超短編 太陽神
がちゃりと、扉のドアノブを回し、扉に埋め込まれた鉄の部品が離れ、解放される小さな音が鳴る。
部屋の左側の壁にずらりと並ぶ窓、綺麗に並べられた部屋の大部分を占める黒い2列3つづつの長机、その後ろの壁にひっつくように備え付けられている様々な大きさの液体入りの透明や濃い茶色の沢山の瓶が収まった硝子の戸棚、そして、その隣には真っ白な白骨死体、もといその標本が硝子の大きな戸棚に行儀よく収まっている。
そんな部屋へ続く扉を開け、中へと入ってきたのは一人の青年。
ぼさぼさとあちらこちらへ跳ねたような、耳を隠してしまいそうな真っ黒い髪に、ぎざぎざと尖った後ろ首を覆い隠してしまいそうな後ろ毛。
どこか眠気を帯びたような目にそこそこに整った、男らしい精悍な顔立ち。
高めの背丈に、結構がっしりとした体格を前のボタンの全て外された学ラン、その下には紫色でど真ん中に『カノッサの屈辱』と白い文字でプリントアウトされているシャツを着ており、下には学校指定の学ランと同じ真っ黒なズボンを穿いている。
加賀見甲太郎がその部屋へと入ってきた。
その甲太郎が前の列の机の前を横切る様に歩いて行くと、突然立ち止まった。
「……何、やってるんだ ?」
そして、視線を少し落とし、前方へ向けて少し低めの声で問いかける言葉を口にした。
その彼の視線の先にいたのは床にしゃがんでいる小さな少女。
頭の左右から絵筆のように飛び出している黒いツインテールの髪に眉のあたりまで伸ばされた前髪。
どこか自信のありそうな釣り目の幼い顔立ちに細長くフレームの無い知的な雰囲気の感じられる眼鏡。
甲太郎の腰辺りまで程しか無さそうな背丈に小学三年生の女子児童程度の体つき、それらを胸元に赤いタイのついた真っ黒い半袖のセーラー服に身を包み、その上から体格に不相応な大きな白衣を袖をまくり、なんとか、といった感じで羽織っている。
床にしゃがみこむように座っていたのは霧崎知恵であった。
「なんだ、コータローか」
甲太郎の方へ顔を向けた知恵がその見た目に通りの幼い声で言う。
「なんだ、それ、ひまわり ?」
甲太郎が知恵の方へ向かい指をさして言う。
知恵の体の正面には茶色の小さなバケツの様な鉢に植えられた小さなひまわりが一輪だけ植えられている、気のせいか、少し元気の無さそうにうつむいている。
一般的な花畑などに植えられているひまわりよりも茎が細く、背も小さく、小輪の花の『ミニひまわり』と呼ばれている品種である。
「私が種から育てたひまわりの『マリーちゃん』だ」
再びひまわりへと視線を戻した知恵が説明するように言う。
「最近、マリーちゃんがあまり元気無くなってきているからな、植物用の栄養剤を作ったんだ」
立て続けにそう言うと、近くにある机を指差す知恵、その上にはこの理科室の物であろう、使用済みの実験器具が置かれていた。
「所で、コータローは何をしに来たんだ ?」
ひまわりの茎を弄りながらしゃがんだままで甲太郎へと問いかける知恵。
「ああ、ほら、ここの『理科室』さ、冷蔵庫あるだろ ?学校来る前に買ったコーラがぬるかったから3限目の放課にここの冷蔵庫に入れといて冷やしといたの取りに来たんだよ」
少し姿勢を崩し、ひまわりを弄っている知恵を見据えて甲太郎が言う。
甲太郎と知恵は彼らの住んでいる町、S県A群にある黒金町にある高校、黒金第二高校の生徒であり、彼らの居る部屋はその高校の理科室であった。
「コータロー……学校の公共物を私物化するとはセコい奴だな」
「お前が言うな」
