みます。そこの貴方、決して〝さるこう〟ではございませぬ。以後、宜しくお願いいたします。では、本編をお読みくださいませ」
「そうか。全ては、猿公の仕業やったんや!」
「元忍びだから、こうやってここまでこれたんだ」
破近と喜助が、立て続けにほざいてくるのを
「だ、旦那、それに喜助も、何を訳のわからんことを……あっしは、朝太郎親分に命令されてきたんですよ! ここに旦那がおられるかもしれないんで、様子を見てこいって」
「え? 朝ちゃんが? ほな、猿公は下手人じゃないんや」
「ま、まだ言うんですかい? つか、早くその手をどけてもらえません?」