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僕の中の悪魔を殺してください  作者: あまね
勇者の始まり
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ビアンコ10歳 冒険者の道の始まり

 僕の冒険者の道は十歳の時から始まった。


 僕は東方の地にある小さな村で生まれた。僕の家族は父親、母親、僕と弟の4人家族だった。平々凡々な家族で、生きるために僕の家族は農業で生計を立てていた。


 僕は十歳の時初めて魔物と戦った・・と言っていいかどうかわからないけど、とりあえず十歳の時に初めて魔物を倒した。


 その日、僕は家の中の食卓で本を読んでいるとき、突然自分の中のある感情が湧いてきた。僕は驚いて、さっきまで読んでいた本を握りつぶしてしまったぐらい驚いた。僕は我慢してその感情、というかこの欲求を抑えようとしたけど逆らえずにいた。僕はこの欲求を抱いたまま台所に行き、十歳の僕にとって大きさも刃先もちょうどよさそうな包丁を見つけたから、その包丁を手に取り、外に出た。


 家の前には庭があった。僕は庭に出て、何をすればこの欲求に応えられるかと考えていた。僕は庭を見てちょうどいい獲物を見つけて、自分のこの欲求を鎮める方法を思いついた。 


(あ〜あそこにちょうどいい獲物がいるじゃないか、あれで僕のこの気持ちを鎮めよう)


 家に誰もいないし、庭には僕とその獲物しかいなかった。これが絶好のチャンスだと悟り、僕はその獲物に静かにゆっくりと近づいた。その獲物は呑気に庭で草花を採っては虫を採っては遊んでいて、僕の存在にまったく気づいていなかった。僕はほくそ笑んだ。しかしその瞬間、スライムがどこからともなくいきなり僕の獲物のほうに飛びついた。僕の獲物はスライムに気づき、「あっ!」と硬直した。


(あっ!ダメだ!あれは僕の獲物だ!)


 僕は焦ってスライムのところに走って、包丁でスライムを刺し殺した。


 そして、僕の獲物は僕に気づいて縋りついて、「兄ちゃん、兄ちゃん、わぁぁーっ」と泣き叫んだ。


「な、何があったの!」


「おまえたち大丈夫か!?」


 僕の獲物の泣き声が聞こえて走ってきた両親は、僕の獲物から僕がスライムから助けてくれたと聞くと、


「まあビアンコ、まだ子供なのに頼もしいわね。立派なお兄ちゃんじゃない〜。これからもブルーノを守ってちょうだいね」と母親はめちゃくちゃ僕を褒めた。


「さすが俺の息子だな!えらいぞ、ビアンコ!」父親も母親と同じくものすごく僕を褒めた。


 不本意ながら、それ以降僕は僕の獲物にべったりくっつかれて、「兄ちゃん、すごいね〜かっこいい〜」と懐かれて英雄扱いされてしまった。



 スライムを退治した日から数日経ち、僕は僕の獲物と一緒に食料を探すために、家の近くの林に入った。僕の獲物は楽しそうに無防備に前を歩いていた。僕は獲物の背中を眺めていると、僕の中にまたあの感情が湧いてきた。


(今二人だけだ。何かしても、動物か魔物にやられたと言えばバレないはずだ、よし)


 僕はそう決めて、手にしっかりと短剣を持ち、僕の獲物に近づいていって、僕の獲物の背中に手を下ろそうとした。その瞬間に『ゴーーーっ』とホーンラビットの叫び声が聞こえた。僕の獲物はびっくりして急に立ち止まり、僕の方に向かって走ってきた。


「お兄ちゃん!助けて!」僕の獲物は叫んだ。僕は仕方なく、僕の獲物ではなく、ホーンラビットに短剣を向けた。ホーンラビットが僕に飛びついたときに、僕はホーンラビットの体に短剣を突き刺した。ホーンラビットの血が僕の短剣からぼたぼたと落ちて行くのを僕はじっと見て、喜びを覚えた。


 僕はその瞬間、心が満たされた気がした。



(またやりたい。もっともっとやりたい。僕のこの気持ちをもっともっと満たしたい)


 その日以来、僕は僕が他の人とは何かが違うと気づいた。僕が普通の人間じゃないと気付いた。僕は無意識に獲物を探してしまうのだ。絶好のチャンスに絶好の獲物を無意識に探して、僕のこの欲求を満たしてしまいたいのだ。


 これは秘密だ。こんな話は誰にも話せないことだ。僕は死んでもこのことを誰にも話さないと決めた。誰にも悟られないように、僕は自分の行動と表情に一つ一つ気を付けるようになった。



 僕が僕の獲物をホーンラビットから助けた日からしばらく経った頃に、父親が僕にこういう提案をしてきた。


「ビアンコ、おまえは才能がある。冒険者になって魔物と戦って稼いで、いろんなところに行って、いろんなものを見てみたらどうだ?」


「えっ?いいの?家の手伝いは?」


「練習の時はちゃんと練習して、練習しないときはちゃんと手伝えばいいんだ。おまえは十歳だから冒険者になるまでまだ時間があるからさ。おまえはこの小さい村にいるより、外に出たほうがいいと思うぞ。剣と魔法は俺が教えてやる」


(これは素晴らしい話だ。こんな素晴らしい話は突然やってくるものなんだね。これなら僕は満足のいくまで、生き物を殺して快楽に溺れては、また殺して快楽に溺れる。魔物なら誰も文句は言わないはずだ。むしろ褒められるじゃないか?これで僕はもうこの感情を我慢しなくてもいいんだ。殺したくなったら殺しに行けばいいじゃないか。あ〜神様〜この機会を僕にくださって本当に感謝します)


 父親はBランクの冒険者だった。若い頃ずっと他の街で冒険者活動をしていて、母親に恋をして結婚した後でもずっと冒険者活動をしていた。しかし父親は僕が生まれた後、難易度の高い危険な依頼をやめ、安全な依頼だけ受けることにしたと父親から聞いたことがある。


「お父さん、どうして薬草探しぐらいの依頼しかやらないの?Bランクの冒険者なんでしょう?魔物と戦いたくないの?それに難易度の高い依頼だともっと稼げるってこの前お母さんが言っていたよ」僕は父親にこう聞いたことがある。


「俺に何かあったら、マリアもおまえもブルーノも大変だろう?おまえたちを残して俺が死んでも死にきれねえからな。俺はもっとマリアと一緒に過ごしたいし、おまえたちが成長していくのも見たいしな。俺は冒険者の前にマリアの夫で、おまえたちのお父さんだからな」父親は答えた。


 確かにそうだった。父親と母親は仲がいいから、父親に何かあったら、母親が可哀そうだ。


 それに子どもの僕は家計の手伝いがほとんどできなかったから、父親を失ってしまったら、母親が家計のことも家の農業のことも僕のことも弟のことも一人で背負いこんでしまっていたんだろう。


 父親が僕に冒険者の道を勧めたその日以来、僕は父親から剣術と魔法の使い方を学ぶことになった。僕は火魔法に適性があるから、火魔法も習得した。スキルも習得して、森に行って食料用の動物を狩り、剣術と火魔法をきわめてきた。僕はできることを全てやって、できるだけ経験を積んできた。僕は成長するにつれてだんだん強くなり、次第に一人でも魔物を殺せるようになった。その後の僕は生き物の命を奪うことで心を満たして、喜びを感じ、日々を楽しんでいた。


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