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第二十話 さらば愛しき同心よ 一
さて、久しぶりの橋のたもと。
「姐さん。今度、演劇でもご一緒しまへん?」
「ほう、いいですねえ。で、何という芝居ですかい?」
「確か『山猿』っちゅうて、遭難した人を救出する話ですわ」
「それは観たいですでねえ」
破近、顔をくしゃくしゃにし
「おお、是非!」
この時、いつもの男が
「てーへんだ!」
「んもう、何やねん?」
「木俣様が、旦那をお呼びで!」
「ん? 何や、てーへんちゃうやん!」
実は、かなりてーへんな事だった――
*レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」への、ほんの1%のオマージュ