プロローグ
滅びた世界、秩序に縛られた人々。
それでもなお罪を背負い、希望を信じる者たちの物語。
プロローグ
西暦2057年、世界の気候は最悪へと突き進んでいた。
暑くあるべき地域は寒さに苦しみ、寒くあるべき地域は暑さに悩まされていた。
これはすぐに食糧不足へと繋がり、世界の大部分は壊滅的な被害を受け、
第一次産業を主な収入源としていた国々は滅びた。
自然災害、そして食糧を奪うための他国によって。
こうして食糧戦争は国家間の戦争から、
アメリカを中心とする自由陣営とロシアを中心とする共産陣営の世界大戦へと発展していった。
そしてついに滅亡寸前、共産陣営は核兵器を使用し共倒れを図った。
予想だにしなかった核の使用により自由陣営は壊滅し、
遅れて発射された自由陣営の核弾頭が共産陣営を打ち砕いた。
この事件によって地球の大地のほとんどは
生物が住めない死の土地となり、
ロシアの凍てついたシベリアだけが人類の生存可能な場所として残された。
生き残ったわずかなロシアの要人たちは
シベリアに小さな政府を築き、生存に必要なインフラと資源を整えた。
やがて時が経つと地球温暖化が進み、
シベリアは次第に人が暮らしやすい温暖な地域へと変わっていった。
その変化に伴い、世界中から生存者たちがシベリア周辺へと集まった。
当然、ロシア政府の権力は強まり、
ついには世界に残された最後の土地の支配者となった。
しかし、世界中から押し寄せる避難民すべてを受け入れることはできず、
ロシア政府は財産を持つ者、政府に協力的な者、
そして幼い子供だけを選別し受け入れた。
残された避難民たちは外の世界に置き去りにされ、
やがて放射能を浴びながら次第に異形の姿へと変わり、
ついには人間とは呼べない巨大な怪物へと成り果てた。
こうして時は流れ、この小さな領土の中に
新たな世界の秩序と価値観が根付いていった。
そして約10年、二度のクーデターによってロシア政府は崩壊し、
「世界政府」と呼ばれる新たな政府が誕生した。
彼らは高度な科学技術を駆使して高い壁を築き、
怪物から人々の安全と生活を守り、
さらに滅びかけた世界に再び余暇の時間をもたらした。
技術は人々を休ませ、その安心はやがて世界政府への絶対的な忠誠へと繋がった。
これが世界政府樹立後5年間の出来事だった。
滅亡から15年、人類は大きな変化を遂げ、
世界政府は人々にとって疑いようのない救いとなっていた。
さらに時が流れ、世界政府樹立から20年。
政府は国家の安定と国民の健康を理由に、
全市民へのナノチップ移植を義務付けた。
ナノチップは現体制を守る名目で、
国民が見聞きするものを監視するために用いられた。
……こうして、彼らの計画は静かに始まったのだ。
「チチッ……チッ。」
エヴァンの無線機が鳴った。
「世界政府所属一級犯罪捜査課、探偵エヴァン。通信受信しました。」
無線の向こうから変調された声が命令を下す。
『エヴァン、ターゲットは確認したか? お前を送った理由は分かっているな?』
「居住地、生活パターン、周辺人物、全て把握済みです。あとは証拠を掴み推理すれば終わります。」
『頼んだぞ。今日流れるすべての血は国民のために。以上……プツッ。』
「今日流れるすべての血は……国民のために。」
……世界政府所属一級犯罪捜査課の探偵は、
表向きは事件を調査し国民を守る捜査機関とされている。
しかし実際には、一級犯罪者――すなわち国家反逆者を探し出すこと。
その過程を『捜査』と呼ぶ。
エヴァンは夜遅く、ターゲットの家に器用に侵入し、彼が帰るのを待っていた。
影に身を潜め、注射器に薬剤を満たしながら、
ただ静かに、扉が開くのを待つ。
……国家反逆者を見つけ出し、尋問すること。
それを『推理』と呼ぶ。
反逆の根を断つことこそ、俺の存在理由だ。
「ガチャリ。」
扉が開き、入ってきたのは二人の子供を抱いた若い女だった。