少し呆れたように呟く知恵に口を尖らせて言い返す甲太郎、どちらもどちらである。
「で、マリーちゃんは助かりそうなのか ?」
気を取り直した甲太郎がひまわりについて知恵に問いかける。
「良くわからないがこのままだと恐らく枯れてしまう」
甲太郎の問いに対し真剣な声で言う知恵どうやらひまわりの状態は深刻そうである。
「ああ、やはり日の光に当りすぎたのが良くなかったか……」
と、相変わらずひまわりの方へ向きながら情けない声色で言う知恵。
「だが、もう大丈夫だ、私が作り出した植物用栄養剤『進化の秘法』が完成した、これを使えば元気になるどころか、アナボリック・ステロイドを投与したが如く頑強な肉体が手に入るのだ」
「たかがひまわりの治療にドーピング薬を使うか、普通」
先ほどとは打って変わって、得意げな口調で自らの作り出した怪しげな薬の入った、緑色の小さな透明のアンプルを甲太郎へ見せて自慢する知恵、そして、その薬の内容へつっこむ甲太郎。
「しかし、適量を見極めて投与しないと、取り返しのつかない事になる」
知恵が足元に置いてあった注射器を拾い上げながら言う。
「ますますドーピングにしか聞こえないんだが、そんなリスクの伴った物を使ってもいいのか ?」
甲太郎が知恵を見据えながら問いかける。
「明日を捨ててまで強くなりたいのなら迷わず使うべきだろう ?」
「マリーちゃんの意思を無視して、そのジャック・ハンマーが如く理屈を勝手に押し通すのはどうかと思うがな、ていうか、ぶっちゃけそれの効果を試したいだけだろ」
アンプルの先端を折り、注射器に薬を詰めながら、しれっとした風に答える知恵、そしてどこか少し呆れたように言う甲太郎。
注射器の押し出す部品を外し、注射筒の中に薬がなみなみと注がれ、注射筒の中に濃い緑の透明感のある液体が詰まっている。
「これで良し、と」
押し出しの部品を戻した注射器を手に知恵が準備を終える。
「なあ、マジでやるのか ?何か嫌な予感がするんだが」
「当たり前だろう、これもマリーちゃんを救うためだ」
何か不安を感じ取った甲太郎が少しだけ阻止しようと催促するが、断じて栄養剤を打とうとする知恵はそれを聞き入れず注射器をひまわりの茎の近くへ持っていく。
そして、注射針の先端がその瑞々しい茎に刺さる。
次に知恵の指にかけられた押し出し器により注射筒の中身が押し出され、茎の中へと吸い込まれるように押し込まれていく。
「さて、これでどうなるか……」
栄養剤が全て注入されると、真剣な声色で呟きつつ、注射針を茎から抜き取る知恵。
ひまわりへ視線を固定し、静かに見守るようにそこから一歩も動かずに観察する甲太郎と知恵。
すると、二人の視線を受けたうなだれる様にしていたひまわりがむくむくと起き上がり、まるで前を向くような体制へと戻り始める。
「おお、何か動いたぞ」
それを見て驚く甲太郎。
「実験は成功か」
そして、満足そうに言う知恵。
顔をもたげあげたひまわりに次の変化が起きはじめた、茎からぽつぽつと小さな突起があちらこちらから生え始め、段々と、目に見える速さで成長していき、小さな突起は瞬く間に葉へと姿を変えた。
茎から大量に枝分かれした葉が生まれ始めたのだ。
「どうやら急激なスピードで細胞分裂し、成長しているようだな」
その怒っている現象について解析するように口に出し言葉にする知恵。
「何かこれ、きめぇな」
そして、そのひまわりを見た甲太郎が少し引きつつ、今起こっている現象に対する感想を述べる。
