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僕の中の悪魔を殺してください  作者: あまね
勇者の始まり
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プロローグ

「アニー、防御魔法と強化魔法を!」

「セシル、タイミングを見てねらえ!」

「パスカル、いつも通りサポートを!」

「フィル、僕と来てくれ!」


 僕たち、冒険者パーティー『冬の精霊』は大きな目標をもっている。それは世界最凶の魔王アンゼルムを倒すことだ。そのために僕たち『浮遊魔法』は世界の最南方にある魔王城アライヴァラを目指して旅をしている。まあ、僕たちはいま北方の地にいるし、メンバーの気まぐれも激しいから、いつ魔王城に辿り着くかわからない。永遠に辿り着かないかもしれない。僕にとって魔王も魔王城も魔族もどうでもいいことだから、辿り着いても辿り着かなくてもどっちでもいい。


 そんな僕たちは魔王城アライヴァラに向かう途中で様々な魔族と魔物を見つけては、とりあえず倒していく。これが僕たちの日常だ。


 そして僕たちは今日、北方の南部の街『ヴェリアナ街』に向かい、通りの林に入りしばらく歩くと、林の中で10体の魔族に遭ってしまい、現在進行形でその10体の魔族と絶賛戦闘中。



「ビアンコ、フィル、セシル、気を付けて!」アニーが叫んだ。


 僕とフィルは目の前の10体の魔族に飛び込み、容赦なく斬り殺していき、セシルは静かに魔族集団の裏に回り、斬り倒していく。


 あぁぁぁ〜~~魔族の血がぽたぽたと地面に落ちているのを見ていると、体がふるふる震える。はぁぁぁ〜~~きもちぃぃぃぃ~~~満たされる~~~〜、こんなんだから戦いはやめられないよな〜。


 しかし、僕にとって魔族には最大の欠点がある。それは魔族が死ぬと体も血も灰となって消えてしまうことだ。そのせいで僕の愉しみもわずかの時間になってしまう。


 魔物だったらな・・・


 人間なら最高だけど・・・



 と僕はそんなことを思いながら、表情を整えて平然とみんなのところに戻った。


「みんな一瞬で終わらせたね〜。一振りで倒したなんてすごいよ〜ビアンコ!フィル!セシル!」アニーは相変わらず優しい笑顔で褒めてくれる。


「やっぱりビアンコもフィルも相変わらず頼もしいね。もちろん私もだけど」セシルは相変わらず自信たっぷりで姉御らしい笑みを浮かべながら話した。


「さすがビアンコとフィルとセシルです。今日も絶好調ですね」パスカルはいつも通り僕、フィル、セシルに回復魔法を掛けながら、相変わらずの落ち着いた口調で褒めてくれた。


「急に10体も現れてさー、本当にびっくりしちゃったよ!マジで倒せてよかった!」フィルは相変わらず子どもっぽい口調で話した。


「みんなありがとう。じゃ次行くぞ」僕は相変わらず優しい笑みでみんなに言った。




 この世界には人間、魔族、魔物が存在している。人間の割合が一番高い。次は魔物、そして魔族。でも魔族が本当に一番割合が低いのかはっきり言えないしわからない。魔族は今までどこかに潜んでいて人間の前に出てこないだけかもしれない。『冬の精霊』はそんな魔族に遭ったことがあるから、僕たちはよく知っている。魔族は人間に知られないように人間の街に潜んで、襲って、そして人間を支配しようとする。


 魔族は人間に似ている姿をしている。少なくとも僕たちはそんな魔族にしかあったことがない。でも魔族は人間の姿をしていながら、ツノが生えていて、肌色が灰色だから、見ればすぐわかる。



 僕たち、『冬の精霊』には5人のメンバーがいる。


 僕はビアンコ。23歳のアタッカー。火・土・風の三つの属性の魔法が使える。そこそこ強い冒険者パーティー『冬の精霊』のリーダー。僕にはこのメンバーにも誰にも絶対に言えない秘密がある。


