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第三十話 信念をつらぬく

倒れた真也を、泡田が担いで連れ去る。


「待てっ!!」


追いかけようとする宵時を、雨伝の槍が制する。


「悪いけど、行かせられないんだわ」


槍を退けると、首の後ろに手を回す。


「あ〜。お互いここは引かないか?」

「命光組と争うことになるのは、困るだろ?」


宵時は雨伝に刀を振る。


「ふざけるな。失昏薬をばらまいているのは知っているぞ」


雨伝はヒラリと避けた。

 

「義心組の組長さんに、責任が問われるぞ」


雨伝の言葉に、宵時は動揺した。


固まる宵時に、雨伝はひらひらと手を振る。


「じゃあな」


雨伝はくるりと背を向けて去っていった。


その背中を宵時は歯を食いしばって、見つめた。


組所に向かって、全力で走り出す。


街の中を必死に走り抜ける。


前方に、白羽と太郎が歩いているのが見えた。


「あれっ!宵時くん、どうしたの?」


「浜野が攫われた」


白羽は目を丸くして、手を口元にそえた。


「うそっ!誰に攫われたの?」


「詳しく話している暇はない!」


そう言って、宵時は義心組の組所に向かって走り出す。


「待って!私も行く!」


「由美殿、失礼する」


凄まじい速度で走る宵時についていくために、太郎は白羽を抱えた。


そして、宵時の後ろをついていく。


組所につくと、豹間の部屋を目指した。


宵時は豹間の部屋の襖を、勢いよく開けた。


「失礼します!」


部屋には甘喰と月宮もいた。


「十夜、どうしたんだい?それに後ろの子達は一体……」


宵時は豹間の前に座り、事情を説明する。


「十夜、気持ちは分かるよ。だが、ここで浜野くんのために動けば、義心組全員を巻き込んでしまう」


「…………」


宵時が押し黙る。


甘喰は腕を組みながら、豹間の言葉に頷く。


「合理的な判断です。隊員の十夜くんが攫われたのならともかく、相手は部外者です。命光組と戦う利点がありません」


甘喰の言葉に白羽が反論する。


「でも、命光組は藍葉さんと関わっているんでしょう!命光組を倒せば、藍葉さんも逮捕できて、浜野くんも救えます!」


豹間は小さく首を振り、視線を落とす。

 

「すまない。命光組と戦うわけにはいかない。我々義心組は、ここ風水領を守るためにある。星光領と争えば、多くの犠牲者が出てしまう」


宵時は、豹間の目を見た。

 

その目に強い覚悟が映る。


「豹間さん。本日を持って、この宵時十夜(よいどき とおや)は義心組を脱退いたします」


丁寧に頭をさげる。


全員が、唖然とした表情で宵時を見つめた。


「今まで、お世話になりました」


豹間は宵時のさげられた頭を見る。


「意思は固いようだね……」


宵時は立ち上がって、部屋から出た。


その後ろを白羽と太郎はついて行く。


「良かったのでござるか?」


「ああ、僕は僕の信念をつらぬく」


宵時は真っ直ぐな目で、前を向いて歩く。


「僕はずっと、自分の理念を信じて戦ってきた」

「組織に囚われて動けなくなるなら、地位も名誉も全てを捨てる」


立ち止まって、拳を握りしめる。

 

「僕は自分の信じた道を歩く、それだけだ」


その言葉に太郎は目を閉じて頷いた。


「よい覚悟でござるな」


宵時は振り返って、白羽と太郎の方を向く。


「僕は命光組の組所に潜入する。お前達はどうする」


「もちろん、ついて行くよ!」


「友のためならば、拙者も戦おう」


三人は力強く、頷きあった。

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