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第七話 西洋十字架の謎 一
「てーへんだ!」
いつものように、橋のたもとまで駆けてきた喜助
「あれ? 今日は姐さん一人で?」
「そうなんだ。旦那さ、蚊に食われすぎちゃって、貧血でも起こしてるのかねえ」
とは言え、からっきし心配なんぞしてない冷奴さん。
「はあ。じゃ、ちょっくら八丁堀まで行ってきまっさ」
「だ、旦那! 一体?」
はたして、相手はまだ布団の中だ。
「お、喜助か。あのな、何もする気が起きへんのや」
確かに破近、その目同様に青い顔である。
*エラリー・クイーン「エジプト十字架の謎」への、ほんの1%のオマージュ