第15話
「悲鳴、そして……存在してはならないもの。」
鉱脈の奥深く、姿を消した反乱軍の痕跡を追うステラ。
そこで彼女は、誰かが密かに暮らしていた「痕跡」に気づく。
「行政上、存在しない子供たち」――
リンの口から語られた真実は、エヴァンの信念にひびを入れる。
そして、少女の悲鳴が響き渡る。
闇の中へと飛び込んだエヴァンが目にしたのは、
**言葉では説明できない“何か”**だった。
存在してはならないものと、守るべきものの狭間で。
エヴァンは再び、選択の境界に立たされる。
第15話
ステラはネリュニャンギ通信機を何度も確認したが、受信もされず、別に受信が来ることもなかった。
そうしてステラがエヴァンを心配していた時、オスが言った。
「ステラ、ここだ。ここが鉱脈の入り口だよ。」
鉱脈はその名前の通り、広い灰色の岩石地帯でできた平地と、その平地の端にまるで巨大な壁のようにそびえ立つ石山に、大きな穴があちこちに開いていた。
穴には外と繋がっている長いレールが敷かれており、すべてのレールは鉱脈の入り口に集まるように設計されていた。
オスが石山に空いた穴の中で中央を指差しながら言った。
「あそこが反乱軍が入ったっていう鉱脈だ。すぐに行ってみるか?」
ステラは唾を静かに飲み込み、歩を進めた。
「はい!すぐに行ってみましょう!」
鉱脈の中に入ると、外とは全く違う冷たい空気がステラの肌を刺激した。
さらに照明も暗く、消えたままの照明もあちこちにあり、陰気な雰囲気をさらに増していた。
ステラは暗い地面を注意深く見ながら道を歩いた。
「鉱脈の特性上、地面には細かい砂が厚く積もっている。足跡は消した痕跡があるけど、方向を推測するのは可能に見える。」
鉱脈の入り口からあまり歩かないうちに、三つの分かれ道が現れた。
「うーん、やっぱり反乱軍はこの鉱脈の内部を正確に把握してる。そして、探しているものがどこにあるかも正確に分かってる。」
オスが不思議そうに尋ねた。
「どうして確信できるんだ?」
「足跡を見てください。消されたのが多いけど、かすかに残ってます。彼らも発覚したから、焦って完全には消せなかったのでしょう。そして迷った痕跡もなく、三番目の道にまっすぐ足跡が続いてます。これは明確に道を知っている証拠です。そして…」
ステラが三番目の道を見つめながら低く言った。
「引き返した痕跡もないってことです。」
オスは寒気を感じたようだった。
「危険ってことじゃないのか?」
「注意しないとですね。でも大丈夫です。私の先輩である探偵さんに助けを求めておいたので、何か起こる前に来てくれるはずです。」
オスが心配そうに尋ねた。
「連絡がつかないんじゃなかったのか?」
ステラは両目を輝かせながら言った。
「信じてますから。きっと来てくれると信じてます!」
―同じ時間、製鉄所の配管室―
エヴァンは配管に腰を下ろし、壁にもたれながら、空虚な目で複雑に絡み合った無数の配管を見上げていた。
灰色の配管は、どこがどこに繋がっているのかすら見当がつかないほど入り組んでいた。
なぜかエヴァンは、その複雑に絡んだ配管から目を離すことができなかった。
ビー――
依然として通信妨害装置が単一周波数で敏感に反応し、エヴァンの耳を苛立たせていた。
だが、エヴァンはあえて通信妨害装置を切らなかった。いや、切ることができなかった。
エヴァンは宙に手を伸ばしながら呟いた。
「全部、ねじれて絡まってる……まるであの配管みたいに……」
「……俺が守りたかったものって……俺が今まで守ってきたものって、何だった……?」
エヴァンは唇の下を血がにじむほど噛みしめ、耐えるように声を吐き出した。
「誰かが……無知だからこんなことをしてると思ってるのか……? 違う。全部わかってる。全部わかってても――この世界は、守らなきゃならないんだ……。一夜にして世界がひっくり返ったら、その混乱は……その被害は……」
エヴァンは言葉を繋げられなかった。だが、必死に言葉の端をつかんだ。
「……全部、市民たちが背負うことになる。だから……仕方ないこともあるだろ。なあ……?」
