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第三十五話 星屑の光

固まったまま動かない甘喰に、影浦はゆっくりと歩み寄る。


「君は物覚えが悪くて、何度も再光室に来ていましたね」

「また、私の教育が必要ですか?」


薙刀の切っ先を、甘喰の首元に突きつける。


突然、影浦が横へ飛び退いた。


その瞬間、槍が影浦の腰を掠めた。


「もう、そいつは命光組じゃないだろ」


「雨伝くん、離反ですか」


雨伝は槍を肩に乗せて、冷たく言い放つ。


「組長を殺したあんたも裏切り者だろ」


「この組をより良くするためです。尊い理念のための、必要な犠牲です」


雨伝は眉をひそめる。


その顔にはあからさまに嫌悪感が滲み出ている。


「そうだな。あんたはそういう奴だったな」


甘喰の方へ顔を向ける。


「おい、立て。その人はまだ死んでないだろ」

「戦って守れ」


雨伝の言葉に、甘喰は首を振る。


胸の辺りを掴む手は震えている。


「無理です。俺は影浦さんに、逆らえない」


「その人を守りたくないのか?生き延びて、それで満足なのか?」


甘喰は息を飲む。


優しく頭を撫でてくれた月宮の姿を思い出す。


月宮は喉を焼かれた後、甘喰を責めたことは一度もなかった。


彼はいつだって優しかった。


「分かりました。戦います」


立ち上がって、刀を握る。


「生き延びて後悔するくらいなら、ここで死ぬまで狼牙さんのために戦います」


声は掠れていた。


刀を握る手は、まだ震えていた。


それでも、甘喰は影浦に刀を向けた。


「よく言った。成長したな、澪」


雨伝は一瞬だけ、甘喰を優しい目で見た。


そして、影浦に槍を向けると、鋭い目で睨みつけた。


「命光組はここで終わらせる」


「命光組は不滅です。何度でも、私が再生させましょう」


甘喰と雨伝の攻撃を、影浦は避けていく。


甘喰は影浦の背後に回り込んだ。


影浦は振り返らずに、薙刀を後ろに引いた。


甘喰の腹に、薙刀の石突がめり込む。


「ゲホッ」


影浦は薙刀を回転させて、雨伝の槍を防ぐ。


槍と薙刀がぶつかり合った。


「やっぱりあんたは強いな」


「攻撃できる異能力ではないので、」


影浦は雨伝の槍を押し返した。


「その分、精神と肉体を鍛えました」


薙刀を振り回しながら、雨伝に近づいていく。


雨伝の突きを、体を回転させて躱す。


振り向きざまに、薙刀を振る。


雨伝はしゃがみこんで、躱した。


「実力を隠していましたね」


「こんな組を信頼できるわけないだろ」


甘喰が走りながら、影浦に斬りかかる。


影浦は避けて、甘喰の腕を掴む。


そして、雨伝の方へ投げ飛ばした。


雨伝は甘喰を受け止める。


「ふぅ。甘喰くん。君はいつまで経っても、弱いままですね」

「君の光は小さすぎて見えません。まさしく、星屑ですね」


影浦の蔑んだ目が、甘喰に突き刺さる。


甘喰は立ち上がって、真っ直ぐに影浦を見つめる。


「星屑でも構いませんよ」

 

甘喰の目に覚悟が宿る。


「俺は命光組という星に、ずっと怯えていました」

「その大きな光に苦しめられていました」


甘喰の脳裏に、月宮の姿が過ぎる。


「星屑だって光なんです」

「どんなに小さな光でも、一瞬の輝きしか放てなくても、星屑は星に勝てます。それを証明してみせます」


甘喰の言葉に、雨伝が口元を緩ませる。


「なら、俺も星屑だ。星屑の力を見せてやるぞ、甘喰」


「ええ、必ず勝ちます」


雨伝が地面を蹴って、飛び跳ねる。


槍を下へ向けて、重力のままに振り下ろす。


影浦が避けようとした瞬間、甘喰が背後から影浦の背中を狙う。


影浦は避けきれずに、薙刀の柄で槍を受け止めた。


しかし、重さに耐えきれずに、地面に倒れた。


雨伝は、影浦の体の上に馬乗りになって、槍に力をこめる。


「死ぬのは怖いか?」


「いいえ、全く」


「そうか。死ね」


雨伝はさらに槍に力を加えて、そのまま影浦の喉を突き刺した。


甘喰は月宮に駆け寄る。


浅いが、月宮はかろうじて息をしていた。


「狼牙さん……」


「甘喰、早くその人を病院に連れて行くぞ」


「はい」


二人は月宮を連れて、戦場から離脱した。

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