第3話
エヴァンとステラは廃鉱へ向かう。
初任務に胸を躍らせるステラの奥には、罪なき人を守りたいという痛ましい過去があった。
そこでエヴァンは、世界政府に戦争を仕掛ける反乱軍、そして死んだはずのJの姿を目の当たりにする。
やがてステラに狙撃の脅威が迫ると、エヴァンはためらいなく駆け出した。
第3話
19セクターの廃鉱へ向かう、もう使われなくなった道路。
エヴァンはステラと一緒に、どこか青白く見えるその道路を素早く走っていた。
「ステラ、今回の捜査が初めてだと言っていたか?」
ステラが期待に満ちた子供のような声で言った。
「はい、そうです! 本や映像でしか見たことのなかった現場だなんて.. あっ、ちなみにこう見えても探偵学校の首席卒業生なんですよ!!」
エヴァンは陽気な彼女からは専門性というものを全く感じ取ることができなかった。
『どこかぼんやりして見えるな..』
「よし、それじゃ基本的な質問をしよう。我々がなぜ対外的に探偵という名前を使っているのか知っているか?」
「もちろん知ってます! 反乱軍の存在を隠すため、それと国民にあまり脅威的に見えないようにするためです。国民が反乱軍の正体を知ってしまったら互いに不信感が溜まり、社会が再び崩壊するかもしれないので、それを防ぐために私たちは対外的には探偵として活動すると教わりました!」
「よし、じゃあステラ。お前が考える正義とは何だ?」
「え? 社会の秩序と生命、そして国民を守る現世界政府の体制を守護することです!」
エヴァンは首を横に振った。
「教科書の内容じゃなくて、お前自身が考える正義だ。
俺たちは人を殺し拷問しながら人々の暮らしを守っている。だからこそ、誰よりも確固として明白な正義を実現しなければならない。お前が考える確固たる正義とは何だ?」
ステラはしばらく言葉を失った。
「私は、罪のない人が幸せに生きることが正しいと思います。」
彼女の声には胸が痛むような事情がありそうだったが、エヴァンはあえて問いたださなかった。
今まで天真爛漫だった彼女が自分から話を切り出さなかったのなら、聞かない方が正しいと思ったからだ。
そして少しの沈黙。
最初に沈黙を破ったのはステラだった。
「10年前に私の両親が亡くなりました。母は普通の主婦で父は軍人でした。」
エヴァンは遠くに見える外郭の壁を見ながら考えた。
『軍人か.. 領土拡張や外の調査のため、いつも要塞の外にいる英雄たち.. その末路は大体不可解な死だ。怪物にやられたんだろうな..』
ステラは話を続けた。
「案の定、父は10年前、私が10歳の年に亡くなりました。 一緒に任務を行っていたという同僚の証言によれば、やっぱり怪物に殺されたそうです..」
「なぜかこの話は一日で私が住んでいた居住区域に広まりました.. 時間が経つにつれ住民たちは私たちを呪われていると言って排斥し始めました..」
ステラは怒りを含んだように荒々しく言った。
「そんなある日、母は本当に仲の良かった近所のおばさんからもらった食べ物を食べて、名前も分からない毒に中毒して何日も苦しんだ末、痛ましく亡くなりました..」
エヴァンは唇を噛みながら考えた。
『よくある話だ.. 国民は核と放射能、そしてあの悲鳴を上げる怪物への恐怖が骨の髄まで本能に刻まれてしまった。国民を守る要塞である世界政府を守らなければならない理由でもある。政府の力が強ければその分国民が恐怖で震え分裂することも減るだろう..』
ステラは多くの感情を抱えた短い沈黙の後、再び天真爛漫な声で言った。
「私は罪のない人が幸せに生きられるようにと探偵学校に入りました。私たちを守る垣根がしっかりと強くなればなるほど、人々は恐怖から遠ざかり、こんなことはなくなるはずですから!」
少しの沈黙が続いた後、エヴァンたちは19セクターBゲートに到着した。
ゲートは各セクターを分ける高い壁に約1kmずつ間隔を置いて作られた門だ。
ゲートは外壁の半分ほどの高さで、50m程度の高さを持っている。
エヴァンはステラにネロネロルンルンニャンのメインキャラクター、ネルニャンが描かれた通信機を渡して言った。
