第5話
エヴァンは幼い頃、学校で初めて友達アネツカと出会い、彼女は彼の世界に小さな光をくれた。
共に探偵となり国を守った二人だったが、ある日アネツカは反逆者として捕らわれる。
残されたエヴァンは政府を信じ続けようとするが、心の奥に不気味な疑念が静かに芽生えていく。
そして今日、孤児院で子供たちを抱きながら、気づかぬうちに恐ろしい問いを胸に抱いてしまう―。
第5話
-19年前、エヴァンが8歳の頃-
エヴァンはヨハンと一緒に外出した。
「おじさん、それでどこに行くの?」
ヨハンは快活に笑いながら言った。
「お前もそろそろ友達を作るべきだろう。今日から学校に行くんだ!このおじさんが子供の頃は学校なんてなかったのにさ…世の中、本当に良くなったな、ハハハッ」
エヴァンは首を振って言った。
「本当におじいちゃんみたいだ…!」
「この野郎!これでもまだ花の中年だぞ、こんなにすらっとしてカッコいいおじいちゃんがどこにいる!」
「はいはい…ところで学校ってどんな場所なの?」
ヨハンはエヴァンの頭を撫でながら歩いた。
「学校は20年前、国民の教育を促進するために推進された事業だ。簡単に言えば友達と集まって勉強したり遊んだりする場所だと思えばいい。」
「俺、友達いないけど??」
「心配するな、友達は作ればいいんだ。小学校4年、中学校4年、その後は個人の能力に応じて国家が指定した職業特化教育機関で4年。こうして合計12年間学校に通うんだが、友達一人くらい作れないわけないだろ、ハハハ!」
訓練やその他の教育を受けながら、同年代と一緒に過ごしたことのないエヴァンは少し躊躇した。
その様子を見たヨハンがエヴァンの手を握って歩きながら言った。
「実は俺の失敗なんだ。この年になるまで国民のためだと任務ばかり追って生きてきて、お前に必要なものを考えもしなかった。」
「俺に必要なものって何?」
ヨハンは快活に笑って言った。
「友達ってやつさ!ライバルになってくれるかもしれないし、支えになってくれるかもしれない、あるいは道しるべになってくれる、そんな存在を必ず見つけてほしい。」
そうして学校に到着したエヴァンはヨハンと別れ、教室に入った。エヴァンを含む20人の生徒は初めはお互いぎこちなかったが、先生が用意した自己紹介の時間が終わるとすぐに仲良くなった。
エヴァンは初めて友達と話をしながら、よく分からない気持ちになったが、嫌ではなかった。新しくできた友達の中で、白金の長い髪をきれいに編んだ女の子がエヴァンに近づいてきた。
「エヴァンって言ったよね?私はアネツカ。」
エヴァンはぎこちなく笑いながら言った。
「うん…そういえば、さっき自己紹介の時も俺のこと見てたよな…?」
「うん、そうだよ!君ってすごく不思議な目をしてると思って。なんか濁って暗いのに、確かにかすかに輝いてる。」
「何言ってるのか全然分からないんだけど??」
アネツカはくすくす笑いながら言った。
「ただ、不思議な目をしてるなって。」
「そ、そう。」
そうして時間が流れ、3ヶ月が過ぎたある日。
アネツカはエヴァンの一番の親友になっていた。
突飛だけど考え深そうなアネツカは、エヴァンにとっても少なからず気になる存在となり、少しずつ好意が積もっていった。
平和だった昼休み、アネツカがエヴァンに尋ねた。
「ねぇエヴァン、君の夢って何?」
エヴァンは初めて好意を抱いた相手からの突然の質問に一瞬たじろいだが、自然に答えた。
「俺は探偵になりたい。国民のために色々な事件を捜査して、国民の日常を守りたいんだ。」
アネツカはにこにこしながら言葉を続けた。
「じゃあ私も探偵やる!」
エヴァンは顔を赤くして尋ねた。
「それってどういう意味だよ?」
アネツカはくすくす笑いながら言った。
「ただ!ひひひ」
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そうして時間が流れ、エヴァンとアネツカは20歳になり、一緒に活動しながら恋人として命を預け合う仲間として、お互いを信じ頼り合っていた。二人はたった一人でも国民の幸福のためならどんなことでも厭わない探偵として有名になった。