話している間にも、ひまわりの成長は止まらず、茎がどんどんと天に向かい伸び始め、茎の横からは枝分かれした新たな茎がどんどんと生えていき、お互いが捻じれて絡み合うい、どんどんと太く大きくなっていくひまわり。
「おいおい、どこまで成長するんだよ、もう鉢に収まりきらなくなって来てるぞ」
「むぅ、ちょっと前に問題になった盛り過ぎ豚丼みたいだな」
どんどんと成長しているひまわりを見た甲太郎が知恵へと目をやり、少し心配そうに言う、しかし、知恵は案外のんきにそれについての感想を語る。
そんな、二人の会話が終わった瞬間だった。
成長を続けるひまわりがしゅるしゅると音を立て始めた。
ひまわりの茎から蔦が四方八方へ触手のように伸び始めた。
「おい、流石にこれは異常だぞ !」
少し身構え、焦ったように声を跳ね上げる甲太郎。
その間もひまわりからどんどんと蔦や新しい茎が生成され、先程よりも明らかに早いスピードで成長を続けている。
「どうしよう、コータローこのままじゃ『理科室』全体が蔦で覆われてしまう」
観察していた知恵も流石に焦り、慌てた様子で甲太郎へ言う。
「くそっ、とりあえずここから出るぞ」
甲太郎が急いでそう告げると、知恵の手を引き、『理科室』の扉へ向かい走り始める。
そして、それに引きずられるように腕を引かれ、付いていく知恵。
その間も、ひまわりは変わらずに成長を続け、どんどんとその体を巨大化していく。
二人が、がちゃりと廊下への扉が開き、扉の向こう、廊下へと転げるように飛び出し、床に尻もちをついたように座りこむ。
「はぁ、はぁ、で、あれはどうするんだよ」
思い切り走ったせいか、少し息を切らせながら知恵へ言う甲太郎。
「ふぅ、ふぅ、とりあえず成長が終わるのを待つしかない」
同じく息を切らせた知恵が甲太郎の質問へと答える。
ぼごん、と二人の背後で大きな叩きつける音が響く。
それを聞いた二人が、背中をびくりとさせて、ばっと立ち上がり後ろを振り向く。
ばん、ばん、ばん、と後ろを振り向いた彼らの視線の先、理科室への扉がまるで向こう側から叩かれているように鳴り響き続ける。
それを見た二人が恐る恐る扉から離れる。
扉を叩きつける音が段々と強くなっていき、ついには扉が向こう側から盛り上がって見えるほど強い力で叩かれているのが目に見える。
「まさか……」
「いやいや、いくらなんでもこれは」
甲太郎と知恵がごくり、と喉を鳴らしながら扉を凝視しつつ言う。
どん、どんと大きな衝撃音とともに扉がゴムのように膨れたり萎んだりとしている、今にも扉が破れてしまいそうな衝撃である。
しかし、二人が心配そうに見守る中、突如、ぴたりと向こう側から叩きつける音が止んだ。
廊下に響いていた衝撃音が止み、しんとした静けさが訪れる。
そして、甲太郎と知恵、お互いが顔を見合いほっとした様子で肩を落とす。
しかし、その時、がちゃりとドアノブが回り、静かにその扉が開かれる。
甲太郎と知恵の表情が固まり、ぎぎぎ、と音の鳴りそうなほど、錆びたバルブが回るようにぎこちなく顔がそちらへ向けられる。
理科室の中、そこに広がっているのは一面の黄緑であった。
ひまわりから伸びた黄緑の蔦や茎、そして葉が所狭しと絡み合い、壁を形成していたのだ。
そのひまわりが廊下をめがけて更に蔦を延ばし始めた。
「こいつっ !まだ成長すんのかよ !」
驚愕の表情で叫ぶ甲太郎、その間も、新たなる世界へ飛び出さんばかりにひまわりは成長を続け、壁や床へびっしりと蔦を伸ばしている。
「やばいぞ、コータロー、このままじゃ、学校中が取り込まれるぞ !」
壁や床の上を伸びていく蔦を見回しながら焦ったように言う知恵。