女は眠る子供をベッドにそっと寝かせ、嗚咽を洩らしながら小さく呟いた。
「うちの子たち……世の中はとても冷たく、狂ってるわね。
でもね……ママが、必ず、あんたたちには良い世界を……」
その言葉が終わる前に、エヴァンの注射針が彼女の首筋へと突き刺さった。
母親が愛を込めて紡いだ言葉は、その結末を迎えることはなかった。
「こちら探偵エヴァン。目標確保。搬送を頼む。」
眠る二人の子供を見つめ、エヴァンは複雑な表情を浮かべた。
「……恨むなよ。世界は今、崩壊寸前なんだ。
結局世界を支えるのは秩序で、その秩序は力から生まれる。
そしてその力は……信仰から生まれるんだ。」
……そうだ。政府の力が絶対であるという信仰を築かなければ。
再び戦争の悲劇を繰り返さないために。
しばらくして到着した搬送車に、気絶した女を載せ、
エヴァンは眠る子供たちを抱いた。
「心配するな。親の罪は子には引き継がれない。
世界政府が、お前たちを育ててくれる。」
エヴァンは搬送車に乗り込み、運転手からアイマスクを受け取った。
「探偵様、安全にお送りします。お疲れでしょう、少しお休みください。」
「いつもこうだな……まあ、政府の決定には従うだけだ。」
アイマスクをつけて約二時間後、
迷路のような道を越えて、一級犯罪者収容所へと辿り着いた。
エヴァンは眠る子供たちを抱いたまま、国土の外郭を囲む巨大な壁の上を歩きながら、静かに思いを巡らせた。
……ここはニュー・ワールド。
世界政府が新たに作り上げた国家だ。
絶望に覆われた世界に、新たな希望を芽吹かせるために生まれた政府であり、国だ。
高度な科学技術によって、安全区域の全域に巨大な壁を築き、
その壁が俺たちを守ってくれる。
エヴァンは壁の向こうの大地を見下ろし、小さく呟いた。
「……あの怪物たちから。」
壁の向こうには、関節が不気味に捻じ曲がり、
巨大な獣のような姿をした何かが、
悲鳴のような鳴き声を上げながら彷徨っていた。
「放射能による災厄……あいつらから国民を守るのが政府の仕事なら、
その政府を守り、国民の生活を守るのが俺の仕事だ。」
エヴァンは眠る二人の子供を見つめ、小さく呟いた。
「……お前たちの母親は、国民を支える国家に反逆を企てた。
だから俺はお前たちの母親を拷問し、殺さなければならない。
これは皆のためだ。だから謝る気はない。
必ず、お前たちは国家のため、そして互いのために生きろ。」
……
そして、数年が経った。
これは俺の後悔であり、贖罪の物語だ。
偽りの平和に騙された……いや、真実から目を逸らし、
両目を閉じて正義の剣を振るった、その報いだ。
俺の堕ちた血で、この罪が清められるわけでも、
死んでいった犠牲者たちを慰められるわけでもない。
だが、これからを生きる命に希望を、
新たな道を開けるのなら、それで十分だ。
反乱軍の白い制服を纏ったエヴァンは、
幾重もの死体の山の上で、
奇怪な何かに覆いかぶさられ、肉を喰われていた。
「……先に地獄で待ってるよ、アネツカ。」
エヴァンは霞んでいく意識の中で、短く呟いた。
「贖いなんて望まない……ただ、自分の罪への罰を受けたいだけだ。
これで……苦しみの鎖が……途切れれば……」
エヴァンは自分を喰い千切るその奇怪なものを抱き締めるように両腕を広げ、
か細く、最後の息を吐き出した。
「……ねぇ、俺は信じてるんだ。
希望はきっと芽吹く……あいつらは不条理に目も耳も塞がないだろう。
だから……俺たちは……信じてやるんだ……」
やーはろ みなさん 私は 趣味で 小説を書いている 零二とです。 実は 韓国人ですけど、 私の小説は 日本にもっと 似合いそうなのでここで文を書いています。
小説は GPTに 翻訳するけど、 今の話しは 自分で書いています。 多分 文法が 間違いと おもいますが、 ま!とにかく どうぞよろしくお願いします!