しかし、ある日アネツカは一言の無線を最後に体制不服従および反乱分子という名目で政府に連行された。
エヴァンはベッドで目を閉じたまま考えた。
『アネツカ…あの時どんな選択をしたんだ…』
『そうだ、この既視感はあの時感じたものに似ている。何かが間違った方向に進んでいるような…』
『いや、理性的に考えよう。現体制が今の社会を維持するのに不可欠だという事実は変わらない。少ない資源と狭い領土、増え続ける国民。巨大な力を持つ政府がコントロールしなければ社会は崩壊するだろう。』
『今の社会は非常に不安定で危うい。放射能や怪物への不安は日常に溶け込み、心のどこかに根を張って常に機会をうかがっているようだ。人々は自力で日常を維持する力がない。求心点を、今の社会が安全だという強い信念を与えるためには政府の力が強くならなければならない…分かっているけど…この既視感が消えない。』
無数の思考の破片がエヴァンの頭の中を乱雑にかき混ぜた。
それは『次善』何が間違っているのかは分からないが、選択の手段がないため、エヴァンは目を閉じた。
いや、もしかすると本能的あるいは理性的に問題を認識していたのに、目を背けたのかもしれない。
多数の命を天秤にかけることはできず、自分で判断するにはあまりにも多くのものが複雑に絡み合っていた。
後に、エヴァンはこの日を後悔し絶望した。
目を閉じ耳を塞いで振るった『正義』という名の剣は、あまりにも重かったのだと遅れて知ったから…
エヴァンは数多の思考を後に残したまま目を閉じた。
翌朝、今日はエヴァンに休息しろという命令が下った。早朝エヴァンはベッドでネロネロルンルンニャンのパジャマを脱ぎながら考えた。
『おかしい…確か政府は反逆者たちが大きな計画を進めようとしているのを知っているはずなのに、このタイミングで休みだなんて』
『それに昨日、なぜ政府はjについては全く知らなかったのに、全部知っているように話したんだ?システムに脆弱性があるのを隠したいってことなのか…』
『そしてjに関する資料は極めて制限的で詳しい情報もない…確かに誰かが意図的に消したんだ…』
『まぁ、政府が隠すものなら理由があるんだろう。必要な手続きなんだ。俺はただ政府を信じて国民を守るだけ。』
エヴァンはベッドから起き上がり、いつものようにバイクに乗って外壁へ向かった。
今日もいつものように淡いピンク色の空と
低く響く不気味な怪物たちの悲鳴。
エヴァンは走る途中、遠くで動く巨大な怪物を見て考えた。
『あんなものが存在する現実でも人は生きていく。
滅亡の後も人は生きていくさ、恐怖を乗り越えて今日を、明日を生きていくんだろう。』
『彼らの大切な今日のために、俺は何だってやる。それが捨てられた俺を育ててくれたおじさんに教わったすべてだから。』
エヴァンは再びバイクに乗って家へ向かった。
エヴァンはこの13セクターで最も遅れている孤児院を支援し、休みの日には必ず訪れて子供たちの世話をし、特別授業を行う。
保育園に入ってきたエヴァンを見て、保育園の教師ヨアンナが挨拶しながら出迎えた。
「今日も来られたんですね、エヴァン様!」
エヴァンは嬉しそうに笑って挨拶するヨアンナに無表情で手を振った。
「ヨアンナ、久しぶりですね。子供たちはどうですか?」
「うちの子供たちは今日も元気で丈夫ですよ!」
エヴァンはヨアンナの少し大げさなリアクションを見て気まずそうに笑いながら言った。
「はは…まだ子供たちのご飯作ってるんですよね?俺も手伝いますよ。」
厨房に入ったエヴァンが料理人に尋ねた。
「今日のメニューは何ですか?」
「あら若造、今日も来たのね?探偵さんは休みの日は休まなきゃ!今日は白ご飯と炒めた肉料理を作るのよ。世界政府がいつも子供たちに食べさせる食料を提供してくれるおかげで、毎日こんなにたくさんの子供たちが飢えずに済むんだもの!本当に良い世の中よ、ホホホ」