「ステラ、作戦を説明する。ここ19セクターは昔大規模な石炭鉱山だった場所だ。だから建物より広い空き地が多い。つまり狙撃に最適化されているという意味だ。俺なら必ずここに狙撃手を配置する。お前は壁の上を大きく回りながら狙撃手を探せ。見つけたら発信ボタンを押して正確な位置を伝えてくれ。」
ステラは真剣なエヴァンのブリーフィングとネルニャンが描かれた通信機があまりに似合わなくて、笑いをこらえて唇がぴくぴくした。
「は..はい.. ふぅ.. 趣味がかわいいですね」
エヴァンは無愛想に言った。
「これは俺の趣味じゃない。ユーモアを持つための俺の努力だ。」
ステラはこらえていた笑いを吹き出してしまった。
「成功しましたね、くくくっ」
エヴァンはステラの笑いを見て満足したように口角をわずかに上げた。
「お前が狙撃手を見つけている間に、俺は反乱軍に紛れて証拠を集め、反乱軍を逮捕する。世界政府の調査によれば9時に狙撃手が交代するから、今が潜入に最適の時間だ。」
二人の足が止まったのは廃鉱の中に作られた大きな会議室だった。
『直接入りたいが、出入り口は一つ、警備二人、会議室内部の構造は把握不可能か…ちっ』
エヴァンはバブが警備と雑談をしている隙に、
ジャケットから超小型の貼付式盗聴器を会議室入口へ向かう道に投げた。
すぐに反乱軍たちがその道を通り、その中の一人の靴底に盗聴器が付いた。
エヴァンは左耳にイヤホンを差し込み耳を澄ました。
-一方、19セクターの壁の上-
ステラは慎重に狙撃手を探した。
「狙撃手を配置するならどこがいいか考えよう…四方が平地のこの場所で狙撃手は怖いものはない。
むしろ命中率を上げるため大胆な行動に出る可能性が高い。わざわざこんな場所で遠くから狙撃するより、中距離で精度を上げて対象を仕留める方が効率的だろう…」
「じゃあ反乱軍は狙撃手を何のために配置した?
侵入者の殺害…?もっと正確には廃鉱の隠れ家を守るため!なら隠れ家に最も近い狙撃ポイントが正解だ…!」
ステラはすぐに低い姿勢で壁の上を走った。
ステラは向かいの壁の上で日光を反射して光るスコープを見つけ、すぐに発信機を押してエヴァンに位置を説明した。
「よし、あとは静かに待てば•••」
-バン!!-
轟音とともにステラの横を弾丸がかすめていった。
ステラは素早く壁の後ろに体を隠した。
「冗談じゃないね..どうしてこの距離で..」
-廃鉱の会議室-
会議室の外でエヴァンは息を潜め、盗聴器の音に集中していた。
会議室の中では変調された声で誰かが話した。
「全員集まったか?各チームのリーダーもほとんど来てくれたな。さて、会議には初めて参加する者もいるだろうから簡単に紹介しよう。」
「俺は現反乱軍を率いている隊長…」
その時、異常に敏感なエヴァンの耳にピーと単一周波数帯の音が聞こえた。
「Jと言う。」
エヴァンは少なからず驚いた。
『Jなら確か1級犯罪者リストにあったはずだ。新世紀最悪の犯罪者であり反逆者だとか。改造人間の中で最強かつ極悪非道だったと…でも27年前確かに射殺したと記録されていた。』
『どういうことだ?彼の思想を継いだということか…Jが生きている可能性も考慮すべきか。正確にどう射殺したのか書かれていなかったのも少しおかしかったしな。』
会議は続けられた。
「さて自己紹介は終わりだ、これからの計画を説明しよう。」
「俺たちは世界政府との戦争を準備する。その前に武器と資本を集めなければならない。」
「武器と資本は現政府の公式国教でありカルト集団、逆十字教を潰して彼らが所有する武器と資本を奪う。」
エヴァンは両耳を疑った。
『反乱程度じゃない、戦争…だと…それに逆十字教は国民の大多数が信じている宗教、国民はそこで安心を得て団結する。つまり混乱した世界を生きる全ての人に必要な安息の場所という意味か…』
『汚い反逆者どもめ…』
その時、会議室の扉を開けて荊の冠をかぶり顔を仮面で覆った男が歩いて出てきた。
その歩みからは何とも言えない威圧感が感じられ、エヴァンはすぐにそいつがJだと気づいた。
Jは歩み出て変調された声で言った。