「とりあえずここにはいられない !この校舎から出るぞ !」
甲太郎が再び知恵の腕を力強く引くと、学校の出口を目指して廊下を駆け出していく、そして、それを追いかけるようにひまわりの蔦がしゅるしゅると伸びて更に廊下を埋め尽くしていく。
甲太郎と知恵は迫りくるひまわりから逃げて行き、ついに学校の校庭へと行き着いた。
「奴の成長力は無限大かっ !」
甲太郎が校庭から校舎のほうを見上げるとそう叫ぶ。
知恵も同じく校舎を見るがぽかんと絶句しているために何も言わない。
彼らの視線の先、黒金第二高校の校舎は早くも大部分が黄緑色に染まりかけていた。
窓という窓は破られそこから大量の蔦が津波のように飛び出し、扉という扉からも黄緑の蔦が絡み合い、まるで丸太のような太さまでに膨れ上がった茎が飛び出している。
校舎からは生徒や教師たちの叫び声が聞こえる、校庭には甲太郎と知恵の二人しかいないところから、恐らく大半の人々が逃げ遅れて校舎内に残されてしまっているのだろう。
そして、突如、空のたかくからぼごん、と大きな何かが壊れる大きな音が鳴り響いた。
様々な太さの茎や蔦が未だに成長を続け絡まる校舎の屋上部分から茶色い土ぼこりが巻き上がり始めたのだ。
あまりの大きな音に思わず腕で顔を庇い、その場に踏ん張る甲太郎とへたり込む知恵。
「今度は何だってんだよ……」
うんざりした表情で、屋上部分へと目をやる甲太郎。
大きな音のしたその部分から、まるで巨木のような蔦が伸びて行き、絡まりあう。
どんどんと、その巨木が絡まりあい、まるで雲にも届きそうな高さまで伸び上がってく。
ついにそれは横へと伸び、腕や胴体を形成しある物へと形成されたところで動きが止まり始める。
人間である。
まるで校舎の天辺から黄緑の巨大な人間の上半身が生えているような形になっているのだ。
そして、その人間の顔に当たる部分、黄緑の袋に包まれ、入り口をねじり縛られたような部分が徐々に開いていく。
完全に開いたそれは茶色のたわしのようなものが所狭しと敷き詰められた巨大な円、それらの周りに明るく濃いオレンジの巨大な羽が囲うように存在を主張するように大量に付けられている。
それは大輪、それすらも凌駕した巨大なひまわりの花であった。
天を突かんばかりに巨大な、ひまわりの顔をした巨人が生まれたのである。
甲太郎と知恵は無言で、そして無表情で顔を合わせる、今起こっている現象について、何も言うことができないのだろう。
ヴォオオオオオオオオオオオオオオオ !
突然、ひまわりの巨人がその顔で空を見上げた瞬間、低音の地面を揺るがすほどに大きな音が鳴り響く。
突風のような振動があたりを揺るがし、甲太郎と知恵も思わず怯んでしまう。
「……おい、あいつ、吼えたぞ」
甲太郎が知恵の方を向き、無感情に言う。
その大地を揺るがすほどの巨大な音はひまわりの巨人の出した鳴き声であった。
「なあ、あれさ」
「うん」
「マリーちゃん……だよな ?」
「うん」
「どうして、こんなことになってしまったんだ ?」
「姉様のところからパクってきた『進化』に関するって書いてあったラベルに入っていたあの試験管の中の変な液体がいけなかったんだろうかな」
無感情に、淡々とした会話を続ける二人。
次に、膨大な成長を遂げ、巨大化したひまわりのマリーちゃんの中心がぴかりと光り始めた。
その光った部位から、物凄い速さで細い光が伸び出した。
伸びた光は甲太郎達の住んでいる町、黒金町の商店街辺りに伸びて行き、マリーちゃんがその花を動かすとともに右へと移動していく。