エヴァンはシャツの袖をまくり上げて、50人分は調理できそうな大きな中華鍋の前に立った。
「俺も手伝います。」
「ちょっとちょっと、事件事故を解決する探偵さんが料理なんて、私がやるから休んでて」
エヴァンは珍しく微笑んだ。
「俺がやりたくて。子供たちのために少しでも手伝いたいんです。」
料理人たちの称賛の中で、エヴァンの顔には影が落ちた。
『皆を騙しているという事実はつらいことだ。どうあれ俺は人を殺してこの平和を維持している。生きて息をする人間を殺したという罪悪感は、正義という名でも簡単には消えない。』
『俺は今、自分が許されるための手段を作っているのかもしれない…』
『時々こんな考えが頭をよぎる。もし本当に万が一、俺の価値観が間違っていたら?俺が殺してきた無数の命が俺を縛る足かせになって呪いの声が聞こえるんだ。』
『もしかすると夜遅くに低く響く怪物たちの悲鳴は、彼らが俺に向かって放つ呪いなのかもな…』
『なんだか…目が回る…』
その時、小さな誰かがエヴァンの足に抱きついて無邪気に言った。
「エヴァン先生!!久しぶりです!!」
「こら!!探偵さんがお疲れなんだから!」
我に返ったエヴァンは、自分が炒めている肉と幼い子供を見ながら微笑んだ。
『どうあれ今ここは世界政府の恩恵を受けて平和に保たれている。新しい命が生まれ、育ち、育てられる。』
『そうだ、世界政府があるからこの子が笑っていられるんだ。なら政府を守り従う理由は十分だ。』
エヴァンは子供を抱き上げて言った。
「今日の昼ご飯は肉炒めだよ。どうだ、俺が作った肉炒め、美味しそうだろ?」
「うん!!」
そうして時間が過ぎ、エヴァンの授業が始まった。
教室には10代前半から後半まで様々な子供たちがいた。
「今日は特別講義をするよ。みんな社会化教育はある程度受けてるよな?」
一番前の列に座っていた19歳くらいの眼鏡をかけた女子生徒が緊張した様子で言った。
「私たちは世界政府の指示に従って、それぞれ与えられた職業を遂行し、食べ物や服、それに住居を分配されます!そ、それに与えられた職業で遂行能力が高く評価されると、社会階級の特進も可能だと習いました…!」
「そうだ、その通りだ。政府はある基準に基づいてそれぞれに最適な仕事を与える。俺たちはそれぞれの仕事をちゃんとやれば、みんなが幸せな生活を送れるってことだ。じゃあ各職業の特性についての教育を始めるぞ。」
その時、まだ10歳くらいに見える幼い子が尋ねた。
「社会階級って、正確には何ですか…?」
エヴァンは黒板にピラミッドを描きながら言った。
「いい質問だな。まず俺たちの社会は4つの階級で成り立ってる。階級を分けた理由は、社会に大きな力になる人材を探し出して分類し、特別教育をして特別な仕事を任せるのが一つ目。社会への貢献度に応じて差をつけて分配するためが二つ目の理由だ。」
「さて、階級の一つ目は一般市民だ。君たちや俺が属する階級だな。二つ目は二等市民、三つ目は一等市民だ。そしてその次が指導者階層、一番上には総統閣下がいる。」
「ただし、序列のために区別したわけじゃないから誤解するな。全ての市民は社会のために献身し、指導者階層は市民のために献身するんだ。」
-チンチンチーン-
エヴァンは時計を見て言った。
「しまった、時間オーバーだな。職業については次に話そう。みんなやりたい仕事を考えておくこと、次の授業までの宿題だ。」
そうしてエヴァンの特別授業は終わった。
生徒たちはそれぞれやりたいことを口にし、自分にそれが与えられることを願っていた。
今日も アンニョンハセヨ! 実は 来週に アップロードした予定だったけど なんーか 我慢できなかくて 今日アップロードしてました!まー まだ 色々ストーリーが のこったから 早く 見せてあげたい感じですね! とにかくいつも読んでいただき、ありがとうございます。