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第二十七話 正と負の心宝石

真也と宵時が豹間へ報告を終えると、彼は考え込む様子を見せた。


「なるほど、星光領か。参ったな、あそこには命光組がいる」


豹間は深いため息をつく。

 

少し迷う素振りを見せると、真也と宵時の方を見る。

 

「十夜、浜野くん。情報は少ないが、星光領に行って調査をしてくれるかい?」


「承知しました。その任務、拝命いたします。」

 

宵時が豹間に頭を下げる。


真也も、宵時に倣って(ならって)頭を下げた。


「あの下手人の引き渡しの件は考えていただけましたか?」


「勿論だ。君が頼み事をするのは初めてだね」

「この一件を片付けられたなら、構わないよ」


宵時が再び、頭を下げる。

 

「ありがとうございます」


真也は手をあげた。


「命光組ってなんですか?」


「星光領を守る組織だ。彼らは少し血の気が多くてね」


豹間は腕を組んで、厳しい声で忠告する。


その顔はとても険しい。


「なるべく、彼らとは会わないようにしてくれ」


「分かりました」


豹間の険しい顔を見て、真也は気を引き締める。


そして、彼の忠告をしっかりと胸に刻んだ。


その後、宵時に屋敷まで送ってもらった。


「明日から、星光領の調査だ。予定の時間を忘れるなよ」


「はい、勿論です」

 

宵時は眉をひそめて、こちらを見ている。


その顔は、何かを迷っているようだった。


「あの、なんですか?」


「月宮さんはお前を信じているらしいな」


軽く頷く。


「そうみたいですね」


「僕は……」


宵時が小さな声で、遠慮がちに呟く。


「僕も、お前を信用しているからな」


顔をほんのりと赤らめる。


「それだけだ!」

 

誤魔化すように大きな声を出すと、去っていった。


「これが本物のツンデレってやつか……」


宵時の信頼が、心に染み込んでいく。


少し胸が暖かくなるのを感じた。


屋敷に戻ろうと振り向くと、ヤマコがいた。


「久しぶりじゃな!」


「ヤマコっ」


真也が少し目を見開く。


「ほう。お主も良い反応をするようになってきたのう」


「今まで、何してたんだ」


「ちと、力を使いすぎてな。休んでおった」


ヤマコは相変わらず、威張った話し方をしていた。


以前と変わらないヤマコの姿に、真也の肩から力が抜ける。


「色々と聞きたいことがあるんだよ」


「そうじゃろうな」


真也とヤマコは歩き出す。


「心宝石のことを、もっと詳しく聞かせてくれ」


「うむ。ちゃんと分かりやすく話せるように、色々と考えてきたぞ」

 

二人が話しながら歩いていると、月狼がいつもの縁側に座っていた。


生気のない瞳が庭を見つめている。


「こやつは変わらぬな」


「そうだな……」

 

真也は俯きながら、答える。


「はやく、藍葉さんを見つけないとな」


「うむ、よい心意気じゃ」


ヤマコは真也を見て満足気に腕を組む。


「お主も少しずつ、自分の心を出すようになってきたな」


「そうか?」


真也の問いに、彼女は力強く頷いた。


部屋につくと、ヤマコは机の上にある茶菓子を手に取った。


「それで、何が聞きたいのじゃ」


「まず、心宝石が二種類あるというのは本当なのか?」


「そうじゃな。正の心宝石と負の心宝石があるぞ」


ヤマコは軽く頷く。


「一番最初のころ、心宝石は一つの石じゃった。じゃが、正と負の二つに別れた」

「そして、負の心宝石はお主の神社の宝物となった」


ヤマコの言葉を真也は考える。


「なるほどな。そして、盗まれた心宝石がさらに割られたと……」


「そうじゃ。ワシがお主に与えた心宝石は負の心宝石。そして、坂下とかいう男が使っていたのは正の心宝石じゃ」


真也は突然ため息をついた。


「こういうのって、普通は正の方の心宝石に目覚めるものじゃないのか?」

「これだと、俺の方が悪役っぽくないか?」


真也の言葉に、ヤマコは呆れたように告げる。


「何を言うておる。人間は正の感情よりも、負の感情の方が強い」

「故に与えられる力も、負の心宝石の方が強いのじゃぞ」


ヤマコは真剣な顔になる。


真っ直ぐな目が、真也を射抜く。


「真也よ。お主には項垂れている時間はないぞ」

「ワシは負の心宝石を司る神じゃ。当然、正の心宝石を司る神も存在しておる」


彼女の視線に、容赦のない厳しさが宿る。

 

張り詰めた空気が漂った。


「そして、正の神は負の心宝石を盗んだ犯人のところにおる」


「なんで分かるんだよ」


真也の言葉にヤマコは眉をひそめる。


「馬鹿者め。正の心宝石を持っておった坂下は、盗人の仲間なのじゃろう」

「であれば、盗人は正と負の心宝石の両方を持っておることになる」


ヤマコの声はどんどん低くなっていく。


「真也よ。このまま、ダラダラと過ごしておると、犯人に負けてしまうぞ」


「どうすればいいんだ?」


真也の問いにヤマコが返す。


「心宝石に力を与えられた者を『宝者(ほうしゃ)』という」

「仮初ではあるが、お主は二度『憤怒の宝者(ふんぬのほうしゃ)』として、覚醒しておる」

「生き延びたいのならば、心宝石を取り戻して本物の『憤怒の宝者』として死ぬ気で鍛えるのじゃ」

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