ビアンコ16歳 二度目の冒険者パーティー pt.2
この七階層のダンジョンで、アイアンナイトのランクでは五階層まで行けた。僕のレベルでは四階層でギリギリで戦えるって感じだけど、五階層の魔物だとかなり手強い相手だった。
そんな僕にミハイルさんはこう話した。
「ビアンコ、五階層のボスはオーガだ。おまえの実力ならいけると思うぞ。せっかくだから、オーガの戦いは前衛がおまえにやってもらおうじゃないか」
「はい、やってみます」
「このメンバーならオーガが倒せる。俺たちはサポートするから、安心して戦って来い」
僕はオーガとやりあっていると、僕のレベルではまだオーガに簡単に勝てないとわかった。僕はなかなかオーガに近づけなかった。得意の火魔法を使ってみても、オーガも火魔法使いだったから、余裕で僕の火魔法をぶっ飛ばした。僕の火魔法はまったく役に立たなかった。僕の剣も火魔法もオーガに届かなかった。
僕は作戦を練って考えている間につい油断してしまった。オーガが僕に火魔法を放って、僕は立ちすくんで、避けられず強く当たってしまい、重傷を負ってしまった。
「「「ビアンコ!」」」
(あーこれはやばいなー、熱いなー僕、このダンジョンで死ぬかもな。こんな僕がこのまま死んだほうがいいかもしれないけど)と僕は意外と冷静にそう考えていた。
そして僕の目の前でミハイルさんがオーガに飛び込んでいき、ブライアンさんは攻撃魔法をオーガにぶち込んで、そしてミハイルさんがまたオーガに飛び込んで斬りかかっていった。ミハイルさんたちはオーガの攻撃を避けながら、何度か追撃してオーガを倒した。あの時の僕は重症だった。僕は治癒魔法師のケリーさんに治療魔法をかけてもらいながら、ぼーっとアイアンナイトとオーガの戦闘を眺めていた。
僕は今まで危険な状況に落ちたことはなかった。僕はずっと自分が強いからだと思い込んでいた。実際はそうではなかった。僕はただ運がよく、自分より強いものに会っていなかっただけだった。
僕は今までただのうぬぼれ屋だった。
アイアンナイトとオーガの戦闘が終わった後、ケリーさんもそろそろ僕の治療を終わらせるところだった。アイアンナイトのおかげで、僕はなんとか生き延びることができた。
「ビアンコ、本当に悪かった、すまなかった。俺がおまえに無理を言ってしまった。許してくれ」ミハイルさんは申し訳なさそうに言った。
「いいえ、僕が油断したからです。皆さんに迷惑をかけてしまってすみませんでした。助けてくれてありがとうございました」僕は本当に悔しかった。
「いや、Cランクだからっておまえはまだ十六歳だ。十六歳のお前にオーガと戦わせたのは悪かった。本当にごめんな。今日はこの階層の休憩所でゆっくり休もう」ミハイルさんは責任感の強い人だから、僕を怪我させたことで本当に悔やんでいるんだろう。僕が弱いからなのに。
僕はもっともっと強くならなければならないと強く思った。
この7階層のダンジョンでアイアンナイトは五階層のオーガと戦った次の日、僕たちはこのダンジョンを出た。
僕はもう一か所のダンジョンにも行ってみたいとミハイルさんに話してみたら、他のメンバーも賛成してくれたから、三日後に行くことになった。
もう一か所のダンジョンは十八階層で、危険度は最初のダンジョンより高いところだった。
僕たちは一階層から六階層までは下級魔物ばかりだったから、僕たちはスムーズに進められた。六階層までは僕でも一人でも倒せる魔物ばかりだった。
7階層はぐっと難易度が高くなった。ボスはジャイアントアントだった。でもジャイアントアントは火魔法に弱いらしく、僕はファイアボールを連続で攻撃して一人で倒した。
この間のオーガへの敗北のおかげで、僕はもう一つの属性を習得したいと思うようになった。昔父親に魔法の使い方を教えてもらったときのことを思い出した。
『いいか、ビアンコ。自分の属性を探すのは難しくないよ。掌に魔力を集中するようにすることだ。おまえに適性の属性があるなら、その属性の物が出てくる。簡単だろう?やってみろ』
僕の火魔法も父親の教えた方法を試すと、掌にとても小さなファイアボールが出てきたから、僕が火魔法に適性があると知った。僕はダンジョンの3階層の休憩所で父親に教えてもらったことを思い出しながらこの方法を試していた。
僕は掌に魔力を集中させて、掌に魔力を集めるようなイメージをして自分の適性の属性を探った。しばらく掌に魔力を集中すると、小さな土の塊が現れて来た。
(土魔法も使えるんだ、僕)
僕はまた土魔法のときと同じように、掌に魔力を集めて集中した。しばらくすると、僕の掌にそよ風が吹き始めた。
(よし!風魔法も使えるんだ!僕すごいんじゃないか!もしかして水魔法も使えるんじゃないかな?)
僕はまたさっきみたいに掌に魔力を集中した。でも何度も魔力を掌に集めて集中しても、火と土と風しか出てこなかった。まったく水に関するものがなかったから、僕に水魔法の適性がなかったみたいだ。ちょっと残念だったけど三つの属性の魔法が使えるのはとてもすごいことだった。
僕には土魔法と風魔法に適性があるとわかると、僕はまず土魔法から始めて猛練習した。このダンジョンにいる間にもっともっと土魔法を練習しようと決めていて、ずっとストーンバレットを放りっぱなしして、だんだん破壊力も高くなった。次に土魔法で作られた小さな刃で、その土の刃で魔物を倒せるようになった。
「二属性の魔法も使えるとはなー、ビアンコ、おまえはやっぱりすげえよ」と時々メンバーに褒められたぐらいだった。
(もっと土魔法を自由自在に扱えるようになったら、風魔法の練習も始めよう~)
ある日、このダンジョンの九階層で休憩している時に僕は突然ミハイルさんにこんなことを言われた。
「おまえはいつもニコニコしてるけど、中身はなんだか黒いんだよな」ミハイルさんはなんということもなくいきなり言い出した。
「えっ?どういう意味ですか?」僕はドキッとして悪寒が走った。
「まあ、俺は別に気にしていないんだが、隠すならちゃんと隠せよ?」
「・・どうしてミハイルさんはそう思っているんですか?」僕は十歳から誰にも僕の中身を悟られないように感情を隠す練習をしてきたから、へまをしていないはずだ。
「眼は心の窓っていうじゃん?おまえの眼は何か黒いものが隠れている、と俺はそんな感じがする」ミハイルさんは真剣な眼差しで僕を見て答えた。
「僕は別に何も隠していませんけどね・・」僕は惚けてそう言ったけど、内心は焦った。僕はちゃんと隠しているつもりだよ。両親にも弟にも誰にも気づかれていないのに、それでも半年しか知り合っていないミハイルさんに僕は僕の中身を感づかれてしまった。さすが経験豊富の冒険者だった。僕はそれ以来ミハイルさんに対して尊敬の気持ちに加えて恐怖も抱いた。
僕たちは十階層まで行って、その階層の魔物と戦ったあと、ミハイルさんがこれ以上強い魔物に出遭ったら危険だと判断して、十階層のボスを倒して、地上に戻った。