第3章 : 遊牧の生活
数か月が過ぎ、レナルドの世界は劇的に変わっていった。遊牧民としての生活に身を投じた彼は、毎日が挑戦に満ちていることをすぐに悟った。彼の日常は、キャンプでの雑務や訓練、そして「父」と一族の戦士たちが課す厳しい規律によって形作られていた。都市の相対的な快適さに慣れていた彼は、今や厳しくも力強いこの環境で生き抜く術を学ばなければならなかった。
夜明けとともに、族人たちは弓や短剣を手にして平原へ散らばり、狩りや訓練に励んでいた。レナルドは彼らの俊敏さと正確さに魅了されつつ、自分もその動きを真似しようとした。しかし、何度試みても自分の未熟さを痛感させられるばかりだった。初めて弓を手に取った時も、彼の動作は不器用で頼りなく見えた。
ある朝、彼は父の厳しい目の下で弓の練習をしていた。彼は弓を引き、筋肉が張り詰めるのを感じながら姿勢を調え、他の者たちのように矢を放った。矢はシュッと音を立てて飛んだが、目標から遠く離れた茂みに消えた。レナルドは悔しさに歯を食いしばり、父の厳しい視線の下で頬を赤らめた。
父 : 「腕をしっかり保て、少年。ほんの少しでも弱さを見せれば、矢は必ず的を外れる。」
レナルド : 「はい、でも…思ったより難しいです!」彼は不満を隠そうとしながら背筋を伸ばした。
父は無言で彼を見つめ、鋭い視線を送りながら、彼の肩にしっかりと手を置いた。
父 : 「価値あるものは簡単には手に入らない。戦士になりたいのなら、単なる動作以上のものが必要だ。忍耐と根気こそが最大の武器になる。もう一度やってみろ。」
この冷静でありながら厳しい声が、レナルドの心に深く響いた。彼は頷き、成し遂げてみせるという決意を固めた。イライラしながらも何度も挑戦し続け、矢が草むらに消えたり石に跳ね返ったりしても諦めなかった。
日々はやがて週へと移り変わった。最初は手にできた水ぶくれも、次第に硬いタコへと変わっていった。姿勢が改善され、動作も自信を持てるようになった。時折、的に命中させることもでき、そのたびに小さな達成感が彼の胸を満たした。
ある午後、彼が再び練習に励んでいると、一族の若い戦士であるタイガンが興味深げに近づき、少しの間観察してから微笑んだ。
タイガン : 「初心者にしては悪くないが、お前は目に頼りすぎている。」
レナルド : 「どういう意味?」弓を下ろして耳を傾けた。
タイガン : 「真の弓手は、ただ的を見るだけじゃない。感じるんだ。風を感じ、周囲の音に耳を傾ける。矢は目ではなく、お前自身の一部として放つものだ。」
レナルドは感心してタイガンを見つめた。一族の戦士たちは、彼には到底理解できないような知識を持っており、環境との密接なつながりがあるようだった。彼はそのアドバイスに触発され、目を閉じて風のそよぎや草の音を感じ、再び目を開けて矢を放った。その矢は見事に的の中心近くに命中した。
レナルド(驚いて息を飲みながら) : 「やった…できた。」
タイガン(微笑んで) : 「悪くないな。今感じたことを忘れるな。それが真の弓手を作るんだ。」
しかし、訓練は弓だけにとどまらなかった。レナルドは遊牧民が卓越した精度で扱う短剣にも魅了されていった。ある夕暮れ、空が橙色に染まる頃、父が彼を火のそばに招き、二本の短剣を手渡した。
父 : 「これらの武器は他のどれよりも速度と予測力を求められる。さあ、持ってみろ。」
レナルドは短剣を掴み、その軽さとバランスの良さを感じ取った。彼は父が滑らかに動かす姿を見つめ、火の光に照らされた刃が彼の手の中で舞うのを眺めた。
父 : 「短剣を使う時は、敵を近づけすぎず、しかし遠くにも行かせるな。距離を間違えれば、お前の命は尽きるだろう。試してみろ。」
最初はぎこちなかったが、この武器には何か引かれるものがあった。弓とは違い、短剣には本能とリズムが求められた。彼は日ごとにその動きを繰り返し、その進歩は一族にも知られるようになった。
一族の長老 : 「あの若者…才能がある。短剣を使う姿はまるで野獣のようだ。」
長老の言葉は非常に重みがあり、一族では単なる敬意を超えた存在として認識されていた。長老は誰が名を持つにふさわしいかを決める立場にあった。今のところ、レナルドは一族の中で名前を持たないよそ者として認識されていた。
しかし、彼の中で変化が起こっていた。初めて、一族の戦士たちからの尊敬を得ているように感じた。訓練を重ね、忍耐を持って続けることで、彼は徐々に彼らの一員となりつつあった。
ある夜、焚き火の炎が風に揺られている中、長老がレナルドに近づいた。
長老 : 「少年、長い間お前を見てきた。」彼の声は深く、厳かな響きを持っていた。「お前は短剣でその価値を証明した。どんな獲物も逃さず、お前の素早さは生まれついての狩人のようだ。」
レナルドは驚きながらも光栄に感じ、尊敬の念を込めて跪いた。
長老 : 「今日からお前は無名のよそ者ではない。『獲物を逃さない者』、スレイマンという名を持つだろう。その名を誇りに思え。」
レナルド…いや、スレイマンは顔を上げ、瞳が輝いていた。この名前は一族の中での彼の受け入れられた証であり、彼が得た尊敬を象徴していた。彼は静かに長老に感謝し、新たな誇りを胸に刻んだ。
もはや彼は単なる異世界に迷い込んだよそ者ではなかった。スレイマン…それは新たな道を切り開くための、戦士の卵としての名だった。