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二十九

「聞くって、何をです?」

 先に口を開いたのは、町人の若者の方だ。


 これに答えることなく破近が、ギロリと睨み

「名前は?」


 すぐに萎縮してしまった相手

「又吉、です」


 続いて娘にも

「そっちは?」


「あたし、お峰」


「ほな、ここには何しに来たんや?」


 これに又吉が

「何しにって……ここに一度来てみたかっただけで。案外名所になってますんで、この鰻の寝床って」


「あたしは、しょっちゅう来てる。ここから眺める景色が大好きだから」


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