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三十六

「じゃあ、喜助よ。もう一つだけ聞くが」


「な、何をですかい?」


「いいか? ここで、仏さんの名をもういっぺん言ってみろ!」


 唐突な質問に、目を白黒させている喜助


「え? ほ、仏さんの、ですかい? えっとお……確か久三郎左門之介、いや、久四郎左門之介だったっけ? 待てよ……」


 この答えに満足そうな親分が


「そら、わからんだろ? いいか? それをだな、旦那はわしらの前でこう言ったんだぞ……」


 ここで喜助、生唾を飲み込んでいる。


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