 パスカル、33歳の治癒魔法師。このメンバーの中で一番常識者で一番まともで一番年上。治癒魔法師だからか困っている人を助けたがる。そして戦闘の時だけでなく、いつも僕たちに回復魔法をかけてくれて癒してくれるから、僕も他のメンバーもパスカルに頭が上がらない。いつも冷静だけど可愛いところ多々もある『冬の精霊』のお兄さん。


 アニー、22歳の魔法使い。一番若いけど優秀で魔力も高い。あらゆる応援系魔法が使える。魔導書を渡せば、その魔導書にある魔法ができてしまうほど優秀な魔法使い。主に強化魔法や防御魔法といった応援系魔法を使ってもらうけど、攻撃魔法も使える。優しくてかわいらしくてふわふわする『冬の精霊』の妹。


 セシル、27歳の盗賊及び女戦士。風属性持ち。セシルの素早さは世界上位のレベルだと思う。僕とセシルが競走したら、僕は負ける気がしなくもない。素早く静かに敵を倒すときはセシルに任せれば負けることはない。時々、というかよく自画自賛するけど、それは実力による発言だから突っ込めないし、言い返せないし、むしろ同意するしかない。きれいでクールで面倒見もいい。怒ると怖いけどだいたい優しい『冬の精霊』のお姉さん。


 フィル、30歳の戦士。水属性持ち。喋らなければかっこいいけど、見た目も中身も17歳にしか見えない。人懐こいし、よく子どもっぽい口調を話すから、最年少のアニーさえも時々フィルのことを弟だと思ってしまうらしい。まあこれはフィルの魅力と言ってもいいかもしれない。こんなフィルだから、30歳だけど『冬の精霊』の弟。




 僕たちは冒険者パーティー『冬の精霊』だけど、不本意ながら一部のどこかの街の人に勇者だと褒め称えられてしまった。『冬の精霊』のメンバーは勇者一行だと褒め称えられると、ノリノリでイキイキして、「勇者じゃないよ」と否定するつもりは微塵もなかったから、いつのまにか冒険者パーティー『冬の精霊』は『世界最凶の魔王アンゼルムを倒す』という大きな目標ができてしまった。僕は全力で否定したくて、絶対に認めたくなかった・・と思っていた。でもその大きな目標を持つことで、僕がこのメンバーたちとこれからもずっと一緒に旅ができるなら、まあいいじゃないかと思うようになった。



 僕たちは魔族と戦ってまた出発した。僕はみんなと一緒に歩きながら、くだらない話をするのが好きだ。


「まさか、ここで10体もの魔族に遭うとはね〜びっくりしちゃった〜ここは北方なのにね」


「本当にね、魔王城は南方の果ての地にあるのに、ここまで侵入してきたとはね。最近結構多くない?変だと思わない?」


「確かにそうですね。気付かないうちに北方にまで魔族が潜り込んでいますから、油断できませんね。北方でもこれからもたくさん魔族に遭うでしょうね」


「まあ、俺たちは一応勇者一行だし、たまに魔族と戦ってもいいじゃないかな〜」


「魔王城って最南方じゃん?んで私たちは北方じゃん?いつ魔王城に着くと思う?」アニーは時々この質問をする。


「十年後とかじゃないかしら?」


「二十年後かもしれませんね。その時私はもうおじいちゃんですね」


「お、俺もおじいちゃんになっちゃうのか?」


「三十年後かもしれないね。僕たちの速度ではね」そしてセシル、パスカル、フィル、僕はいつもこんな答えをする。



 この冒険者パーティーの『冬の精霊』の大きな目標目的は一つ、さっきも言ったんだけど、長年人類の敵として存在している世界最凶の魔王アンゼルムを倒すことだ。


 ただ、あれは冒険者パーティー『冬の精霊』の目標だ。僕の目標は他のメンバーとは違う。


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