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三十六

「ちょっとした?」

 首を傾げる女将に


「ほら、裏にある林のことですよ」



 玄関より出てきた二人


「旦那、ちょうど小降りになってきましたよ! ささ、今の内に」


「わいは周囲の様子を見てくるさかい、喜助は林へ行け」


「え?」

 そんな、不安そうな相手に


「ほな、代わる?」



 結局は予定どおり谷の様子を見にきた破近、そこら中を見回った後


「ほな、戻ろ」



 家の前まで戻ってきた彼、すぐに喜助の姿を認めたのだが――


「何してんねん? あいつ」


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