「くそ……わからない……親父……今回も答えをくれよ……」
エヴァンはずっと耳障りな単一周波数音を鳴らしている通信妨害装置を取り出すため、ポケットに手を入れながら呟いた。
「これがなかったら、こんな不満すら口にできない世界……いっそ壊してしまったほうが……」
コートの内ポケットの振動を感じて手を差し入れたエヴァンが取り出したのは、通信妨害装置ではなく、ネリュニャンギ通信機だった。
潜入モードにしていたため、ステラからの受信を知らせるために、ずっと無音で微かな振動を発していたのだった。
エヴァンの空虚だった目に、一瞬光が差し込んだようだった。
「ステラ……そうか、そんなやつもいたな……」
エヴァンは震える脚で立ち上がりながら言った。
「諦めちゃいけない理由……くだらない正義や理想のために、俺はこの手を血で汚したわけじゃない。」
エヴァンは拳を握りしめ、自分の頬を拳で強く打った。
「諦めるな。もっと冷静になれ。理性的に判断しろ。今必要なのは、感情でも良心でも正義感でもない。」
「強くならなきゃならない。誰にも屈しないくらいに……屈服して、転がりながら、時を待つんだ……そうすれば、時が来たときに、間違っているものを正せばいい。」
エヴァンは通信妨害装置を切りながら考えた。
『どのみち、政府を守らなきゃならないってことは変わらない。体制が崩れれば、大混乱が起きるからな……』
エヴァンは配管室を出ながら、床に落ちていた短剣を拾って腰の鞘に差し込んだ。
『やるべきことは変わらない。政府を守りながら、少しずつ正していくんだ。市民たちの平和のために。子供たちの日常を守るためにも、守らなければならないもののためにも。』
エヴァンはネリュニャンギ通信機を手に、足早に歩き始めた。
―鉱脈の内部―
ステラが反乱軍の痕跡を探しながら進んでいた時、ふと足を止めた。
そして低い声でオスに言った。
「ちょっと待ってください……反乱軍の二人以外に、誰かがいます。」
「誰かって……?」
「足跡が、突然もう一つ増えています。消した痕跡がないところを見ると……反乱軍とは別の理由でここにいて……たぶん……」
ステラはオスを見つめながら、重く慎重に口を開いた。
「たぶん、この鉱脈の中で生活している人がいるようです……」
「それは、どういう意味だ……!?」
その瞬間、ステラの脳裏に、妙に鉱脈への接近を警戒していたシンの態度がよぎった。
「何であれ、16セクターの管理者が悪事を働いてる証拠でしょうね。」
その時、オスがステラの後ろを指差して言った。
「誰かが来てる……!」
ステラが慌てて振り返ったが、すでに遅かった。
白い制服を着た女が無表情な顔で鉄の警棒を頭上に振り上げていた。
その瞬間、風を切る音とともに、濃い茶色のコートがステラの前に立ちはだかった。
直後、鉄の警棒は鋭い金属音を響かせて跳ね返された。
「ステラ探偵は推理だけじゃなく、戦闘術も基本くらいは身につけておくべきだ。」
濃紺の髪、淡く光る青い目。
黒いタートルネックの上に茶色いコートを翻しながら現れた、鋭い目つきの男。ステラが知っている、ただ一人の人。
いつも冷静だが、その中に優しさを隠している、彼女の先輩。
ステラが知っている、そんな男は一人しかいなかった。
ステラは嬉しそうに叫んだ。
「探偵さん!!」
エヴァンに鉄の警棒を防がれた反乱軍の女が、悔しそうに言った。
「よそ見するな!!」
エヴァンが女に問いかけた。
「かなりの膂力だな。反乱軍の末端ではないようだな。
名を名乗れ、犯罪者。」
女はエヴァンと距離を取りながら言った。
「私は誇り高き反乱軍のリンだ。」
エヴァンがリンの後ろを見据えながら言った。
「もう一人のやつは、何かを探すためにさらに奥まで入ったようだな。それはたぶん、16セクターの管理者が隠した隠匿資産の類だろう。」
リンがはっとして尋ねた。
「それをどうして……!?」
エヴァンはステラをちらりと見てから、再びリンを鋭く睨んだ。
「優秀な助手がいてね。過剰なくらいに逐一報告を残していたからな。」