「まぁ今はこれくらいにしておこう。真実を話したところで信じはしないだろうしな…一つだけ忠告してやる、お前の正義は道を誤っている。今歩いているその道が本当にお前が望んだ正義なのか?まぁ、ゆっくり考えて後でまた会おうじゃないか。」
Jはほんのわずかに沈黙を飲み込んだ。
「エヴァン。」
エヴァンはすぐに銃と剣を抜いたが、何もできなかった。
『くっ…奴はちくしょう、武器一つ持ってないのに何だこの威圧感は…今指一本でも動かしたら即死か…』
Jはエヴァンに近づいて言った。
「いい判断だ。感が異常にいいな。それじゃ次を期してここでお別れだ。」
Jが再び会議室へ入った瞬間、爆音と共に会議室が崩れ、廃鉱全体が揺れ始めた。そのと同時に単一周波数帯の音が途切れた。
エヴァンは急いで廃鉱の出口へ向かって走った。
「くそっ!ここで行われた会議は目眩ましか。それより俺の名前を知っていやがる…すでに世界政府の所属人員くらいは把握しているということか。」
エヴァンは受信機をつけた。
「脱出する前に狙撃手の位置を確認しなければ。」
受信機から短い電子音の後、録音されていたステラの声が再生された。
「え..エヴァンさん CゲートとDゲートの間の壁の上に狙撃手を見つけました..! 現在私を見つけて対峙中です..!!」
エヴァンは息を切らすステラの声を聞き、速度を上げた。
「くそっ!今すぐ狙撃手を排除しなければ。」
エヴァンは廃鉱を脱出し、少し周囲を見渡した。
『狙撃手の位置は現在約500m離れた所と推定、バイクはさっきの爆発で半壊。ステラの位置は特定不可..』
エヴァンはナイフを取り出し、狙撃手がいるCゲートとDゲートの間へ向かって走った。
「ステラ、もう少しだけ待ってろ。」
『芽生えた新芽と育つ蕾は守られなければならない!』
エヴァンは遠くの壁の上を見つめた。
「一発だけ避ければいい。」
その時、壁の上で光がきらりとした。
『スコープ•••!』
光がきらめいた瞬間、同時に轟音が鳴った。
わずか400mほどから対物狙撃銃の巨大で速い弾丸が荒々しく飛んできた。
エヴァンは体を右へ投げ出し地面に一度転がって、紙一重で弾丸が肩をかすり軽い傷だけ負った。
そんな中でもエヴァンの視線は発射位置を捉えていた。
「もう見つかってしまった時点で狙撃手はこれ以上『俺にとって』脅威ではない。」
エヴァンは走る速度を上げた。
対物狙撃銃がもう一度撃たれたが、エヴァンは弾道をあらかじめ知っていたかのように、まるで未来を見ているように最小限の動きで弾丸をかわした。
だがエヴァンは未来を見ているわけではない。単に、一度の発射で狙撃手の位置を特定し、地形条件と風向き、自身の進行経路を基に狙撃手が狙う地点と発射タイミングを正確に予測して避けただけだ。
エヴァンは十数秒で壁に到達した。そしてナイフにワイヤーを結び、100mもある壁の中腹に強く投げ込んで突き刺した。続けてワイヤーを引っ張りながら壁を駆け上がった。
その動作をもう一度繰り返し、エヴァンは数秒で壁の上に到達した。
壁の上には反乱軍の紋章を付けた者ではなく、赤い聖職者服を着た逆十字教の司祭がいた。
エヴァンは驚いて聞いた。
「逆十字教の司祭がここに何の用だ? それに政府所属の探偵に二度も発砲するとは。政府と敵対するつもりか?」
赤い聖職者服を着たその男が言った。
「私はただ神の計らいを信じ従う者にすぎない。」
エヴァンは戦闘の構えを取りながら考えた。
『予想するにあいつは反乱軍を狙いに来た奴じゃない。反乱軍が目的なら俺を狙わなかったはずだ…』
エヴァンは周囲を見渡した。
『赤い司祭の後ろに転がる三つの死体、元々ここで見張りをしていた反乱軍だろうな…』
「くそっ!おい赤い司祭!!何を狙っている!」
赤い司祭はスナイパーを背負い、拳銃を取り出して言った。
「神の計らいを信じ行うのみ。死ね。」
赤い司祭は5mほどの近距離で三発の弾丸を撃った。エヴァンは発射と同時にナイフを抜き弾道を逸らした。
「これしきで俺を仕留めようとは大きな間違いだ。」
エヴァンは素早く距離を詰め、赤い司祭の首へナイフを振り下ろした。
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