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第三十二話 覚悟完了

宵時の刀を、雨伝は槍で受け止めた。


「ここに来るまでに、他の隊員には見つからなかったのか?」


「…………」


互いに力を込めて、武器を押し合う。


宵時の刀から、黒い水が出てきた。


雨伝は後ろへ飛び退いた。


「前も思ったが、異能力を使うのが下手だな」


その言葉に、宵時の眉が少し反応する。


「剣の腕はいいのに、もったいないな」


宵時が突進してくる。


雨伝は槍を横にして壁に突き刺す。


槍を手に持ったまま、ふわりと飛び跳ねて、宵時を躱す。


「室内戦は不利だな」


槍を刺した壁を蹴りで破壊した。


「あっちでやろうか。義心組の二番隊隊長さま?」


「僕はもう、義心組ではないぞ」


宵時が冷たく言い放った。


二人のやり取りを見ながら、真也は焦っていた。


負の心宝石を持っていない今、彼はまさしく無力だった。


「クソッ……」


ただ、黙って見ていることしか出来ない。


外では、木々に囲まれながら、宵時と雨伝が戦っている。


よく見ると、木々の向こうには、7、8mくらいの灰色の壁があった。


月明かりに照らされた壁は、重々しく感じられた。


遠くの方から、足音が聞こえてきた。


「まずい!」


このままでは、また足手まといになるだけだ。


焦る真也だったが、必死に考えても解決策が浮かばない。


「お困りですか?」


ミコトと呼ばれていた少女が、いつの間にか真也の隣に立っていた。


「君は、ヤマコじゃない方の……」


「私は正の神です!皆にはミコトちゃんって呼ばれています」


彼女は柔らかい笑みを浮かべて、こちらを見ている。


ヤマコとは、言葉遣いから仕草まで、全くの別人だった。


「コホンッ」

「愉悦さんからのお言葉です。『最高の舞台を見せて欲しい』とのことです」


ミコトは手のひらに負の心宝石を乗せて、差し出してきた。


「ありがとう」


色々と聞きたいことはあったが、ひとまず心宝石を受け取った。


弓を出すと、こちらへ走ってきた命光組の者たちに矢を放つ。


連続して放つと、彼らの肩や足に刺さった。


だが、彼らは足をとめない。

 

まるで、何事もなかったかのように走ってくる。


痛みなど感じていないかのように、うめき声の一つも出さない。

 

「嘘だろっ!」


真也は距離をとりながら、次々に矢を放つ。


「本気で殺さなければ、止まらないぞ」


背後から声がした。


勢いよく振り返ると、泡田が立っていた。


横に飛ぶと、泡田の刀が掠った。


「『星屑の光であれ』」

「それが命光組の行動理念だ」


泡田の激しい攻撃を、弓でなんとか受け流していく。


「意味は、『死を恐れずに突撃し、儚く散っていけ』だ」


後ろからも、命光組の者たちが攻撃をしかけてくる。


「死にたくないなら、覚悟を決めて殺す気で来い」

「甘えた考えは捨てろ。俺たちはお前に、慈悲などかけんぞ」


泡田の言葉で、真也は覚悟を決めた。


上に向かって、大量の矢を放つ。


矢の雨が容赦なく、敵に降り注いだ。


「覚悟が足りませんでした」

「もう、手加減はしません」


泡田の目を見て、殺意を向ける。


「本気であなたを殺します」


「やっと、殺気が出たな」


泡田がニヤリと笑みを向けた。


真也は泡田の心臓を狙って、矢を放つ。


泡田は矢を斬りながら、距離を詰める。


息をもつかせぬ戦闘が、繰り広げられる。


真也は宵時の方を見なかった。


それは彼に対する信頼であり、敵に対する殺意の表れだった。


「まだ、甘いっ!」


泡田の刀が、真也の腕を切り裂いた。


「っぐ……」


腕を押さえながら、後ろに飛び退く。


「弱い、弱すぎる」

「今まで味方に甘えていたのか?」


泡田の冷たい視線がささる。


「後方支援に回って、自分は安全な場所で、攻撃していたのだろう?」


何も言い返せなかった。


全て彼の言う通りだった。


今まで、ずっと強い人たちに守られてきた。


彼らの背中に隠れて、攻撃をするだけだった。


「軟弱な精神だな」


蔑むような目がこちらを見ていた。


弓を強く握りしめた。


思い浮かんだのは、宵時と太郎の顔だった。


強い信念を持った宵時。


過去を乗り越えた太郎。


二人は真也よりも、ずっと強い。


変わりたいと強く願う。


想像するのは、二人を越えられる自分。

 

「…………」

 

目を閉じた。

 

真也の弓に、赤い透き通る風が吹き始めた。


風。風の神、ヤマカゼノコト。


彼女の力を感じている。


「何だ?」


泡田が警戒しながら、刀を向ける。


真也は泡田に向かって走る。


風をまとった弓を振った。


泡田の刀と真也の弓がぶつかる。


その瞬間、弓から強い風がでて、泡田が吹き飛ばされた。


「くっ!!」


そのまま、弓を彼に振り下ろす。


泡田は腕で弓を防ぐ。


だが、弓は泡田の腕を斬った。


「刃がないのに、切れただと……」


少し驚きつつも、真也に突きを食らわせる。


真也は飛び退いて、避けた。


「もう、ただの後方支援ではありませんから」


その目には、強い覚悟が宿っていた。

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