リンはエヴァンの言葉に鼻で笑いながら言った。
「けどな、お前たちが知らないことが一つある。目を閉じて耳を塞いでるから、この世界がどれほど腐ってるか分からないんだ。すべての市民が監視されるこの世界で、どうやって隠匿資産なんてものを作れたと思う?」
それはエヴァンにとっても解けない謎だった。
『政府の目をかいくぐって隠し財産を作るなんて、本当に可能なのか……? 本人自身も、他の誰もそれを見たり聞いたりできないようにすれば……そんな方法が本当にあるのか?』
リンは悔しそうに唇を噛んで言った。
「“名前のない子供たち”。彼らは生まれたときから親に捨てられ、出生届すら出されていない……行政上、存在しない子供たちなんだ。」
その場にいたエヴァンとステラ、そしてオスは、リンの言葉を聞いて一瞬、頭の中が真っ白になった。
「名前のない子供たち」という言葉が、何度も頭の中で反響した。
その時、ステラが激しく首を振って叫んだ。
「う……うそでしょ! そんなの、政府が知らないはずがない!!」
リンはステラを見つめながら、詰め寄るように言った。
「私は、政府が見て見ぬふりをしていると思ってる。権力者たちの支持を得なきゃいけないからね。」
ステラは一歩前に出て、感情を抑えきれずに叫んだ。
「そんなはずないじゃない! 証拠もなく捏造しないでよ! 政府は……市民のために、体制を守るために、いつも努力してるのよ!!」
ステラは切実な眼差しでエヴァンを見つめた。
まるで、「そうですよね? 探偵さんもそう言ってください」と言うように。
だが、エヴァンは何も言わず、リンをじっと見つめていた。
その瞳には、言い知れぬ動揺が浮かんでいた。
「名前のない子供たち」なんて……そんなの、本当にありえるのか?
政府の目を逃れて、どうやって……。
その瞬間――
エヴァンの脳裏を、何かがかすめて通った。考えてはならない、しかし消えない疑念……
常にエヴァンの周囲をまとっていた既視感だった。
『傍観……いや、もしかすると政府の主導で……?』
エヴァンはその考えを振り払うように首を横に振り、再びリンを睨みつけた。
「仮にそんなものがあるとしても、主犯を処罰して、搾取された子供を救えばいいだけだ。」
「ふざけないでよ。それができるとでも思ってんの!?」
エヴァンは短刀を引き上げてリンに向けた。
「俺が、そうしてみせる。」
その言葉を聞いたリンは顔を歪め、叫んだ。
「笑わせないで! 政府の犬のくせに! ここで殺してやる!!」
リンが鉄の警棒を思い切り振り回しながらエヴァンに襲いかかった、その瞬間――
鉱脈の深い闇の中から、少女の悲鳴が聞こえた。
「きゃあ――!!」
悲鳴と同時に、エヴァンは素早くリンの腕を弾き、彼女を地面に倒して制圧した。
そして短剣を取り出してステラに手渡し、リンの首元に突きつけさせるよう指示した。
エヴァンは視線を闇に固定したまま、静かに言った。
「ステラ。ふざけたことをしたら……首を斬れ。」
その言葉を残し、エヴァンは一瞬の迷いもなく闇の中へと飛び込んだ。
『ステラも探偵学校で基本的な戦闘術は習っている。すでに制圧された相手に負けることはない……』
エヴァンはさらに足を速め、闇の中を疾走した。
『これが最善の選択だ。ステラを信じて……俺はあの子を救わなければ。悲鳴が止む前に、もっと早く!』
一瞬でエヴァンは悲鳴の発信源にたどり着いた。
そこには衝撃的な光景が広がっていた。
用途もわからない広い空間に、十代ほどに見える少女が一人。
その前で、奇怪な悲鳴のような鳴き声を上げながら、
人の形をかすかに残しつつも異様に長く伸びた腕を振り回している、巨大な何かがいた。
壁の中にあるはずのない、壁の外の戦争の残骸。
自由の代償であり、人類が受けた罰。
自らが招いた、貪欲の果て。
それは、壁の外の怪物だった。
「これが……なんだって……!?」
ひーや 疲れたです! 今日も訓練の準備が 本当にやばかったです。でも 来週から 二種間アッパーロドできないだから がんぱっただす。




