第二十五話 宵時の説明
あれから数日が経った。
真也たちは、太郎の屋敷で話していた。
「最近ヤマコちゃんに会ってないけど、どうしてるの?」
「あ〜。ヤマコはあの事件以来、姿を見せないんだ」
真也は頭をかきながら、困ったような顔で答える。
「心宝石も何故か無くなってるし、色々と聞きたいんだけどな」
「聞きたいといえば、宵時殿はどうなったでござるか?」
太郎が真顔で真也を見る。
「あれから、会ってないんですよね。そんな気軽に義心組に近づけないし……」
真也は手を顎に当てて、考え込む。
「ふむ。どうやら、話は本人に聞けそうでござるな」
太郎が部屋の襖へ視線を向けた。
襖が開かれて、宵時が姿を現す。
「…………」
「宵時さん」
宵時は無言で机に向かうと、真也の向かいに座る。
「僕は義心組二番隊隊長、宵時十夜だ」
「本来は、義心組の任務の話を、部外者に話す訳にはいかない」
「よって今日は、ただの宵時十夜として話す」
宵時は刀を持たずに来た。
それは、戦う気はないという証明である。
また、義心組としてではなく、個人として話に来たということでもあるのだろう。
「義心組は二年前から、とある薬物犯罪を追っている。」
「失昏薬ですよね」
真也の言葉に宵時は頷く。
「失昏薬は思考能力や記憶力を奪う危険な薬だ。そして、その薬を作っているのは、異世界から来た人間だ」
「ここまで言えば分かるだろう?」
真也はポツリと呟く。
「俺と白羽さんを疑っているんですか?」
宵時は真也を見つめる。
その目には、以前のような警戒の色はない。
「お前の後をつけていたのは、お前があの失昏薬の女と、本当に繋がっていないのか調べるためだ」
真也は考え込む。
「坂下くんを捕まえたのも、藍葉さんと関わりがないのか調べるためですね」
「えっ!?凛ちゃんが薬を作っているの?」
「そんな……」
白羽が悲しげな声を出す。
彼女は呆然としたまま、視線を落とした。
「宵時殿の事情は分かった。だが、こちらにも引けない理由がある」
「拙者だけではない。鳴介のためにも、坂下は殺さねばならない」
太郎は腕を組み、冷静に話す。
その顔からは何も感じられなかった。
だが、真也には分かった。
彼は忍として培われてきた自制心で、怒りを隠しているだけだ。
「あんたの言っていることは分かる。だが、事は重大な事件だ。そう易々とあの男を渡すことはできない」
「…………」
太郎と宵時の間に、冷たい空気が流れる。
ふと、宵時が真也を見る。
「坂下はお前と話したいと言っていた。あいつはどれだけ拷問しても、情報を吐かなかった。義心組ではお前を坂下と会わせるか会議が何度も行われている」
宵時の真っ直ぐな視線がささる。
「お前が上手く情報を聞き出すことが出来れば、この事件を解決できると、僕は思っている」
宵時は再び太郎の方へ顔を向ける。
「この事件が解決すれば、必ず坂下の身柄をお前たちに渡すと約束する」
「分かった。貴殿を信じよう」
太郎は目を瞑って承諾した。
「感謝する」
「次の会議は三日後だ。その時に必ず、坂下との面会の許可を得る」
宵時が真剣な顔で真也を見る。
「あとはお前次第だ。必ずあいつから情報を聞き出せ」
宵時の目には信頼が浮かんでいる。
「分かりました。必ず情報を得てみせます」
真也は、彼の期待に応えようと決意した。