ドゴォン !と大きな音が鳴り響く。
突如、マリーちゃんの放った光の通った場所から大きな爆発音の後に大きな爆炎が上がる。
まるで、レーザー光線のようである。
「おい、このままじゃ学校どころか人類があぶねぇぞ !」
それを見た甲太郎が焦ったように叫ぶ。
「コータロー、よく考えろ、恐竜しかり私たち人間しかり、いつもこの地球上は強い生き物達がその支配を許されてきた」
「これからはきっと彼らの時代なんだよ……」
「お前の都合で人類を滅ぼすんじゃないっ !」
マリーちゃんを見上げ、諦めたように言う知恵に甲太郎が噛み付く。
「何でもいいからあいつを倒す方法とか無いのか ?」
甲太郎が藁にもすがる思いで知恵へと問う。
「なんと、ここに好都合にもアマゾン川の密林をも一瞬で枯らして荒野へと変えてしまうほどの『除草剤』が」
そんな甲太郎へ向かい知恵が白衣内側の胸元から一本の注射器を取り出す。
「なんで持ってんのかは知らんが、この状況には好都合すぎだな、よこせっ」
それを見た甲太郎が知恵の手から注射器を強引に奪い取る。
「何とかしてマリーちゃんの懐に潜り込んでどこでもいいからそれをぶっ指してくれ、頼んだぞコータロー」
と、甲太郎へ任務を丸投げするように言う知恵、そして、校舎へ向かい駆け出す甲太郎。
「ぬおおおおおおお !」
甲太郎がありったけの力を足へと込めて校庭の地面を踏みしめて、マリーちゃんへ向かい一直線に走っていく。
すると、マリーちゃんのその大きな花が甲太郎の方へと向けられる。
そして、甲太郎の法へと向けられたその花の中心が光り始めた、先ほどのレーザーを甲太郎へ向けて撃ち込もうとしているのである。
「くそっ、俺が先に刺せばいいっ !」
だが、甲太郎は構わず手に持った注射器を逆手に持ち、マリーちゃんのその巨大な蔦めがけて走り続ける、レーザーよりも早く除草剤を打つつもりのようだ。
そして、甲太郎がついに校舎から伸ばされた巨木の根元のような蔦の近くまで到達した。
しかし、それと同時にレーザーのほうも甲太郎へ向けて撃ちだされた。
「うおりゃああああああ !」
甲太郎が注射器を逆手に持ったまま、その根元へ飛び掛る甲太郎、レーザーの方も甲太郎の方へとその軌道がどんどんと伸び始めている。
「おばぁっ !」
叫び声とともに、甲太郎が飛び上がる。
「……あれ ?」
彼がいたのは学校の屋上、背後には落下防止の金網、辺りには巨大なひまわりも巨木のように太い蔦や茎も屋上に開けられた筈の穴も見当たらない。
雲ひとつ無く、澄み切った青空を雀が三羽、忙しなく飛んでいた。
「まさかあんな夢を見るとは……」
まだ眠たそうな顔つきに眠たそうな声で呟きつつ、甲太郎が廊下をのそのそと歩いている。
ひまわりのマリーちゃんの怪物化は全て甲太郎の夢の中での出来事であった。
「あーあ、っとに、でも今朝買って冷やしといたコーラがそろそろいい具合になってる筈だからな」
廊下を歩いていた甲太郎がドアノブの付いた扉の前で立ち止まり、ドアノブを回し扉を開く。
理科室へ向かう扉である。
そして、理科室の中へと入った甲太郎が中へ入ると、立ち止まった。
「……何、やってんだ」
立ち止まった瞬間そう、言葉を放つ甲太郎、彼の視線の先にはしゃがみこんだ大きな白衣の小さな少女、霧崎知恵に茶色の鉢に植えられた小さなひまわり。
「何だ、コータローか」
「実は私が育てたひまわりの『マリーちゃん』の元気が無いから栄養剤を」
知恵がそこまで言った所で、甲太郎は知恵の方へと近づき、何も言わずに鉢からマリーちゃんを引っこ抜いた。