表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/36

第一話 逮捕から始まるタイプの異世界

浜野真也(はまの しんや)は異世界で警察に捕まった。


彼は学校の教室から、異世界の警察組織・義心組(ぎしんぐみ)の庭へ転移した。


異世界に来て早々に、警察に囲まれてしまったのだ。

 

そして、現在は和室で尋問を受けている最中である。

 

彼は、ぼんやりと天井を眺めている。


見た目は黒髪で、普通の高校二年生だ。

 

一つ特徴を挙げるならば、光の加減で黄色にも見える深緑の瞳くらいだろう。


「おい、貴様聞いているのか!」


向かい側に座っている黒髪の少年が声を上げた。


長い黒髪を後ろで結んでいる。いわゆるポニーテールという髪型だ。


黒い和服には、黄金の獅子のバッジが付いていた。和服の上に、青地に黒色の獅子の刺繍がされた羽織を着ている。

 

この少年は、宵時十夜(よいどき とおや)


義心組の二番隊隊長である。

 

「そろそろ、君の話を聞かせてくれないかな」


宵時の隣に座っている男性が、穏やかな声で話しかけてきた。


茶髪をオールバックにした、優しげな顔立ちの男性である。

 

この男性は豹間作太郎(ひょうま さくたろう)

 

警察組織、義心組(ぎしんぐみ)の組長だ。


「とりあえず、名前を教えてくれるかい?」


「名前は浜野真也(はまの しんや)です」


真也は返答に困った。

 

正直に話せば、間違いなく牢屋に入れられるだろう。

 

「単刀直入に聞かせてもらうが、君は異能力者なのかな?」


深緑の瞳を少し開いて、首を傾げた。


「いや、分からないです。異能力者って何ですか?」


「貴様、ふざけているのか!」


宵時が立ち上がろうとすると、豹間(ひょうま)が片手で制する。


「ふざけているわけではなさそうだ。詳しく聞かせてくれるかな。正直に、ね」


彼は全てを見透かすような、金色の瞳でこちらを見ている。


この人には嘘が通じない、真也は何となくそう思った。

 

「えーっと、実は異世界から来たんですよね」


「は?」


宵時が露骨に顔をしかめた。

 

赤い瞳が、鋭く細められる。


背筋に冷たいものが走った。


あの細身の少年から放たれているとは思えないほどの圧だった。

 

「貴様……本気で言っているのか」


「待ちなさい、十夜」


豹間が静かに告げた、たった一言。


それだけで、宵時の殺気がわずかに引いた。


「君、続きを」


豹間のこちらを見るその視線には、まだ興味が残っている。


「実は俺もよく分かっていなくて。気づいたら、ここの庭に立っていた感じです」


何の説明にもなっていない返答だ。

 

焦りながら、豹間の方を見る。

 

彼は顎に手をあてて、何かを考えているようだった。


宵時は相変わらず、疑いの眼差しを向けている。


「浜野くん、失昏薬(しつこんやく)という薬を知っているかい?」


「いえ、知らないです」


全く聞き覚えのない薬の名前に、再び首を傾げた。


「ふむ、そうか」


豹間は考え込むように、顎に手を当てている。


宵時の視線がますます鋭いものになっていく。


彼は重苦しい空気を放っている。


失昏薬(しつこんやく)って何ですか?」


「黙れ。知らないはずがないだろう」


何故か宵時は苛立たしげに真也を睨んでいる。


身に覚えのない罪を、押し付けられているような気がした。

 

突然、襖が勢いよく開いた。


「姉上っ!」


宵時が声を上げた。

 

襖を開けたのは、気の強そうな、美しい女性だった。


紫陽花の模様が描かれた青い着物。


長い黒髪をゆるく左側にまとめている。


つり目がちな瞳は、少し気が強そうに見えた。


女性は真也を見ると、にこりと微笑む。


「話は聞かせてもらったわ。真也くん、うちにいらっしゃいな」


突然すぎる展開に、真也は困惑する。

 

女性の言葉に、宵時が勢いよく立ち上がった。


「姉上!」


咎めるような声を上げた。


目を吊り上げて、抗議する。


「また妙なやつを拾う気ですかっ!」


「あら、いいじゃない」


女性は楽しげに微笑んでいる。


「身寄りのない子を放っておくなんて、私にはできないわ」


「しかし、」


宵時が言い返そうとした、そのとき――


パン、と軽い音が響いた。


豹間が両手を叩いた音だ。


「落ち着け、十夜。監視という意味でも、水華(すいか)さんの家に浜野くんを置いておくのはいい案だ」


宵時は不満そうに眉を寄せる。


「豹間さん……」


小さくため息をつくと、横目で女性を見た。


「まあ、姉上ならば、何かされそうになっても返り討ちにできるでしょうが……」


宵時の言葉に、水華と呼ばれた女性は楽しそうに笑った。


「ふふっ、決まりね」


笑いかけてきた彼女に背筋が凍りつく。


真也の第六感がざわつく。


危険な空気を感じ取った。


「私はそこにいる宵時十夜(よいどき とおや)の姉、宵時水華(よいどき すいか)よ」


水華の優しげな微笑みを見ても、真也の警戒心は解けなかった。


「よろしくね、真也くん」

 

「よろしくお願いします」

 

水華に向かって、彼は小さく頭を下げる。


「はぁ。まったく、姉上はすぐ妙なものを拾ってくる」


宵時が重々しいため息をつく。


ふと、豹間と目が合った。


「浜野くん。正直に言うと、私たちは君の話を完全に信じているわけではない。十夜は特に君を疑っている」


宵時の鋭い視線が刺さる。


「だからこそ、君自身の行動で身の潔白を示すんだ」


「分かりました」


豹間の方へ体を向けて、姿勢を正す。


「俺は悪人じゃないってことを、行動で示してみせます」


頭を下げた瞬間、宵時の鼻で笑う声が聞こえた。


失礼な人である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